再会
夜を切り取ったら、こんな姿になるのではないだろうか。
周囲に溶け込むように、なのに不思議なほど存在感を持っている。
赤黒い瞳が、じっとこちらを見つめている。
「……」
話そうともせず、かと言って、何か仕掛けてくる訳でもない。
月明かりに照らされた姿に、思わず息を呑んだ。
惨殺された隊員のように、殺されるかもしれないのに。
見入った勇者に、『魔女』は何を言うでもなく、
泣きそうな顔で、こちらを見てきた。
「……っ」
なんでそんな顔をするのか。
大勢死んだのに。目の前にいる相手を手に掛け、
仲間の仇を取らないといけないのに。
それを見るだけで、憎悪も悔しさも湧いてこない。
おかしいのかもしれない。
狂っていると言われるのかもしれない。
それでも、目の前にいる少女が勇者にとって憎む対象にはならなかった。
「―――」
『魔女』が何かを言いかける。
「勇者様」
草木を掻き分ける音がした。
振り返れば、隊員の一人が心配げに、座り込む勇者を見下ろしてきた。
「勇者様、もうお休みなられた方がよろしいかと」
「ああ、分かった」
すでに『魔女』の姿はなかった。
逃げた訳じゃない。
『魔女』はその気になれば、勇者を含めた全員を皆殺しにできる。
大陸全てを滅ぼすのだから、それぐらい当然だろう。
そこまで考えて、疑問が湧いてくる。
何故彼女は、勇者を殺そうとしないのだろうか?




