表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/11

第11話 モノリス・ドラゴン

 岩で出来ているとは思えないほどしなやかな動きで、モノリスが俺めがけて突進してくる。


 ガキイン!

 大きく開いた顎が迫る。咄嗟に剣を縦に立て、噛み砕こうとするカマ首を真正面で受け止めた。腕が、骨ごと軋む。


「耐えろ、リュウジ!」

 対岸からカリオンたちの防御魔法が全力で送り込まれてくる。魔法の光が体を包み、かろうじて踏みとどまった。


「うがああああっ!」

 腕の限界まで力を絞り込んで、モノリスを強引に弾き返す。


 俺はわずかに残る意識をフル動員して、バーサーカーの能力を限界まで覚醒させた。再び迫るモノリスの前に仁王立ちになり、剣を上段に構える。


「STR……マックス、全力で叩くっ!」


 真正面から、迫るモノリスの額をめがけて剣を振り下ろす!

 その一閃で巨体が真っ二つに分かれ——次の瞬間、岩がぶつかり合う固い爆音とともに、無数の岩石となって四方へ砕け散った。


 対岸のシェリーが叫ぶ。

「やった! 押し切ったぞ!」

 

 しかしモノリスが崩壊すると同時に、浮島の地面がさらに激しく揺れはじめた。足元ではがらがらと岩が剥がれ落ち、島そのものが崩れ去っていく。


 バーサーカーへの移行が進んだのか、意識がさらに遠のいていく。

「ほんっと、最低ね!…………さようなら」

 ガイアのそんな声が聞こえた気がした。


 そのまま……一度、奈落に落ちる感覚の後……


 ふわりと、体が浮かんだ気がした。



 その頃、対岸でシェリーとカリオンが声を枯らしていた。

「崩れる! 危ねえ!」

「リュウジ! 逃げてっ!」


 無惨にも崩れ落ちていく浮島。その様子を、二人はただ見つめることしかできなかった。


「あ……あぶない、捕まれ!」

 地鳴りが洞窟全体を揺さぶり、岩壁から岩の欠片が降り注ぐ。二人は壁にしがみつき、飛んでくる礫を腕で庇いながらやり過ごした。土煙と降り注ぐ岩石に、視界が奪われる。


 やがて揺れが収まった。

 土煙がゆっくりと晴れていく。ふと気づけば——浮島は跡形もなく消え去り、ただ澄んだ水をたたえた湖だけが、静かに横たわっていた。



 シェリーが叫ぶ。

「リュウジ!……バカ!……クズ野郎!……レベル5のくせに!……無理しやがって……!」

 両目からぶわっと涙がこぼれ落ちる。

「うわああん! バカ!……バカだよ……」


 

 カリオンもうわごとのようにつぶやく。

「どこいったんだよ!……」

 そして力の限り叫ぶ。

「さっさと出てこいよ! どこ隠れてんだっ!


 

 バシャアアア……!!

 次の瞬間、湖面が大きく跳ね上がった。

「……! なんだ!?」


 さらにもう一度。

 さらに大きく。


 水しぶきが洞窟の天井近くまで舞い上がり、水面から何かが飛び出した。

 燃えるような、鮮やかなオレンジ色のドラゴン!

 大きさは人の背丈ほど。おそらく、ファイアドレイクの子供——!

 

「カリオン! 見て!」

 シェリーが震える声で叫ぶ。


 その小さなドラゴンの背中に乗るのは——

 リュウジだった。



……

……深く冷たい地底湖の水が、バーサーカーの意識を追い出して、俺は我を取り戻す。

……そして、"俺の"意識は、再び薄れゆく。


 激しく水の跳ねる音と共に、体中に空気の味がした。

「……こ……ここは……」


 半身を起こすと、視界に飛び込んできたのは、鮮やかなオレンジの背びれだった。

 小さなドラゴンが、俺を乗せたまま悠然と地底湖の上空を旋回している。湖面の光がドラゴンのうろこに反射し、洞窟の壁にゆらゆらと揺れる影を落としていた。


「こ……これは……」


 岸からシェリーとカリオンが何か叫んでいる。声は聞こえるが、言葉が頭に入ってこない。

 ドラゴンは一度、大きくばさりと翼を広げ羽ばたくと、そのまま滑るように湖のほとりへと着陸した。


「お……おおおっ」

 視界がぐらりと揺れる。ふらつく体をなんとか支えながら、地に足をつけた。


「リュウジ!」

 シェリーが駆け寄り、飛びついてきた!

「よかった……」

 そしてカリオンとも抱擁を交わす。

 

 小さなオレンジのドラゴンは、そんな俺たちをじっと見ていた。そして一度、大きく翼を震わせると、ふわりと飛び上がる。旋回しながら高度を上げて、やがて洞窟の奥の暗がりへと静かに消えていった。


 シェリーがその背中を目で追いながら、ぽつりとつぶやく。

「ファイアドレイクの子供……かな」

 俺には心当たりがあった。


 かつてミニクエストとして、ファイアドレイク親子の絆を描いたシナリオを書いた記憶がある。ガイアは何らかの手段で子供を捕らえ、それを盾に親を操っていたのだろう。そのガイアを追い払った俺を、本能が「味方」と認識して助けたのかもしれない。


 しかし——親であるファイアドレイクを倒したのは、他ならぬ俺自身だ。あの子には、そんな事情は知る由もないだろうが。

 それは、せつない幕切れだった。


 そして洞窟に静寂が戻る。ガイアは去った。少なくともしばらくの間、グリーンフィールドに平和が戻るだろう。

 オレンジの小さな背中が消えた洞窟の奥を、俺はいつまでも見つめていた。



◇◇◇◇


 俺たちは、ギルドに戻って、コトの顛末をクエスト申し込み書の裏に書き込み、申請をする。

 次の新たなクエストに向けて、準備が始まる。

 この世界を救うために。


◇◇◇◇



<ドラゴンサーバント商業化のお知らせ>


決定ではないので詳細はまだお伝えできませんが、商業化の企画が進んでおり、投稿サイトでの掲載は一旦、ここまでとなります。

発表できる段階になれば、X等でお知らせいたしますので、是非この続きも見て頂ければ嬉しいです。


ここまでお付き合い頂いた読者の皆様、ありがとうございました!支えて頂いた皆様のおかげで、商業化が近づいています。感謝と共に、気を引き締めて制作します。ご期待ください!


さくらまりお


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