第7話 手
ドスッ
背中に鈍い衝撃が走り、周りに土埃が舞う。
目に入るのは辺り一面砂だらけ。
日光が目に突き刺さってくる。
僕がまだ、背中の痛みで動けずにいると、メトさんが近づいてきた。
「大丈夫?背中を強打したようだけど。折れてはないかしらね」
そう言ってメトさんは背中を触ってくる。
「!!」
「どうかしましたか?」
「何でもないわ。治ったなら、早く進みましょう。ここがどこかを把握しなければいけないわ」
ひどく冷徹な声。まるで巨体君のことは忘れてしまったかのような物言い。
彼女も巨体君と一緒に過ごして来たはずなのに、その記憶は消えてしまったのか。
「ッ……」
何も言えない。太陽の光で反射する頬を見てしまったら、何も言えない。
そのまま何の会話をすることもなく、砂の大地を踏みしめ、歩く。
日が沈み、月明かりが足元を照らす。
不意にメトさんが声を出した。
「……長く生きていると、さよならには慣れるものだと思っていたわ」
ただその一言でその日は終わった。
その日のなかで最も暗い時間帯。この時間帯を丑三つ時ということを何処かの本で見た。
そんな何かが出てきそうな時に、僕たちは荒廃したビルにたどり着いた。
「かなり砂にまみれているわね。形が保っていることが奇跡ね」
「確かに、このボロボロ具合はなかなか出せないです」
そう言って中を覗く。そこには外観とはまるで違う。なかにあるのは、キラキラとしたシャンデリア、赤々と存在を放っているソファー、よくわからない言語の書いている本が入った本棚。
外観と比べても違和感しかない。
「え?この空間は一体何?あまりに違いすぎるわ」
「完全に同意です。けどこの部屋だったら睡眠も取れるし、このソファーもふかふかですよ」
いろんな本があるし、時間を潰すにもよさそうだ。
「あなた、のんきなものね。こんなところ罠に決まってるじゃない」
そう言ってなにかガサゴソしている。
その時だった。自分の耳に、文明の音が聞こえたのは。
もう潰えたはずの音が耳に入るのと同時に、視界に写っていたメトさんの左胸から赤く、どす黒い液体が吹き出してくる。
「あがっ……」
吹き出してから倒れるまでの姿は、ひどく自然でゆっくりに見えた。
バタン。と倒れる音がする。その音を聞いてもなお、理解が追いつかない。
「ゼン君……に…て………やく」
息も絶え絶えと言った様子でこちらに言ってくる。自分のことなんて気にせずに、僕に話してくる。
逃げてと言われたがここでメトさんをおいていけるほどヤワではない。僕は大急ぎでメトさんに近づき、周りを見渡した。
「…ゼン君……本棚…一番右のところ」
そう言われて、とっさにそこを見る。でも、もう手遅れだった。そこを見た時、僕の目に写ったのは、
無数の手。それも一本一本が銃を持っていた。




