35 語られる真実
「時間……越える? どういう意味?」
「……まさか、あの時のダールの攻撃によって私達の時間が跳んでいた……?」
「なにィ!?」
レッドの言葉に、ニコレットが一つの仮説をたててみる。
「つまり、ジハードちゃんの傷はその跳んだ時間で癒され、ダールは永い時間の中で寿命を迎えた……?」
「何だと! じゃあダールはもうこの世にいねェって言うのか!?」
「それは分からない……どれほどの時間をタイムトラベルしたのか分からないけど、ただ一つ言えることは、ジハードちゃんのような長寿の存在でなければ、生きていない可能性が高いわ」
ニコレットの仮説にヴァルは舌打ちをしつつ、イライラした様子で何かを考えている。
「……まさかとは思うが、あの大男が俺らの名前を知っていたのはダールが教えてたっつぅことはねぇよな?」
「ありえない話ではないわ。ダールの子孫があの大男だった可能性は十分にある」
「つまり……子供……?」
ヴァルの仮説にニコレットなりの答えを出す。そこで緑の生体兵器が動き出す。
「時間ヲ越エタ事で、恐らく我々の持っている情報というのは大分異なるようですね。微弱ではありますが魔力を検知致しました」
「魔力……環境が変わってきているってこと!?」
「ソノようですね。しかし、時間を越えたと思われる前と比べて逆算すると、恐らく現在は50~60年程先の時代のようデス」
「50~60年!?」
マァ大体デスけどね、と言う緑の生体兵器。リヴィアはレッドに再び尋ねる。
「レッド! 本当に私達は時間を超えたの?」
「……ああ。そして、ダールなら俺が殺した」
「「「!!!!」」」
突然の言葉にリヴィア達は息を呑む。そして、次に怒りがやってくる。
「おいっ! 殺したってどうゆう事だっ!」
「ヴァ、ヴァルッ!」
ツカツカと迫ってレッドの胸ぐらを掴み、持ち上げるヴァル。その目はかなり血走っており、怒りで我を見失っていた。
「アイツはなァ! まだ間に合ったはずなんだっ! 直ぐに目を覚まさせてやりャあ助かったんだっ! なぜ殺したァァァ!」
「手遅れだった。それにヤツ自身が望んだことだ」
「!? 〜〜〜〜っくそおおおっ!」
レッドの言葉に、ヴァルは目を瞑って咆哮をあげる。そして、レッドの胸ぐらを投げ捨てるように離して、密林の中へとツカツカと消えていった。
「ヴァ、ヴァル……」
ヴァルの反応に驚くリヴィアとニコレット。だが、ヴァルがいなくなって、次にリヴィアが声を荒らげた。
「何でよっ! ……なんで殺す必要があるのっ!」
うつむき加減にリヴィアはそう言った。表情は見えないが、服の袖を強く握っているのを見ると怒っているように震えている。
レッドはいつもと変わらない声で答える。
「奴は魔王の一部になったんだ。殺すしかない」
「そ、そんな……。じゃあ私達は何のためにあそこへ行ったのよっ! ダールは死んでるんでしょっ! なんであそこに行ったのよっ!」
レッドはそのつばの広い三角帽子から片目だけを覗かせて答える。
「あの男。ダールの息子を止めるためだ」
「! ダールの……息子?」
「……そうだ」
リヴィアは口をパクパクさせる。ダラックはダールの実の息子であった。
「止めるって……どういう……ッ!?」
そしてリヴィアは思い出した。隠れ家で息子を止めてくれと頼んで来た老獣人の事を。
(そういえば、あの時……あの獣人さんは私の名を呼んでいた……)
リヴィアはその時の事を鮮明に思い出す。まるで電気が駆け抜けて、そこの記憶だけスポットライトを当てられたように。
(あの赤い目……まさか、そんな……)
「ミロ……まさか、その息子ってダールとミロの子供なのっ!?」
「…………そうだ」
リヴィアの中で一本の線が結び付く。そして、その残酷な事実に膝から崩れ落ちる。ニコレットが慌ててリヴィアを支える。リヴィアの顔を覗くニコレットだが、リヴィアの表情には血の気がなく、まるでドラキュラにでも血を吸われたかのように力なくニコレットに寄りかかる。
「リヴィアっ! リヴィア!?」
ニコレットの言葉にも反応出来ないリヴィア。代わりに涙を流すリヴィア。ニコレットはレッドを睨みつける。
「いくらなんでもあんまりよ! 一体何が目的なのっ?」
「…………魔王を倒すことだ」
「その魔王を倒すのと、ダールとミロの息子を殺すことになんの意味があるのよっ!」
