33 あばよ
ウガァァァァァア!
クゥゥゥウッ!
両者の間でぶつかり合う強大なエネルギーは、周囲に凄まじい波動を巻き起こす。まるで二人を中心に竜巻と竜巻がぶつかり合うような状態であった。
(押し……切れな、いだ、とぉぉぉぉお!)
(くっ、うう、うううっ!)
一瞬でも気を抜けば殺られると二人とも理解していた。まさに意地と意地の張り合いとなる二人であったが、徐々に限界を迎える。
ガクン
(くっ!)
キアラの左膝が地面につき、体勢が崩れ始める。それを見て好機だと思い、最後の意地を出し切るダラック。
ウガァァァァァア!
(しずめぇぇぇえ!)
「くうううううっ」
やはり体格差があまりにもあり、体力の差がここにきて露骨に目立ってしまう。ググググッと僅かであったがダラックのエネルギーがキアラのエネルギーを押し返し始める。
「ま、まだだよっ!」
(!?)
キアラは右手を支えていた左手を放し、右手と同じようにダラックへと向ける。
(ま、まさかっ!)
左手が輝き、今まで使っていた技のオーラ達が小さな玉となって衛星のようにクルクルとキアラの周囲を駆け回り、左手へと集約する。
さらにその左手の輝きは竜の姿を……いや、ジハードの姿となって宿る。
「みんな行くよっ! 獣拳 森羅万象!」
(何っ!?)
ドゥっと音と共に光り輝くジハードが飛び出す。口の中には色んな色のオーラが駆け巡り、混ざり合い、一つの玉となる。
その色は神秘的で、白と緑が混じりあったような美しい色をしていた。
グラァァァァァア!
(!!!!!!)
小さなジハードが咆哮と共にダラックのエネルギーと衝突する。あまりの衝撃にダラックの身体は後方へと押しやられる。
「行っけぇぇぇぇ!」
(そんなっ! バカなっ! こ、このオレ様がっ! このオレ様がァァァァア!)
グラァァァァァア!
ジュドォオォオォン
ジハードは一気にダラックのエネルギーを食い破り、そのまま突き抜けて行く。ダラックは強烈な光に身体を包み込まれたのだった。
「ハァ、ハァ、ハァ……やったの?」
両腕を地面に付けて、息を整えているキアラ。身体中が汗でびっしょりとなっている。力を使い果たして、今にも倒れそうな身体を何とか持ちこたえて、視線だけをダラックがいた場所に向ける。
もくもくと宙を舞う砂埃で姿が確認できない。次第に意識まで飛びそうになり、キアラは再び下を向いて息を整える。
(ダメだよ、まだ倒れられない)
そう強く首の皮一枚の意識を繋ぎ止めるキアラだったが、その耳に嫌でも入ってくる音があった。
ガラガラ……ドシッ…………ドシッ…………
「ハァ、ハァ、ハァ……」
キアラは顔を持ち上げる。黒い煙の中から、こちらに向かってくるダラックが現れる。
(ううっ……)
身体に力を入れるが、既に身体を寝転ばせない事で精一杯であった。一度でも横になれば立ち上がれない。そう、気付いていたからだ。
ドシッ…………ドシッ…………
ダラックの足音がゆっくりと近付いてくる。
(動いて……お願い!)
とうとう下を向いているキアラの前に大きな影が掛かる。もうダメだと覚悟を決め、目を瞑るキアラだったが、ドカッと目の前に座る音で目を開き、視線を向ける。
するとそこには胡坐をかいて座るダラックがいた。既に原獣化する体力もないのだろう。元の人間の姿であった。ダラックの左肩から先はなかった。傷口は焼けて血も出ないのだろう。身体中が黒焦げのダラックはため息混じりに言った。
「オレ様の……負けだ……」
「? ……おじさん……?」
「おじさんじゃねぇ……ダラックだ。キアラ」
まるで憑き物が取れたような表情のダラックだった。実際、ダラックの心は清々しく晴れ晴れとしていた。負けた事もそうだが、全力でぶつかり合い、キアラの最大奥義、森羅万象を食らう事で理解したのだった。
「お前の技……まさか、死んだヤツらの力を使えるなんてな……反則だぜ……」
「違うよ? 死んだんじゃない……」
「?」
「キアラの中にみんな生きてるんだよ?」
「……」
ナーゴ族の忌み嫌われる理由の一つに、相手の力を手に入れるものがある。第三者からしたら殺して奪い取ったように見えたようだが、本来は違う。
互いが支えあって生きた証を受け継ぐために、信頼する相手に託す技であった。キアラの技に使われるオーラはその託された証だった。
ダラックは理解する。キアラの強さを、自分が負けた理由を。
「ハッ……そうかよ。奪う事でしか生きてこなかったオレ様には無理な話だな……」
キアラはそんなダラックに笑顔で答える。
