9 やっぱり、リヴィア姫
前回の続きからです。
「ハッピーバースデー! わたしっ!」
それを聞いた会場中の誰もが賛辞の言葉を投げながら、大きな拍手を送る。
会場の光球がそれと同時に光を照らし始める。光に照らされた国民達は誰もが笑顔で、リヴィア姫のサプライズに興奮しっぱなしのようだ。
「こりゃすげぇ。あのじゃじゃ馬娘が大きくなったもんじゃねぇか。」
「不謹慎ですよジオラル。ですが、本当に素晴らしいパフォーマンスでしたね。」
「ああ、大惨事が起こるんじゃないかとヒヤヒヤしていたが、どうやら俺の思い過ごしだったようだ。しかし、本当に、、、本当に|ぼぼぎくなりばしただぁ《おおきくなりましたな》!」
「はっはぁ、旦那はさっきから泣きすぎだぜ! なぁラー坊! ……ラー坊?」
「…………女神、様」
冗談交じりにジオラルが賛辞を送り、ハイドは注意しつつも感心したようにリヴィア姫に視線を向ける。心配性のロスはその重荷を解かれたのか、感激のあまり天を仰ぎながら涙を流す。そんな涙脆いロスの背中をバンバン叩きながらジオラルはラリィに話を振るが、ラリィの意識はリヴィア姫に釘付けのままであった。しまいには「俺、もうここで死んでもいい……」などと物騒な考えまでこぼし始める。
「あ、あー……こりゃ重症だわな。」
「何を言ってるんです? あなたの方がよっぽど重症ですよ」
「な、なんだとこの野郎! そりゃどういうこった! あぁん!」
「どうもこうもありません。……全くこれだから野蛮人は嫌なんですよ」
「びべざばぁぁぁぁぁ!」
「…………女神、様」
ジオラルとハイドの喧嘩が始まり、ロスの涙腺が崩壊し、ラリィの意識……いや魂は天へ昇っていった。
「あーすっきりした! 我ながら最っ高の出来ね! 父上もそう思うでしょ?」
リヴィア姫が額の汗を拭きながら、もう片方の手で団扇を扇ぐようにパタパタとしている。その表情はすがすがしさで満ち溢れている。舞台へ上がり、バルド王の元へと歩みどやーっとするリヴィア姫であったが思いのほか王のレスポンスが悪い。まるで出来の悪いクルミ人形のよう口が開いていた。
「?……ちょっと、聞いてるの? もしもーし!」
「…………」
「?……ダメね、光電!」
反応のない王にすかざず初級魔法をぶちかます。「あばばばばば!!」と体中を電流が駆け巡る。
「……ふむ、天使ですかな?」
「まだダメなようね。ルクサー!」
間髪入れずに二度目の魔法をぶちかます。「うそうそうそうそ!!」と体中を電流で炙られながら、必死に冗談であった事を伝える。
「全く、もういい歳なんだからしっかりしてよね!」
「……う、うむ。」
やれやれといったようにリヴィア姫はジェスチャーする。王の身体からは焦げ臭いにおいと、黒い煙が立ち上っているが命に別状はない。王は怯える目で「天使はどこへ……」と呟いているので、現実逃避から完全には戻ってこれていない様子だ。
「それよりどうだった? 私の踊り! 歌もたくさん練習したんだからね!」
「おぉ! とても良い出来じゃったぞぃ、あまりの出来の良さに今も鳥肌が立ちっぱなしじゃわい。」
「でっしょーー! 頑張った甲斐があったわぁ! この衣装も素敵でしょ?」
王の言葉に気分を良くしたのか、リヴィア姫は目の前で衣装を見せるように両手を広げクルっとターンしてみせる。
「おお、おお、こりゃ見事な衣装じゃのう! とても似合っておるよ!」
「フフフっ、ありがとう! 私が自らデザインして作ってもらったのよ!」
「ほう、そうであったのか。ではあとで服の仕立て屋には褒美をやらんとのぉ! おお、それはそうと、ワシがこの日のために用意した服があるのじゃが、そちらもぜひ着て見せておくれ。きっと似合うじゃろうて。」
「? 何言ってるのよ? 今着てるじゃない。」
きょとんとした顔でリヴィア姫が言う。その瞳はどこまでも澄み渡っている。
一瞬何を言ってるか理解できないバルド王。嫌な汗が流れる。
「……いや、じゃからワシが用意した服をのぉ」
「着てるじゃない。」
いやいやいや、どう見ても用意していた服と違うと混乱し始めるバルド王。リヴィア姫はまだ王がボケているのかとため息交じりに三度目の魔法を放つ構えをとる。
「ちょ、ま、待ってくれ! ワシが用意したのは天女の羽衣という聖なる正装で……」
「コレがそうだって言ってるじゃない。」
構えを解いて両手を腰に当てながら堂々と言い放つ。いやいやいや! 原型ないだろっ! と心の中で王は盛大に突っ込む。
「なんかやたら布が垂れてくるし動きづらいし、ふわふわ浮いてるのが鬱陶しいから、私好みの服にデザインし直したの。こっちの方が身体のラインもしっかりしてて、動きやすいし可愛いでしょ?」
笑顔で軽くジャンプする。ピコピコっと跳ねるツインテールが実に可愛い。
一瞬何を言ってるか理解できないバルド王。顔が青ざめる。
「つ、つまり、その服が天女の羽衣であると……?」
「? だからそうだってば。あ、でも正確にはあとなんたらの……乙女っていう服との合作ってところね。」
「い、いい、戦乙女の戦衣かっ!?」
「あ、そうそう! たしかそんなような名前を頼んだ服屋の主人が叫んでいたわね。」(ニコッ)
考え込むように何もない空間を睨んでいたリヴィア姫だったが、答えが分かって「それそれ!」といったすっきりした顔をしている。
服屋の主人が叫ぶ? そりゃそうだよと王は頭を抱える。戦乙女の戦衣といえば宝物庫の中でも聖剣魔剣に次ぐ代物で、着た者の戦闘力を何倍にも強化する効果があり、いくつもの大戦を戦い抜いた至高の一品である。
天女の羽衣においては、あらゆる魔を撥ね退ける聖なる力に守られた羽衣であり、平和の象徴としてクラーゲン王国の大事な行事にのみ着ることを許された国宝であった。
そんな大事な品々をリヴィア姫は「気に食わない」と服屋へと持ち込み、自分好み仕立てたということであった。
「……な……なな…………」
あまりの出来事に頭がパンクし、再び壊れたクルミ人形へとジョブチェンジしたバルド王は、そのまま白目を向いて泡を吹きながら仰向けに倒れる。
「! ちょ、ちょっと? ……もう仕方ないわねぇ。」
本日三回目の紫電がトドメのダメ押しと言わんばかりに王の身体を貫き、ビクンビクンと身体のあちこちが跳ね上がる。躊躇? そんな言葉は遠い過去に置いてきた!
会場の遠くの方で「バルド王ぉぉぉぉおお!」と忠誠心の塊であるロス騎士団長の悲痛な叫び声が聞こえた気がしたが……まぁ気のせいであろう。
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