34 脱出
キアラとダラックがお互いの奥義でぶつかり合っていた時、リヴィア達は火口に続く洞窟の入り口にまで来ていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、急いでっ!」
「ハァ、ハァ、この感じは……!」
お互いのエネルギーの衝撃が外へも影響を与えていた。特に湖から覗く火口から黒と白、そして真っ赤なオーラが噴き出していたのだから。
「チッ……これだからトラブルは嫌なんだよっ!」
「急いで向かいましょう! トンデモナイ数値があの火口から溢れています!」
レッドを先頭に洞窟へと侵入するリヴィア達。技の衝撃なのか、洞窟の天井からサラサラっと土が落ちてくる。長い洞窟を突き進んでいくと、途中で激しい音と共に衝撃が霧散するのを感じる。
「衝撃が……止んだ?」
「まさか、決着がついたってことかしら!?」
「モタモタしてると不味いぜェ! とっとと行こうやァ!」
リヴィアとニコレットが確認するように立ち止まるが、ヴァルが止まるなとばかりに声を掛けてくる。リヴィアもニコレットも顔を見合わせて頷き、走り出す。
ようやく出口が見えて来た頃に再度衝撃が走る。いや、衝撃というよりも振動だった。
「地震!?」
「マズイです。この規模の揺れは間違いなくこの火山の噴火を意味しマス! 私達も脱出しなけレバ!」
「待ってあと少しなのっ! キアラを助けに行きましょう!」
リヴィアは忠告を無視して走り出す。レッドは既に出口を通り抜けていた。リヴィアも早く、早くと急いで出口を抜ける。
するとそこには地面から噴き出す赤くドロドロしたものが地面を這っていた。部屋は既に灼熱で、まるで火の中に飛び込んだような暑さであった。
「キアラっ! キアラー!」
叫びながら辺りを見渡すリヴィア。すると数メートル先に横になっている「キアラーー!」と叫びながらリヴィアが駆け寄る。
続いて洞窟からニコレット達が現れ、リヴィアのあとを追うように集まり、キアラの無事を確認する。しかし、地震はまだ揺れていて、いつ噴火してもおかしくなかった。
「息があるわっ! キアラ! キアラっ!」
「ここは危険よっ! 直ぐに運び出すわよっ!」
「おいっ! お前また背中貸してやれっ!」
「ワ、ワカッテマス。殴られませんように……」
「待って! ジハードちゃんは……っ!」
「あれは……」
その視線の先にはジハードが横たわっていた。しかし、マグマに飲み込まれるように少しずつ身体を炎が包み込んでいる。
「……ジハード……ちゃん」
「……いきましょう。リヴィア」
「……くっ」
俯くリヴィアの背中にニコレットがそっと手を置く。リヴィアは唇を噛みしめて走り出す。
キアラは意識がないまま緑の生体兵器におぶさり、そのまま急いで退避する。リヴィアが途中レッドがいない事に気付き、名前を呼ぶとすぐ現れる。
「何処に行ってたのよっ!」
「奴の死を確認してきただけだ」
「奴? あぁ、あの大男の事ね……それよりここを出ましょう!」
そう言ってリヴィアは出口へと向かって走る。レッドも一拍置いて直ぐに向かうのだった。
洞窟内を走るリヴィア達は、物凄い熱量に汗が止まらない。
「なんて暑さなのよぉぉぉ!」
「ハァ、ハァ、無駄口はいいから、とっとと走れや嬢ちゃん!」
相変わらず騒がしいお姫様にヴァルは毒付く。背後には真っ赤なマグマが洞窟に侵入している。必死で走るリヴィア達。
しばらく走ると、大きな地震へと変わる。
「本格的にやべェなァこりャ!」
「このままじゃみんな仲良くお陀仏よっ! 走り抜けてっ!」
「イソゲッ! イソゲッ! 火山噴火まであと僅かデスっ!」
そうして何とか出口へと辿り着くという所で、火山が噴火した。背後から物凄い衝撃が走り抜けて全員がよろめく。
「! みんなっ! 駆け抜けてっ! 来るわよっ!」
