─20話─ バシリアンの経営再建
─20話─
「ところでさ」
私は2人にちゃんと確認しておかなければならない。まあ間違いないだろうけど。
「コウガとハクガ、あなた達アハムの世からの転生者よね」
「はい⋯やはり分かりますか」
うん、あれだけ分かりやすいとそりゃね
「その身体にはいつから?まさか産まれた時から?」
「我ら兄弟は1年ほど前に現世に転生しました。元の身体の持ち主は⋯おりませんでした」
「いない?体が空っぽだったってこと?」
「正確に言うと⋯分からぬのです。」
ふーん
どういう事だろうね?
転生者にも色んなパターンがあるのね
「あの大きいおばあちゃんは?」
「母者はおそらくこの身体の実母かと」
その体格だもんね
お母さんも大きいか
「ところであなた達ヴイガル獄長に仕えてたよね」
「な、なぜそれを・・・!?」
「私は二階堂マイでもあるけれど、ライデンでもあるの」
「な、なんとライデン様・・・!?」
「今からライデンに代わるから少し話を聞いて」
私はライデンに意識を渡した
「コウガ、ハクガよ
前世でのバシリアンではご苦労であった
ヴイガルには皆手を焼いたようだがアレはアレで役に立つ奴だったからな」
「お、おお!そのお言葉まさにあのライデン様・・・!」
「よもやジンケイがバシリアンを落とすとは思いもしなかったがな」
そう言いながらライデンは当時を思い返していた。
全くそのせいでバシリアンの囚人は解放されるわ、トミーには逃げられるわ、建物は崩壊するわで散々であったわ。
ジンケイの奴め、やったらやったできちんと後始末ぐらいしてから行けと言うものだ。あの後の苦労は並大抵ではななかったのだぞ。極悪囚人を捕らえたり、建物の修繕をしたりだな⋯
ライデン、恨み節が長い
ほら、コウガとハクガがしびれを切らして話し始めた。
「ライデン様がこのような神々しいお姿になられているとは我ら二重の喜びでございます」
「コウガ、ハクガよ。 うぬらは何故救世主を求めるのだ」
「はっ!我ら乱世より転生した者達は、 現世での立ち居振る舞いがいささか疎かであります。」
うむ、そうであろうな
俺がもし一人でいきなり現世に転生していたら、果たしてどうなっていたか分からん
「そこでこの店を立ち上げたわけですがいかんせん我ら素人、経営がうまくゆかず⋯」
「ふむ・・・」
この店にはこれから通わねばならんからな、 経営が傾かれては我らにとってもマイナスか
「良いであろう、この店の経営再建確かに承った!」
承った!
じゃないよ
そんな安請け合いしてどうすんのよー
マイよ、
これからこの国の覇権をなそうという身でありながら、このたった一軒の些少な店の経営すら立て直せぬと言うのか?
そのようなことでは到底覇者にはなれん!
う!それは確かに⋯
むしろこれは覇道を極めるための貴重な体験となるかも⋯!?
って、私いつから覇道目指してたの!?
一瞬ノせられてたわ!
⋯でもまあ、ライデンが言わんとしてる事も分からなくもないけどね
「そうね、このお店一緒に再建しましょう!」
「ありがたき幸せ!マイ様!ライデン様!」
(ふふん、マイを思った通りに転がすなぞ容易いことよ)
・・・今悪い顔してるでしょライデン
な、何を言っておるのだ! そんなことより早く再建案を示すが良い!
そんな早く出ないって!
ところで⋯
今日まったく勉強が進んでないんだけど!!
