36 涙は枯れない
第三章完結です
「お久しぶりね……皆さん」
「……ミロ……なのね?」
暗がりからボロボロの布を被った人物が進み出て、そのフードを脱いで答える。
「ええ。相変わらず綺麗ね。ニコレット……そして、リヴィア」
その姿は大分老いてしまっていたが、間違いなくミロであった。その声も年季が入ったようにしゃがれていた。その声を聞いて、リヴィアの瞳に光が戻る。
「ミロ……本当にミロなのっ!?」
ニコレットからゆっくりと離れて、フラフラとミロに近づいていく。その伸ばした手と声は震えていた。
「リヴィア……私よ。ミロよ。大分おばあちゃんになっちゃったけどね」
ミロは少し恥ずかしそうにそう答えた。
「ミローーーーっ!」
リヴィアはミロだと確信して抱きついた。そして、涙が溢れ、肩を震わせている。そんなリヴィアに、ミロは優しく背中に手を回して撫でる。
「ミロ、わ、私……私……」
「ゴメンなさい、リヴィア。アナタにこんな辛い役目をさせてしまった事……許して欲しいの」
「ち、違う! 違うのミロ……私、私はアナタを……そして、ダールを……息子さんを……救えなかった……」
「いいのよ……もう、いいの」
リヴィアはうわんうわんと泣いてミロを強く抱きしめる。ミロはそんなリヴィアの頭を優しく撫でてから、顔を見るために肩を掴んで優しく離す。
「リヴィア。アナタはよくやってくれたわ。私じゃダールも息子のダラックも止められなかった」
「私……何も……してない……グスッ」
「アナタが導いてくれたから、今があるの……結局何も出来なかったのは私の方よ」
リヴィアはブンブンと首を振っている。ミロは優しくリヴィアの前髪を左右に分けて、その目をしっかりと覗き込む。
「アナタ達が私を動かしたのよ。背中を押してくれた。勇気を分けてくれた。アナタ達が私にとっての英雄であり、最高の友達よ」
リヴィアは目に涙が溢れ、唇が震えるのを必死に止めようと食い縛っている。
「だから……もう、泣かないで。私の英雄達よ……」
ミロは気付いていた。後ろに控えているニコレットもまた、涙を流していた事に。そして、入口の向こう側にいるカウボーイの男も表情は見えないが肩を震わせている。
ミロはニコレットにも手を伸ばす。その優しい目と表情に、ニコレットは我慢していた気持ちが溢れる。両手で急いで口と鼻を押さえたがダメなようだ。
そしてミロへと向かい、ニコレットも飛び出して抱きつく。珍しく声を上げて泣くニコレットに、リヴィアも驚いているが、ニコレットも同じ気持ちだったのだと気付いて、ニコレットに負けないほど大声で泣く。
カマクラから響く二人の泣く声に、ヴァルはただただ俯き、ハットを深く被るのであった。
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「さぁ今日はここで休んでおゆき」
「え……でも……」
「大丈夫。リヴィア達が使っていた部屋は無事だったから掃除しておいたよ」
「ミロ……ありがとう……」
そう言って泣き止んだリヴィア達はミロとの他愛もない思い出話をして、部屋へと向かった。リヴィア、ニコレット、キアラで一つのカマクラへ、そして残ったカマクラに緑の生体兵器が向かうと既にヴァルが寛いでいたのだった。
「ミロ! 明日もまたお話しましょう? これまでの事……聞きたいから……」
「分かったわ。また明日……お話しましょうね! 女子トークを!」
「うふふ……楽しみにしてるっ!」
「私も楽しみっ!」
「ええ。それじゃあ、おやすみ……」
「おやすみっ!」
「おやすみなさい」
そう言ってミロはリヴィア達から離れた。リヴィアとニコレットは、未だに眠っているキアラを気遣いつつ、キアラを真ん中に、仲良く三人で川の字に寝るのだった。
ヴァルとグリーンメイルは一つカマクラの下、何となしに無言で気まずい状態だった。グリーンメイルのバイザーには充電中にのマークが点滅している。二人はお互いちょっと離れて横になっていたのだが、その距離がまた、二人の間に気まずい雰囲気を漂わせる。しかし、そんな空気をヴァルから破る。
「俺ァ、あのレッドとか言う奴を認めた訳じゃねェ……だが、止められなかった俺が一番悪いんだ。分かってるんだ……」
「……珍シイデスね。アナタが弱気なのは」
「……八つ当たりしちまった俺がカッコ悪くてな……。この事は女連中だけには言うなよっ? レッドにもだっ!」
「ワカッテます。お互い、次は救いましょう。ワタシも大切な友達を失いましたからね……ツライのは同じです」
「ふん、生体兵器の友達ってのはまた変わった奴だな」
「エエ、とても強く雄々しい存在でしたよ」
そう言ってグリーンメイルは部屋の天井に画像を投影する。キアラとジハードちゃんとグリーンメイルの三人で撮った写真。スクロールするように何枚もめくっていく。それを見てヴァルが小さな声で呟く。
「ふん……、今度は……俺も混ぜろよ……?」
「ワカリマシタ……約束デス」
男同士の結束がまた生まれたのだった。
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夜も更けて、全員が寝静まった頃……一人の人物がガーゴ村を旅立とうとしていた。月明かりに照らされて見えるのはミロであった。
ミロは月を眺めて言う。
「月が……キレイですネ……」
「…………ああ」
その言葉を返したのはレッドだった。ガーゴ村の出口の壁にもたれたまま、ミロと同じように月を見上げている。
「ありがとう……アナタの言う通りだった……リヴィア達が私達を救ってくれた。本当にありがとう……」
「………………」
振り返らずにミロは続けて喋る。
「息子は……ダラックは誰かに止めて欲しかったんだと思います。自分じゃ止められないって分かってたと思います」
「………………」
そう言ってクルッと振り返ってお辞儀をして、立ち去ろうとするミロであったが、レッドが止める。
「…………待て」
「?」
ミロは立ち止まり、レッドへと振り向く。レッドがもたれていた背中を離してミロへと近付く。そして手に持っていた物を渡す。
「……受け取れ」
「こ、れは……?」
それは小さな十字架であった。
「ダラックからの伝言だ」
「!?」
「すまねぇ……達者でな、母さん」
「!」
それだけ言うとレッドは立ち去る。
「……いくつになっても、涙は枯れないもんだね」
ミロは大粒の涙を流しながら、渡された十字架を胸に当てて深くお辞儀する。そして、ミロもまた、闇の深い密林の中へとボロい布キレをフード代わりに立ち去って行くのだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
第三章はこれにて完結です。ありがとうございました。
次回はまとめor第四章突入です。
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