第94話
アキヒト君の仲間からのSOSに応えると決定し、各自が準備に入る。
ぶっちゃけ私は露払い役にしかならないだろうが、それでも魔法薬などでサポート程度はできるつもりだ。
何日か留守になるかもしれないので、アカネ達に留守の間の指示を出しておき、インベントリ空間にしまいっぱなしの無駄アイテムを鍵付き倉庫に入れて、戦闘用の毒薬や魔法薬の類いと入れ替える。
時々懐かしい物とか、確認漏れしていたアイテムもインベントリ空間から出てきた。
あ、こんなのもあったのか、懐かしぃ・・・っていや、そんなことしてる場合じゃない!
うーむ。普段から断捨離とか整理してないからかなぁ・・・とりあえず、戦闘前提で不要な物は全部倉庫に放り込む。
やっと準備が整い(私が一番最後だった)、リッシュさんが猫の特急切符を使用。
汽笛の音が鳴り響き、列車がやって来た。
「ご利用いただきありがとうございますにゃ~」
「ん。シリダの街までお願い」
「畏まりましたにゃ~」
「ちょっといい?」
乗り込もうとしたところ、マーシャさんが車掌猫に話しかけた。
「悪いけど、『猫の特急切符』って売ってる?」
「残念ながら我々は販売しておりませんにゃ~」
「どうやったら買えるかしら?」
・・・いやいや、ゲームの課金アイテムなんだからこの異世界で買えるワケ・・・
そう思いながら、マーシャさんと車掌猫が2,3言葉を交わす所を眺めていると・・・
「でしたら、こちらの村で『券売所』の設置を提案しますにゃ~」
ウソォ!?
「お支払方法はこちらで決めさせて頂きますにゃ~」
「えぇ。完成したら、販売もよろしくね」
「もちろんですにゃ~。どうかこれからも我々猫の特急鉄道のご利用をよろしくお願いしますにゃ~」
そう言って、車掌猫が頭を下げる。
私は開いた口が塞がらない。
まさかマーシャさんがこっちの世界で、課金アイテムを買えるようにするなんて・・・
「マーシャさんどうやったんすか・・・」
「盗賊スキルの≪詐欺師の話術≫が役に立ったわ」
あー。確か交渉できるNPC相手に有利に交渉できる確率を上げたりするスキルだっけ?
値段交渉だけじゃなく、嘘やハッタリ、恫喝等で相手をビビらせたりするスキル。
もちろん言葉が通じない相手も居るが、相手が猫車掌ならこの程度の交渉は出来るって事か・・・
「ガチャ!ガチャもできるっすか!?」
「異世界でガチャショップ運営してるヤツ見っけたら交渉してあげる」
ガチャは悪い文明!!
さて、気を取り直して行き先を伝えて汽車が出発。
『ご乗車、ありがとうございますにゃ~。この列車はゲイリーウッズ村発、シリダ直通ですにゃ~。間もなく、シリダ、シリダですにゃ~。お忘れ物が無いようにご注意くださいにゃ~』
流石課金アイテム。あっという間に到着か。
到着したらしいので列車から降りると・・・腐臭が漂ってくる。
「念のため、シリダ南の街道で降りたけど・・・」
なんだか天気も悪いな。曇り空だし・・・いや、これ雲じゃないな。
「日光が遮断されてますね」
「なんかシリダ方面もいや~な気配してきたわね」
時期はまだ冬だから滅茶苦茶寒いし、周りの植物も元気がない。
「ちょっと偵察行ってくるわ。エリシアは簡易拠点作って皆でここで待ってて」
「分かりました」
マーシャさんが隠密スキルで姿を消したのを合図に、私は魔法で即席の拠点を作成し、マーシャさんの帰りを待つことにする
「≪樹木の隠れ家≫」
樹木1つを隠れ家にする魔法で、即席の拠点は完成。
耐久度は大したことは無いが、居住性はバッチリのようだ。
内部は現代日本のようなちゃんと空間になってる。
・・・私の家より住み心地良い気がする。でもここじゃ実験とか患者受け入れには不便なんだよな。
「どうしたんすか?エリシアさん」
「いや、なんか自分の魔法に負けた気がして」
まぁそれはともかく、暫く待っているとマーシャさんが隠れ家近くに戻って来た。
「シリダの街だけど、厄介なことになってるわ」
「厄介?」
「アンデッドの大量発生。町が丸ごとアンデッドに占領されてる」
げぇ・・・
「プレイヤーの仕業・・・っすかね?」
「アキヒト、救援出したアンタのギルドメンバーのクラスは?」
「女アバターで名前は「レーシア」って名前っす。確かクラスは『占い師』系の魔法使いだったはずっす」
占い師系か。情報戦が得意な魔法系統だけど、派生や上位クラスなら戦闘もできるとは思うから、アンデッド相手でも逃げる程度は出来そうだが・・・
「とりあえず、街を迂回して森に行ってみましょう」
「ん。迂闊に街に突っ込むと危険」
「じゃまずは移動用の援護かけときますね。≪魔法範囲化≫≪森渡り≫」
「じゃ俺も≪魔法範囲化≫≪超加速≫」
移動速度向上の魔法を行使して、街をぐるっと迂回して北側の森に近づくと・・・ゾンビの哨戒らしき一団が道中でウロウロしてるのを発見。
「≪薬液投擲≫!」
マーシャさんが先手必勝でビンをゾンビ軍団に投げつけると、ゾンビ軍団は瓶の中身を浴びて即座に昇天。
「アスフォデルスから作った『楽園の液体』は効果覿面ですね」
アスフォデルスの花から精製した魔法薬『楽園の液体』はそれを浴びたアンデッド系モンスターやクリーチャーを問答無用で昇天させる効果を持つ強力な魔法薬だ。
ちなみに猛毒扱いなので、生きてる人間や生物が飲むと眠るように楽園に昇天するので取り扱い注意だ。
浴びた程度なら普通の生物なら問題は無いし、洗い落とせば済むけど。
「エリシア。楽園の液体は後どれくらいある?」
「まだ余裕ありますよ。100本くらいあります」
「なら、大軍が来たときはよろしく。アンデッド相手だと物理職はキッツイのよね」
アンデッド系は物理攻撃が効きにくいからなぁ。
アンデッド特攻武器は基本弱いし、聖職者系クラスなら魔法1発で片づけられるから、物理攻撃主体のクラスからは敬遠されがち。
「今のって巡回っぽいっすね」
「ガッツリ組織化されてる。死霊術師系でかなり上位かも」
「うへぇ・・・死霊術師系って私の趣味じゃないんですよね」
死体グラフィックがキモイし、陰鬱な雰囲気しててあんまり好きじゃないクラスだから、ゲーム時代から苦手だったんだよなぁ。強いっちゃ強いらしいけど。
ゾンビゲーとかホラゲーも私は苦手だし、ゾンビ物タイトルやホラータイトルの映画も見ないようにしてるくらいだ。
「町が丸ごとバイ「それ以上言わないでください」
遭遇するアンデッドの部隊を片付けながら、私達は北の森を目指した。
≪薬液投擲≫
種別:制限・攻撃スキル
制限:盗賊系、忍者系、その他
属性:物理・毒
射程:0~10m
形状:射撃
水薬や液薬が入った瓶を相手に投擲するスキル。
回復用の薬を選べば対象は回復し、毒薬の瓶なら相手に毒を浴びせられる。
液体の瓶なら何でも良いので水や酒などが入った瓶も投擲可能。




