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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第三章 魔の歴史
84/216

30 キアラ・ナーゴ

過去回想です

 キアラはとても笑顔の似合う女の子だった。笑うと見える犬歯のような歯がチャームポイントだ。天真爛漫な性格が彼女の魅力を最大限に引き出す。猫のような耳がある亜人で、活発で人懐っこい小さな女の子だった。


 キアラはナーゴ族という亜人の中でも戦闘に特化した亜人族の血を受け継いでいる。ナーゴというのは、その変わった拳法を武器に成り上がった戦闘部族で、身体能力や力は他の亜人族からは恐れられる程の戦闘に特化している。


 キアラの使っている『獣拳』はナーゴ独特の拳法の一つで、色んな色のオーラを纏う事で、様々な効果を得て戦う拳法だった。歴史の長い拳法である為、誰が発案者だとか、伝承者かは定かではないが、受け継がれる『血』の中で脈々とその拳法は磨かれていった。


 しかし、そんなナーゴ族を疎ましく思う連中は少なくない。特に縄張り争いでぶつかる亜人族や、近隣王国からすれば邪魔な存在であった。いつしかこういった連中が手を組む事となり、ナーゴ族は襲撃に合い、数の暴力の前に一人、また一人と数を減らすこととなる。


 ナーゴというだけで彼らは女、子供までも手にかけて、一族の血を根絶やしにしたのだった。しかし、そんな中でもキアラの母、ミアナ・ナーゴは産まれたばかりのキアラを抱えて、逃げ延びていた。


 父、バラゴ・ナーゴは一族でも優秀な男で、最後までナーゴ族包囲網の中で戦い、ミアナとキアラを逃がす時間を稼ぎ、そして倒れたのだった。


 ミアナは生まれた地を離れ、遠い人目のつかない場所でひっそりとキアラを育てた。女手一つで育てるには最悪な環境だった。人目につかないという事は、それだけ危険な場所であったからだ。


 生傷の癒えない中、必死に育てるミアナ。そんな母の愛を注がれながらキアラは育った。キアラが五歳になった頃、母ミアナは不注意で凶暴な動物に怪我を負わせられる。死を覚悟するミアナであったが、襲われる所をまだ幼いキアナによって救われる。


「ママを虐めないでっ!」

「キアラっ! だめよっ!」


 母ミアナの前に立ち、両手を広げて通せんぼするキアラに獰猛な動物は大人しくなり、去っていったのだった。何が起きたか分からないミアナ。実はこの時、既にキアラは動物の言葉を理解し、木々の声を聴けるようになっていた。


 自然と動物の友達が出来るキアラ。母ミアナはそんなキアラを誇りに思い、亡き父バラゴに見せたかったと涙していた。


 父バラゴの才能はしっかりとキアラにも受け継がれていた。友達になった動物達から色んなことを教わる。身体の使い方や餌の見極め方など、自然そのモノがキアラの父であった。


 そんなキアラが八歳を迎えた頃に、母ミアナは他界する。病気であった。流石に病気を治す方法を動物達は知らないし、自然の力に頼ってもダメであった。


 キアラは色んな薬草を試したし、色んな栄養のある食べ物を用意した。時には危ない場所に咲いている花を、危険と隣り合わせでも取りに行った。しかし、ミアナの体調は良くならなかった。


「ママっ!」


 泣きそうなキアラの声に、ミアナが重い瞼をうっすらと開く。弱々しい手でキアラを撫でるミアナ。最後にミアナはキアラへ笑顔を見せる。


「大丈夫……笑顔で、いれば……大丈夫だから……ね?」

「ママっ! ママっ!」


 ミアナとキアラの周りには多くの動物達が集まっていた。ミアナの最期を祝福するために。


「キアラ……笑って……そしたら、ママも……大丈夫だから……」

「うんっ! うんっ! え、笑顔、笑顔だよ! ママっ! 見てキアラの笑顔」

「ホントだ……キアラ……の、えが、お……好きよ……あい、して……る。……」

「ママーーーーーーっ」


 それがミアナの最後の言葉であった。


 母ミアナの死の原因はナーゴ族襲撃時に使用された禁断の毒物によるものだった。これは直接戦えば勝てないと踏んだ連中の苦肉の策であり、これによりナーゴ族はかなりの弱体化を余儀なくされた。


 母ミアナはこの時、キアラに吸わせないように口を塞ぎながら逃げたため、自らは微量ながらに吸ってしまっていたのだった。


 禁断の毒物は少量であっても身体の中に留まり、蝕んでいく凶悪なものだった。キアラを連れて逃げたあの日から、ミアナはこの地獄のような痛みと戦い続けてきたのだった。


 最期は安らかに、そしてキアラの幸せを願い、旅立ったのだ。多くの動物、いや友人達に囲まれながら。彼女のこれまでの道のりは辛く悲しみの連続であったが、キアラと過ごした日々は彼女にとっての最高の宝物であった。



 それから六年の歳月が流れるーーーー。



 立派に成長したキアラは共に過ごした動物達に旅に出る別れを告げていた。それは亡き母ミアナが外の世界の話をしていたからだ。幼いキアラはこの場所しか知らない。そのため、いつも寝る前に話してくれるミアナの話に目をキラキラと輝かせて聞いていた。



 いつか外の世界に旅たとうーーーー。



 そう思っていた。


「ママ……行ってくるね」


 母の墓前で手を合わせ、挨拶するキアラ。旅に出るにはとてもいい天気だった。その旅路を祝福しているようでもある。


 その後、一年かけてリヴィア達と出会うことになるのだが、魔王を倒すために過去に行くなんて想像もつかなかっただろう。しかし、キアラはどんな困難があっても笑顔でいるだろう。


 それが、母ミアナとの最後の約束だったのだからーーーー。



 ______________________



「どいてって……言ったのっ!」

「! ひ、ひぎっ!」


 首元に当てられた槍を手の力だけでへし折る。獣人は変な悲鳴をあげ、キアラを見やると、その表情は怒りに塗れて瞳が煌々と黄色く輝いていた。


 ドサリ……


 あまりの覇気に獣人は尻もちをつく。こんな小さな身体でなんというオーラを纏っているのだろうと。キアラの身体からはうっすらと黄色いオーラが溢れている。


「なんだお前っ! 何をしたぁ!」


 別の獣人がキアラの横から飛びかかるが、キアラは見ることもせずに応戦する。


「邪魔だよっ!」

「ぶぺっ!」


 上半身を反らして攻撃を躱して、飛びかかった勢いで通り過ぎる獣人の腹部に膝蹴りをぶち込む。そのまま白目を向いて倒れ込む獣人。


「…………!」


 尻もちをついていた獣人は、仲間の姿に息を呑む。そして、キアラが歩き始めると「ヒィ……!」と息をする事を思い出し、何も出来ずにキアラを見送る。



「ほぉ? どうやら、まだ楽しめそうだなぁ」



 ダラックがギロリとキアラに獰猛な眼を向ける。しかし、キアラはそんな事では止まらない。何故なら……。




「私は今、本気で……怒ってるんだよっ!」





最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

笑顔を忘れるな。


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