3 特異点
ピーロロロー
(と……り……?)
リヴィアは意識が段々と浮上していくのを感じる。その耳には、鳥の鳴く声が聞こえていた。
ピーロロロー
(げん……じつ……)
リヴィアはミロとダールの夢、そしてルゥとの夢の世界から帰還したのだと自覚した時、瞼を持ち上げて空を見上げる。雲一つない、真っ青な空を、一羽の大きな鳥が円を描くように飛んでいた。
「そら……?」
ボーッと見上げているリヴィアであったが、おかしな事に気が付く。
(私、なんでこんな所に……?)
リヴィア達はガーゴ村跡地で寝ていたはずだった。ガバッと起き上がり、リヴィアは周りを見回して息を呑む。その視線の先には崩れたカマクラの壁と、土砂崩れの後のような光景が広がっていた。
むしろ、リヴィア達の周りを綺麗に避けて、土砂崩れしているように見える。まるで穴の中に落ちたような形のリヴィア達は、ポツンと空を眺めるしかなかった。
「ニコレット! ニコレット起きて!」
「ん……んん……リヴィア?」
「良かった、大変なの! これを見て!」
「こ、これはっ……一体……」
「分からない……。起きたらこんな事に……」
「ん、んん……んー?」
「キアラ?!」
ニコレットも周りの状態に息を呑む中、キアラが目を擦りながら起き上がる。
「んんー? あ、リヴ姉おはよー! ニコ姉もおはよー!」
「キアラー!」
「良かった、無事で!」
相変わらずマイペースなキアラだったが、いつも通りのキアラに安心したリヴィアが抱きつき、ニコレットが優しい手つきで頭を撫でる。「うう……、く、苦しい」とキアラはリヴィアの戦乙女の戦衣パワーで殺されかける。
リヴィアの背中に必死な思いでタップするキアラ。やっと気が付いたリヴィアが解放するが、割と半分死にかけていた。そんなキアラも意識がハッキリとして周りを見渡す。
「ふえ? ここ、どこ?」
「どうやら、ガーゴ村自体が崩壊したようね」
「う、うん。まるで私たちを避けるように……」
「がーごぉ?」
キアラは気を失っていたのでまるでわかっていないようだが、リヴィアとニコレットは周囲の様子を見て何となく状況を把握する。
穴の高さは大体四メートル程であったので、登ろうと思えば登れなくもない。別の事に頭を抱えて悩んでいるキアラを放っといて、リヴィアとニコレットは空を見上げてどうするか考えている。
すると、上から声が聞こえてくる。
「おっ、ここじゃねェかァ?」
「ソノようですね。サァ早く引き上げましょう」
ヴァルと緑の生体兵器が上から覗いてくる。
「よゥ! 元気かィ? お嬢さん方」
「ヴァル! あと……? 早く引き上げなさいよっ!」
「ァ、アレ? 今、私を見て何か言おうとして諦めませんデシタ!?」
涙目マークでワイヤーを下ろす緑の生体兵器であった。一人ずつゆっくりと引き上げで、無事全員が地上へと上がることが出来た。
「これはまた……。一体何があったのよ……」
「さァな。目を覚ましたらこんな事になってたからな」
地上に上がったリヴィアの目の前には草原が広がっていた。鬱蒼としていた密林の姿はそこにはなかった。ガーゴ村は完全に地面の下に埋もれており、綺麗に草原の中に溶け込んでいた。
吹き抜ける風がリヴィアの髪を優しく撫でていく。陽の光もまるで歓迎しているような心地の良さだった。
そんな中、ニコレットが気付く。
「ミロはっ!? 誰かミロを見なかった!?」
「「…………」」
ヴァルと緑の生体兵器は横に首を振る。リヴィアは俯き気味に言葉を発する。
「あのねっ! 聞いて欲しいの……夢の話……なんだけど」
「……リヴィア?」
リヴィアは夢の中の話をする。ミロとダールが幸せそうに、最後の挨拶をしていったことを……。
「つまり……もうミロはいない……と」
目を大きくして驚くニコレットに、リヴィアは静かに頷く。
「これが……タイムトラベルの弊害、なのかしらね……」
「ニコレット?」
「私達は恐らく時間の流れから逸脱している」
「ど、どういう事?」
ニコレットは周りの現状、リヴィアの夢の話からある仮説を立てる。
「つまり、私達は役目が終わればその時代から弾かれる……ということよ」
「役目……それって、もしかして封印の事?」
コクリとニコレットは頷く。
「じゃあ何か? 俺達ャ封印を解いちまったからお役目御免って事かァ?」
鋭い視線でヴァルが睨んでいる。
「そうとも言えるかもしれない。でも、まだ推測の域を出ないわ」
「じゃ、じゃあダールの息子は?」
「それも恐らく、第二の魔王とやらが関係するわね……。もしかしたらだけど、私達は時代の特異点に飛ばされているのかもしれないわ」
「特異……点」
「特異点というのは、本来は起こらないはずの二つの線が交わる事。ここで言う特異点は魔王に支配されるルートとそれを回避した場合のルートがある場所の事よ」
「ん、んん?」
ちょっと何を食べてるかよくわからない味を説明しろ、と言われている感じで理解が難しいリヴィア。
「つまり、魔王がいる時代の事よ」
「え? じゃあ、ダールとダールの息子で二回回避したって事で良いのかな?」
「そうね……ダールの方はよく分からないけれど、息子さんの方はきっと大丈夫なはずよ?」
「そっか……何だかあまり実感湧かないなぁ」
「つぅかよォ、その話が正しいとするなら……」
「コノ時代にも居ますね。封印と魔王候補者ガ」
「ええ、間違いないと思う……たしか収穫人形と適合者よね……まずはそこを探りつつ、封印の場所も特定して破壊って所かしら」
ここであっ! というようにキアラが思い出す。リヴィア達は、どうしたのだろうとキアラに注目する。
「思い出したぁ! ガーゴって確かあのおじさんの名前だぁ! えっとねぇ、ダラック・ガーゴって言ってたよぉ?」
「ダラック……そうなのね。ダールとミロの息子ダラック……か」
あれぇ? というようにキアラは不思議そうにしている。
「えっと、ダラックおじさんは何処にいるのぉ?」
「キアラ……その、ダラックって人はもう居ないの。あと……ジハードちゃんも……」
「ええっ! そうなの? 残念……お友達になれると思ったのになぁ〜! あっ! ジハードちゃんなら大丈夫っ! キアラとずっと一緒だからっ!」
「一緒……?」
思った以上に軽いノリでそう言うキアラに、リヴィア達は面を食らう。そしてキアラが胸に手を当てると、真っ赤な輝きと共に、その右腕に光が収束して、あのドラゴンクローが装着される。
キアラは嬉しそうに「ほら、見て見て〜」とブンブン腕を振り回す。見ていたリヴィア達は何が起きたのか分からず、唖然とその喜ぶキアラを見ていたのだった。
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