第92話
事故に気を付け、もう一度再現するため、再び日本語で試す。
木簡に詠唱文をすべて書き終えると、やはり私のMPを勝手に吸い上げて魔法を発動させた。
手を離すと、暫く発動させた後、魔法発動が収まった。
「・・・詠唱文の書き方を工夫すれば、制御できる?」
念のため魔法で焼き払い、制御用の文章を考えて付け足してみた・・・ら今度は耐えきれなかったのか、勝手に砕けた。
「・・・初歩的な魔法からかな。いや、その前に」
とりあえず、≪通信≫でプレイヤー勢に報告して集合
「魔法付与できたんすか!?」
「付与っていうか・・・暴走?って感じですけど」
同じように日本語で詠唱文を魔力で木簡に書くと、勝手に発動。
「・・・ちょっと貸して。純粋な軽戦士職の私ならMP減っても大して問題無いし」
マーシャさんに言われ、半暴走気味な魔法記録木簡をパスすると・・・不発。
「・・・ダメね、魔法職じゃないと反応しないのかも」
「じゃー自分が」
アキヒト君が触ると、再び発動。
「コレ制御ってどうやるんすか!?ウ・・・」
あ。MPが尽きてダウンした
「制御文書き込もうとしたんですけど、やっぱり難しくて」
「本職じゃなくても作れたのは良い発見」
「っていうかコレ、付与って言うかスクロールに近いわね」
そうなんだけど・・・
「現状はスクロールの下位互換ですね。マーシャさん使えないですし。
消費しない点は優れてますけど」
「でも、研究する価値はあるはずっすよ」
MP枯渇症状からようやく復帰したアキヒト君が起き上がる
確かにそうだ。思わぬ発見だが、コレを発展できれば私やアキヒト君でもスクロールや魔法の品を生産できる。
とりあえず、マイコニド達にこの発見を持ち込んで研究を進めてもらう。
≪二重詠唱≫の方は、とりあえず下位の魔法から練習を進めて、ゆっくり慣れよう。
さて、そんな発見から数日後、対面鏡でジャン・バラさんから連絡が入った
どうやら無事に西大陸に戻れたようだ。
『やぁエリシア。久しぶり!』
「お久しぶりですジャン・バラさん。そっちの様子はどうですか?」
『キャラバンはまぁまぁな成功で、今は西大陸だよ。
それでエリシア。化粧水や美容液の話なんだけど・・・増産は10倍じゃ効かないかも』
え゛
『あの後、ボクのスポンサーにサンプルを渡したら、ものすごく気に入っちゃってね。
派閥のサロンで絶賛しちゃったせいで、凄い数の注文が来ちゃったんだ』
いや知らんがな。
「増産しろって今言われても無理ですよ。現状で作れるのは私くらいですから。設備も無いですし」
本当は原材料の一次加工ならベッティちゃんもできるレベルにはなってるが、おそらく相当な修羅場になるのは目に見えてる。
『うん。で、美容品について僕のスポンサーが君と交渉したいってさ』
交渉?・・・レシピを売れとかかな?
ぶっちゃけ美容品レシピを売るのは吝かではない。
作れるなら他の人間にレシピを売って、できるなら改良して貰っても良い。
「別に大丈夫ですけど」
『分かった。ちょっと待ってね』
しばらくすると、対面鏡が別の人を写した
『初めましてエリシア。
私はショーロ港湾都市代表のハシユキと申します』
ぱっと見は東洋人の見た目の女性だが・・・服装や顔立ちから日本人っぽく無いな。
どっちかって言うと韓国人っぽい。
服装も・・・なんだっけ、韓国の歴史ドラマで見たことある服装。
韓服だっけ?なんか豪華そうな服装。
紫がメインカラーの衣装に金細工の簪を刺した、裕福そうな女性。
「どうも。ゲイリーウッズ村のエリシアです」
『単刀直入に申します。貴女の作製したあの美容薬。
アレの作り方を売ってもらえますか?』
やっぱりか。
「別に良いですよ」
『おや。レシピは門外不出と言う訳でもないと?』
「作るのが結構手間でして、量産体制が整ってないと要求する量と品質は作れませんよ。
むしろ、作れる人間を増やしてほしいくらいです。
レシピを売る事に抵抗はありませんよ。ただ、安値で売り払う気も無いですが」
『結構。報酬ですが・・・まず手付として、そちらが要望していた鉄材。
それを次の交易から一定額で売りましょう』
鉄材は少ないから助かる。
ゲームみたいに鉱山や鉱脈が近くに都合よくあるわけじゃないから、他所から手に入れる必要があったんだ。
鉄があれば、リッシュさんのカラクリ製品も金属素材を使用してパワーアップできるし、合金の材料にすれば線路だって敷設できる。
定額って事は、おそらく値段は変動しないって事かな?
肝心の値段は・・・後で交渉するか。
『次に、付与師を探していると聞いておりましたが、こちらで抱えている術師を1人、5年ほど派遣という形で貸し出しましょう』
術師1人を5年かぁ・・・その間に技を盗めれば良いが。
まぁ向こうもスパイとか兼ねてるんだろうな。
火薬とかのヤバげなヤツの実験は、派遣期間中は無しにしとこ。
「村のルールに従ってくれるなら、その提案は助かりますね」
『では、合意という形でよろしいですか?』
まぁ作れるもんなら作ってみろという感じだし。
「はい。レシピの受け渡しはどうしますか?」
『それなら、この『犬の航空輸送券』を使用しましょう』
課金アイテム!?
確かに、それも取引できるアイテムだが・・・
それを入手するのに幾ら積んだか知らないが、この人も複数のプレイヤーと関わりを持ってるのか。
「分かりました。先に契約書を交わしてから、レシピをお渡しします」
犬の航空輸送券はアイテム、もしくは使用者を1名だけ任意場所や対象へ送ることができるアイテム。
同じ高速移動アイテムである『猫の特急切符』とは違って、エリア指定だけでなく、人物も行き先に指定できる。
だから知り合いのプレイヤーに直接アイテムを送ったり、知り合いの元へ高速移動できる。
ただし、フレンド機能にある『ブラックリスト』に登録されている相手には効果を発動できない。
『えぇ。ではすぐに契約書を用意して届けるから』
うーむ。美容のためなら貴重な課金アイテムも使うのか・・・
≪魔女≫
系統:魔法使い系初期
主武装:「杖系統武器」「箒」「衣服防具」
魔法使い系クラスの1種。
呪い属性を主軸とした攻撃魔法をや弱体化魔法、状態異常魔法を得意とする魔法系統。
エルドラド・クロニクルでは習得用クエスト「黒魔術の目覚め」をクリアすることで習得できる。
しかしアップデートにより弱体化効果や状態異常効果に耐性を与える装備が増えたため、対人戦では呪い属性攻撃魔法を主軸にするプレイヤーが多い。
本作の主人公エリシアは時代と逆行して≪束縛≫等の弱体化、状態異常系魔法を主軸に習得してる。