魔王の一部となったダールを倒すのは仕方なかったとしても、息子であるダラックを倒す事に一体何の意味があるのか分からないニコレット。それに対してレッドは答えた。
「奴はこのままでは第二の魔王となる可能性があった」
「第二の……魔王?」
続けてレッドは説明をする。ニコレットと緑の生体兵器は静かにその話を聞いたのだった。
「お前達が封印を発見したおかげで、魔王の一部を破壊することに成功した」
「ダールが……犠牲になったわ……」
「魔王の力がそれだけ強大だという事だ。そして、ダールの息子は生まれながらに強大な力を秘めていて、その力でこの世が滅ぼされる可能性があった」
「それを止めたかった……そういうこと?」
コクリと頷くレッド。それを見てニコレットはタメ息をついて尋ねる。
「なぜ……素直に言ってくれなかったの? みんな混乱するだけじゃないの?」
「言ったところで、あの男を殺せるかは別だ」
「…………そうね」
ニコレットは知っていた。リヴィアには人殺しは向いていないと。ましてやダールとミロの子だ。言っていたら殺せなかっただろう。
「なぜ……あの男がこの世界を滅ぼすと?」
「欲望にまみれ、欲望に溺れた者の行き着く先など決まっている」
「……そぉ」
ニコレットはリヴィアを撫でながら、寂しそうに答えた。レッドの言葉にニコレットも心当たりがあったのか、それ以上は尋ねることはなかった。
リヴィアはニコレットとレッドの会話をしっかりと聞いていた。頭は真っ白で何も考えたくないと思考が停止していたが、何故か二人の会話だけは聞いていた。
(ミロ……ごめんね……。ダールも……ごめん)
リヴィアは救うことが出来なかった事に、罪悪感を募らせる。止めてくれと頼まれた息子でさえ、止めることが出来なかった。リヴィアの心は揺れ動く……このまま進んでもいいのか。本当に自分にこの役目を果たす事が出来るのか……と。
「お前が救うのは未来だ」
「…………」
「それだけは忘れるな」
レッドが突然リヴィアに向かって前に言った言葉を告げ、ヴァルの消えた密林へと姿を消した。レッドの言葉はリヴィアの耳に届いていたが、答えることは出来なかった。
ニコレットはそんなリヴィアを立たせてフラフラしながら、共に密林へと進む。緑の生体兵器もキアラを背負って、ニコレットへと続くのだった。
レッドの後を追うニコレット達はある場所に辿り着いた。ニコレットも足を止めて眺める。背の短い葉に覆われたその場所は、燃やされたはずのガーゴ村の跡地であった。
「これは……」
「時ノ流レの無常を感じますね」
緑の生体兵器もこの景色を見てそんなことを言う。人が住んでいたのは昔のことであり、今は誰も住んではいなかった。レッドはそのままガーゴ村の中へと入っていく。
ニコレット達もその後を追った。中は酷い有様であった。鶏の獣人達が散歩していた場所は瓦礫に埋もれ、何かを作っていたカマクラは荒れ果て、埃だらけとなっていた。
整備もされていない為、足元は注意して歩かなければ行けない程だった。そんな中、レッドはあるカマクラの前の壁でもたれていた。ニコレットは覚えている。そこはダール達と共にご飯を食べたりした大きなカマクラだ。
ニコレットはリヴィアに肩を貸しつつ、その場所へと向かう。レッドの前まで来ると「……中だ」それだけ言ってレッドは去っていった。ニコレット達はレッドの指示通りに中へと入った。
薄暗い部屋の中で、ニコレットは懐かしさを感じていた。つい一昨日までこの場でみんなと仲良く食べていた……のにだ。床に落ちている食器は、崩れているが使ったことがあるものだとニコレットは一目でわかる。
ニコレットが机の上に置いてあるスプーンを持ち上げるとサラサラと崩れる。指に残る僅かな塵となったスプーンの残骸を寂しい目で見つめる。
すると、部屋の奥から動く影があった。ニコレットは直ぐに警戒をする。緑の生体兵器も反応するものの、特に警戒はしていない。なぜなら、その人物は。
「お久しぶりね……皆さん」
「……ミロ……なのね?」
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
次回第三章完結です。最後もよろしくお願いいたします。
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