「守りたかったんだよね?」
「……そうだな。奪われないように奪っていた、のかもな」
そう言ってダラックは仰向けになって倒れる。
「おじさんっ!?」
「ダラックだっつってんだろ? 大丈夫だよ、疲れただけだ」
それを聞いて安心してキアラも倒れる。
「まさか……親子揃って同じ相手に負けるとはな……」
ダラックがボソリと言うが、キアラは笑顔のまま気絶していた。
「へっ……気持ち良さそうにしやがって……」
そう言って穏やかな笑顔で目を瞑るダラック。初めて穏やかな心で笑ったダラックは不思議と心が洗われていく感じを噛み締めていた。
「へっへへっ! やりましたねお頭っ!」
「コイツにトドメをさせば終わりだぜっ!」
怯えて尻もちをついていた獣人とキアラに伸された獣人が意識を取り戻したようで、キアラにトドメを刺そうと近寄ってくる。
ダラックは水を差された気分になり、不快そうに声をあげる。
「……やめろ。手を出すんじゃねぇ。」
「何言ってんですかお頭っ!」
「そうですぜ! こんなチビ今すぐ殺しちまいやしょうぜ」
三下がっ……とダラックは怒りを露わにして命令する。
「やめろっつってんだろうが! お前達っ!」
大声を浴びせられ、ビクッとなる二人の獣人だったが、邪な心が彼らを暴走させる。
(こ、コケにしがって……でも、今のお頭なら……)
(クソがァ、オレ達だってなぁ……)
二人の獣人の心にドロッと濁った物が垂れ流され、目が鈍く光る。
「へへっ……今のアンタなら俺達でもやれちまうんじゃねェか? どうだい? 兄弟」
「! あぁ……いける。いけるぜこりゃあ!」
「お前らっ!」
ダラックは悟った。この目の輝き。これはあの男とそっくりだったからだ。
「アンタの命令なんてもう聞かねぇぜ!」
「そうだぜっ! ハッハーァ! んじゃ、まずはこのチビから……さっきの借りを返すぜぇぇえ!」
「やめろぉぉお!」
獣人の一人が武器をキアラへと振りかぶる。しかし、ダラックが咄嗟に動いてキアラを守る形でおぶさる。武器はダラックの背中に突き刺さる。
「ぐふっ……」
「ハッハー、こりゃあ傑作だぜ!」
「オラオラっ! そんなんじゃ守れないぜダンナぁ?」
これみよがしに調子に乗り始める獣人達。ダラックの背中を持っている武器で殴り、突き刺す。今まで美味しい蜜を啜ってきた小物感が半端ない。
既に身体は限界を迎えているダラック。しかし、目の前で気絶するキアラを殺させまいと必死に耐えていた。
「ぐふぅ、ぐはぁあ」
嬲られ続けるダラックだったが、突然大声を出して身体を持ち上げる!
「うああああっ!」
「な、何だ!」
「うっ!」
ガバッと上半身を起こした事で、何かされると身構える獣人達だったが、ダラックはそのまま右手でキアラの身体を掴み、思いっきり遠投したのだった。
「ぐるあああああっ!」
ドサッ、ドサ、ドサ……
かなり遠くへと投げ飛ばされたキアラは地面を数回バウンドして止まる。
「へ、へへっ……驚かせるんじゃねぇよ」
「無駄だぜ! アンタを殺してあのガキも殺してやるぜっ!」
「させねぇさ……」
「ああん?」
「頭がイカれたんじゃねぇのか?」
「あばよ……キアラ」
そう言ってダラックは右手を振り上げる。
「獣王拳 岩山の怒号」
ダラックが振り下ろした拳は地面に突き刺さる。そんなことをしても無駄だというように、獣人達はニヤニヤとしながらダラックにトドメの一撃を入れようと迫る。すると、ダラックがニヤリと笑った。
ゴゴゴゴ…………
「な、なんだこりゃ!」
「じ、地面が揺れ、ーーーーうわぁぁ!」
地面に亀裂が入り、奥からマグマが噴き出る。一人の獣人がそのまま亀裂の中へと呑み込まれる。
「く、クソがァ! がっ、ーーーーあぁぁあ!」
もう一人も、逃げようとして走ろうとするが、足元からマグマが噴き出し、その身を燃やす。
ダラックはバタリと仰向けに倒れる。マグマの噴き出す中、囲まれてしまったダラックはキアラの方へと視線を送る。キアラの方へはまだマグマは到達していない。
そしてその先にある洞窟からバタバタと足音が聞こえてくる。
「……生まれ変わったら。またお前と戦いてぇな……」
そう言ってダラックは目を閉じたのだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
ナーゴの強さの秘密はみんなのチカラなのでっす!
良かったら↓評価☆やイイネ↓ポチってね!
✧‧˚\\\\٩(*´▽`*)۶////✧‧˚