「「「!?」」」
ニコレットの声に全員が背後を見てしまった。そう、真っ赤なマグマが押し寄せてきていたのだ。
全員の気持ちは今一つになる。
「「「「あああああっ」」」」
第四コーナーを抜けてラスト200メートルを駆け抜ける。そして、見事に全員がほぼ僅差でゴールを駆け抜けて洞窟の入口の壁に張り付く。そして、ゴールを祝福するかのように真っ赤なマグマが洞窟からケチャップを消防車に詰め込んで放水……いゃ、放ケチャする勢いで飛び出して行く。
そのマグマを見て全員の顔は青ざめる。一瞬でも遅かったら呑み込まれていたと……。リヴィア達はゼーハァ、ゼーハァと肩で息をする。緑の生体兵器とレッド涼しい顔でキアラを横にさせて、応急手当てをしている。
「一息ついたら移動しまショウ。ここもそのうち危険となるでショウ」
「ハァ、ハァ、ハァ、そ、そうね……分かったわ……」
いまだ息が整わないリヴィア。しかし、湖の方からはバシバシと火山岩が放出されている。マグマも噴き出して湖の水に触れては白い煙を出している。火口からは黒くもうもうとしていて、まるで黒と白の煙のように空へと昇っていくのだった。
リヴィア達がその昇っていく煙を見上げているとキアラの意識が戻る。
「こ、こは……?」
「キアラ殿! 皆サン! キアラ殿が目を覚ましました!」
「「! キアラちゃん!」」
リヴィアとニコレットがキアラの元へと向かい、手を握りしめる。その手は壊れた手甲をしたままの右手であった。キアラは意識がハッキリとしないまま言う。
「じ、ジハードちゃんが……ね……私と、一緒に……旅に出たいって……」
「「…………」」
ジハードの亡骸は既にマグマに燃やされていたのをリヴィア達は目にしていた。キアラになんて答えようか悩んでいたが、そばにいたレッドが口を挟む。
「ジハードなら既にお前の中にいる。だから好きにすればいい」
「レッド……?」
「えへへ……そうだよ……ね。あり、がとう……」
レッドの言葉に安心したのか、キアラは再び眠りについた。その顔はとても穏やかで気持ちが良さそうであった。リヴィアはそんなキアラの寝顔に安心した。
するとレッドが離れようと歩き出したので、リヴィアがすぐに止める。
「待ちなさいっ! レッド!」
「………………」
レッドは止まり、首だけを向けている。リヴィアは咄嗟に止めたはいいものの、何から聞こうか悩んでいた。今のキアラに向けた言葉の意味。隠れ家襲撃時の殺生。他にも聞きたいことは山ほどある。
レッドはそんなリヴィアをジッと見つめる。その真紅の瞳にリヴィアはゴクリと生唾を呑み込むが、目に力を入れてレッドに尋ねる。
「レッド! 私達に何を隠してるの? ちゃんと説明しなさいよ!」
「……何を、とは?」
ニコレットやヴァルも注目する。
「アンタ……魔法は使えないのよね?」
「…………ああ」
「じゃあ、どうやってジハードちゃんの傷を癒したのよ!?」
ニコレットもハッとしたようにレッドを見つめる。確かに魔法が使えないこの場所でどうやって治療をしたのか?
「それに……なぜダールを知っているの?」
ヴァルもハッとしてレッドを見る。レッドが駆けつけた時、ダールは既にいなかったはずだった。なのに、ダールの向かった場所を知っていたのは何故なのか?
「………………」
レッドは何も言わず、ただただリヴィアを見つめていた。そして、レッドにしては珍しく小さなタメ息をついた。
「……貴様らは既に時間を越えている」
「時間……越える?」
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
もう間もなく第三章も終わります。最後までどうぞよろしくお願いいたします。
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