第95話
シリダ北側までそれなりの数のアンデッドを片付けながら進むと、森の途中でシリダとは違う雰囲気を感じ取った。
「ちょっと待ってくださいね。≪魔法看破≫」
看破してみると、木々を結ぶように地面に文字が浮かび上がる。
「ルーン文字ですか。占い師系が使う魔法系統の一つですね」
「魔法効果は?」
「複数種類の結界ですね。不死者除け、警報、隠蔽、投射武器避け、あと地雷系の魔法が幾つかあるんで、侵入者対策ですね。
多分、身を守るための自衛結界なので破りたくないですね。
アキヒト君、解き方分かります?」
アキヒト君の知り合いであるレーシアさんが張った結界だろうから、アキヒト君なら解けるようにしてあると思うが、
「ちょっと待ってくださいっすね。確かこの並びだと・・・これとコレっすね。
じゃ、地雷踏まないようにコッチついてきて欲しいっす」
アキヒト君はルーンが仕込まれた小石を3つ動かし、通り道を作ってくれた。
「じゃ、元に戻すんで」
通り抜けた後、ルーンの位置を元に戻し、さらに奥へと進むと古い寺院のような遺跡が見えてきた。
「誰だ!」
寺院の前でクロスボウを持った兵士っぽい人がこっちに武器を向けてる。
他にも寺院の上から何人か狙っているのか、複数人の気配を感じる。
「待って欲しいっす!自分はレーシアの知り合いっすよ!呼んで確かめてきて欲しいっす!」
「アンデッドじゃないだろうな!」
「ちゃんと生きてる」
「武器を置け!全員だ!」
めっちゃピリピリしてるな・・・
どうしようか。ぶっちゃけステータス差あるから武器を置いても良いが・・・
「待って待って!」
寺院の奥から、大粒のエメラルドが目立つ銀のサークレットをした金髪の女性が出てきた。
魔法看破で大量の魔法の品を身に着けているし、あの人がレーシアさんか?
「レーシア!来たっすよ!」
「ホントに来た!?知り合いだから武器を降ろして!本当に知り合いなの」
レーシアさん本人で間違いないらしい。
薄紫のドレスウェアにルーン文字らしき模様が刻まれた杖、コテコテの占い師って感じだな。
「えっとイノ「あ、こっちじゃアキヒトって呼んで欲しいっす」
「イノって?」
「アキヒト君のアバター名、『♰穢れ無き罪悪♰』なんですよ」
「ふーん」
そう言えばリッシュさんには言ってなかったから、説明しておいた。
「えっと、そっちの三人は?ギルドメンバーじゃないっぽいけど」
「あ、はじめまして。アキヒト君が住んでるゲイリーウッズ村のエリシアです。アキヒト君に頼まれて、手伝いに来ました」
「マーシャよ。よろしく」
「リッシュ」
「はじめまして、レーシアです。先ずは奥にどうぞ」
そう言われて、寺院跡の中へ案内された。
「私がこっちの世界に転移したのは2か月前で、その時は平穏な街だったんです。
長閑で日本に比べて不自由も多かったですけど、それなりに頑張って街に馴染もうとしてました。
でも昨日の夜、いきなり街の地下墓所からアンデッドが大量に湧き出して、一夜で街が占領されたんです。
私も占い師系とはいえ、補助や攻撃系の魔法が使えたので自警団の人たちと一緒に戦ったんですけど、物量に押されて・・・。
街から脱出するにも逃げ遅れた人を見捨てたく無くて、寺院周りにルーン魔法の結界を張って、殿を務めた人や逃げ遅れた人をここに匿っていたんです」
なるほど。事情は理解できた。
「相手は高レベルの死霊術師プレイヤーの可能性が高いわ。
真昼間でもアンデッドが活発に動かせるように使役できるレベルで、軍団単位の数を使役してる。
勝つのは難しいわね」
「せめて、ここに居る逃げ遅れた人を安全な場所まで逃がしてほしいんです。
周りはアンデッドだらけで、この人数を守るのは私だけじゃ無理なんです」
「なら、猫の特急切符でゲイリーウッズ村まで逃がします。
流石に、街を占領する数のアンデッドの群れを全滅させるなら高レベルの神官系も欲しいですから」
マーシャさんの説得のおかげで、特急切符の入手も目途がついた。
大人数を運搬するなら、特急切符で猫汽車を呼んでしまった方が効率が良い。
「猫の特急切符を!?それなら全員を運べそうです!すぐに皆に伝えますね!」
そう言って、レーシアさんは中座。
「死霊術師の方はどうします?」
「流石にあの数全部倒すなんて無理よ。死霊術師本人を探して暗殺する以外に私達ができる事無いし」
「その通り。数を揃えた死霊術師は超メンドクサイ」
死霊術師系はアンデッドの物量攻撃という選択肢も取れる魔法職。
序盤の準備段階では大した強さは発揮できないが、大勢の死者が出るまで戦闘が激化して長引くほど、死霊術師の本領は発揮される。
死霊術魔法で攻撃し、倒した敵の死体をアンデッドとして戦力に取り込み、その戦力でさらに敵陣営を倒してアンデッドの戦力として取り込む。
大軍団を手中にコントロールできるレベルだとLv90以上。いや、確実に死霊術特化のLv100だろう。
まぁ、そんなアンデッド軍団も神官や僧侶が使う神聖系魔法を相手にすれば、手も足も出ないから相性の有利不利が激しいクラスと言える。
しばらくして、レーシアさんが戻って来た。
「皆、すぐに荷物を纏めてくれるそうです!本当に助かります!」
「良いんですよ」
「あの、せめてコレを使ってください」
そう言ってレーシアさんから渡されたのは、猫の特急切符・・・あぁそうか。
レーシアさんはこっちの世界だと、ここ以外の行き先を選べないんだろう。
「使わせてもらいます」
寺院に隠れていた人たちも、荷物を纏めて移動の準備を進めているらしい。
この調子なら、すぐ脱出できそうだ。
『ルーンキャスター』
系統:占い師派生
主武装:『ルーンアイテム』『杖系統武器』『衣服防具』
魔法使い系の1つ『占い師』から派生すつ魔法使い系クラスの1種。
戦闘スタイルは石やカード等から予め独自に生産できる『ルーンアイテム』をMPと共に消費しながら魔法を行使する。
所持している「ルーン」の組み合わせで多様な魔法を行使することが可能で、消費するルーンが多いほど強力な魔法を行使できる。
欠点として発動に『ルーンアイテム』の消費が前提であるため、ルーンアイテムが尽きるとルーンキャスター固有の魔法が使えなくなる。