「圭一君!勉強始めるよ!」
私たちはバシリアンの一角でいつもと同じように勉強を始めた。
毎日の勉強場所の確保に困っていた私たちにとっては、何物にも変え難い貴重なお店だった。
「おばあちゃん、また明日も来て良いかな?」
飲み物1杯で何時間も居座る私たちは経営者側からしたら結構な迷惑客じゃなかろうか。
「勿論毎日来ておくれ。あんた達がいてくれるから他のお客さんも入りやすいんだよ」
確かに今日勉強している間も何組かお客さんが入って来ていた。
「いつもはそんなこと無かったからね」
おばあちゃんの言葉は嬉しそうだった。
「じゃあまた明日来るね!」
うん
これで勉強場所の問題は解決した。
お店の再建問題は、まあおいおい考えよう
それから私達は毎日のようにバシリアンへ通った。
窓際の目立つ席。
通行人が訝しそうに眺めていく。
牢獄のような建物の中で女子高生達が勉強している。奥には厳つい店員とデカいおばあちゃん。
確かに怪しさ満点かもしれない。
ある日何気なくヘックスを見ていたところ、何か見覚えのある写真が載っているのを見つけた
『怪しい喫茶店に可愛いJKとボディビルダーみたいな奴いるんだけどwww』
『牢獄に囚われている天使発見!』
これ⋯
どう見ても私らでは⋯
気づくと窓の外で遠巻きにスマホを向けてる人間をよく見かけるようになった。
そうか
「まずはSNS戦略ね」
そう、身近な情報発信基地SNS
これを制せずして地元の人気店など夢のまた夢!
私たちは急遽作戦会議を開いた。
マイ「コウガとハクガ、あなたたちには客寄せしてもらいたいの」
コウガ「我らが、でありますか?」
おばあちゃん「この子ら口ベタだから呼び込みなんか無理じゃないかねえ」
⋯おばあちゃん、それでよく接客業なんかさせようと思ったね
マイ「呼び込みと言っても、店の前で金剛力士像のように立ってるだけで良いわ」
ハクガ「それなら我ら前世にてバシリアンの門番を務めておりましたからまさに適役!」
漫画通りならコウガとハクガは多分何時間でも立っていられるだろう。
何せ絶命しても巨大なモンスターを支えて立っていた2人だから。
マイ「お客さんが入ったらお店に戻って今まで通り接客すれば良いの」
サユリ「マイ様、それでは今と変わらないのでは・・・?」
サユリちゃんが疑問を投げかける。
マイ「だから私たちがここで勉強していれば良いのよ。多分これだけでもイケそうな気がする」
圭一「⋯何となく分かりましたよ二階堂さん。ならばあとはメニューですが、これを変えましょう」
それを聞いたハクガの顔が明るくなった。
よっぽど今のメニューの復唱が恥ずかしいのね。
圭一「この店のキラキラメニューを更にバージョンアップして前面に押し出しましょう。その方がインパクトありますから」
コウガ「ならば私の頭の中にはまだまだ暖めているメニューが沢山ございますのでお役に立てるでありましょう」
「おお!」
皆が歓声を上げる中、ハクガだけがまた暗い顔になった。
圭一君、ハクガに恨みでもあるのでは⋯
ジンケイはああ見えてSっ気の強い奴だからな。それが圭一にも影響しておいるのではないか?
確かに!
ジンケイってザコ敵を甚振ってから倒すの好きだもんね~
改めてそう言われるとジンケイといいジャゴといい我が一族にはロクなのがおらんな⋯
お兄さんの影響じゃないの?
そう思うか?やはりトミーの奴がきちんと導かぬからあのような性格になってしまったのかも知れぬな
いや、きっとあんたのせいじゃーい!
圭一「あとはお店の宣伝をどうするか、ですね」
サユリ「それなら私めが考えましょう。私こう見えてピンスタではいくらばかりかのフォロワーを持っておりますのでお役に立てるかと」
サユリちゃんがピンスタでちょっとした有名人なのは何となく知っていた。なんでも「SAYURIショコラ」なるお菓子作りのコーナーが軽くバズっているらしい
サユリ「言って頂ければこのお店の新しいメニューの試作品も作れるかと存じます」
おおー、さすが頼りになる子だよ!
こうしてお店の再建計画がスタートした。
上手くいけばお店の経営も私たちの勉強場所も安泰だ。
そんなある日のこと
喫茶店のおばあちゃんが亡くなった
つづく




