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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第三章 魔の歴史
78/216

24 矛盾

「……俺が治した」


 洞窟の奥から現れた人物に全員が驚く。


「! レッド!」


 黒いローブに身を包んだレッドが現れたのだった。リヴィアはすぐに駆け寄ってレッドの無事を確かめるが、それよりも何よりもこのどうしようもない気持ちをぶつける。


「アンタ! いつもいつもどこに行ってるのよっ!」

「………………」

「アンタがいない間、大変だったんだからっ!」

「…………ああ」


 いつもなら無言であるレッドが珍しく返事をした。驚くリヴィアであったが、急に大声を上げたら色んな感情がごちゃ混ぜになって襲ってくる。


「! 大体、遅いのよ! どうせならミロも……ダールも……ヤンナやムンガジも……助けてよ……」

「…………ああ」


 段々喋りながら涙が溢れるリヴィア。鼻声でレッドに訴える。レッドに言ってるのは八つ当たりだというのは分かっている。だが、レッドがあの場に居たならと思うと悔しくて堪らないのだ。


「どうして……どうしてよ……? 私じゃ誰も救えないっ! 誰も……救えないのよ……」

「…………違うな」

「? ……何が、違うのよ」


 レッドがハッキリと答える。


「……お前が救うのは未来だ」

「! だからって! だからって目の前の人を犠牲には出来ないっ!」


 そう言ってリヴィアはレッドを睨みつける。しかし、レッドの表情は変わらない。その真っ赤な瞳はリヴィアの翡翠の瞳をしっかりと捉える。


 ニコレットがゆっくりとやって来てリヴィアの頭を抱きしめる。リヴィアは溢れる涙でニコレットの胸元を濡らすのだった。


 リヴィアの頭を撫でながら、ニコレットは冷静に質問をする。


「私達が気を失っていた間の事を教えてちょうだい」

「……分かっている」


 レッドの話ではちょうど、強力な波動を探知してここに向かって来たようで、既にダールとミロはいなかったそうだ。そして、火口内で虫の息だったジハードを治療し、リヴィアが無事である事を確認したという事だった。


「その前はどこに居たの?」

「………………」

「……そっ。まぁいいわ」


 答える気がないと判断したのか、ニコレットは話題を変える。


「この先は何があるの?」

「上に通じる通路がある」

「……わかったわ」


 どうやら上に通じる道をレッドが確保していたようだった。脱出できると分かれば、早速外へ出てダール達を助けに行動を移す。


「リヴィア……行きましょ? 助けに……ね?」

「……うん。行くっ!」


 優しく問いかけるニコレットに感謝しながら、涙を拭いて表情を引き締めるリヴィア。


「俺も行かせて貰うぜェ? やることがあるんでな……」

「オ供しましょう!」


 ヴァルも緑の生体兵器もやる気のようだ。しかし、キアラは違うようだった。


「……」


 グルルル


 ジハードの傍を離れたくないと言うように悲しげな表情でジハードを見つめている。リヴィア達もキアラの気持ちに応える。


「キアラちゃんはジハードちゃんの側にいて! 私達がキアラちゃんの分も暴れてくるからっ!」

「いいの……?」

「うん! ジハードちゃんをよろしくね!」

「うんっ! 分かった!」


 笑顔で手を振るキアラ。リヴィア達はそんなキアラ達を後に、洞窟へと進んでいくのだった。


 洞窟を抜ける頃には、雨は止み外は大分暗くなっていた。


「チッ……先ずは野宿とするかァ」


 そう言ってヴァルが野宿の準備をする。リヴィア達も各々焚き火用の木を拾ったり、近くの警戒にあたっていた。気付いたらレッドはいないが、ふらっと現れては食べ物になる実や果物を取ってくる。


 食べ物になんか釣られるもんかっとリヴィアはレッドに対してツンっとしていたが、結局陥落する。誰よりも多く食べていた。



 ______________________




 次の日。


 レッドはダールが向かったという方角へ案内をしてくれた。どうやら一際目立っていた大きな山へと向かったのだと言う。


「いい目印ね、アレなら何処からでも見えるから迷子にならないわね」


 そんな事を言いながら進んでいたリヴィア達。湖からは大分離れた所で、レッドが急に立ち止まる。次にヴァルが立ち止まった。リヴィアが「どうしたの?」と聞くと、ヴァルがシーッという合図で振り向く。リヴィアとニコレットは黙って頷く。


 周囲は相変わらず密林で覆われ、視界が悪い。そんな場所で立ち止まるレッドとヴァルはかなり気を張っているようだった。リヴィアやニコレットには分からない何かが起きているのだろうが、リヴィアは我慢出来ずヴァルに声を掛けようと一歩踏み出した。



 するとーーーー。


 ギシャァァァァァァアッ!


「キャァァァァアアっ!」


 リヴィアのすぐ側の茂みから巨大な蛇の様なものがリヴィアを襲う。すぐに反応するレッドとヴァルだったが、既にリヴィアはグルグルとその長く、鱗のギッシリと生えた大蛇に絡め取られていた。


「くぅぅう、な、何なのよーーっ!」

「チッ……仕方のない嬢ちゃんだぜェ!」


 ヴァルが銃を大蛇に向けて構えるが、ヴァルの後ろに急に殺気が現れる。その殺気に即座に反応するヴァルだったが、シュッと鋭い音と共に首元に刃を突きつけられる。


「動くんじゃねぇ」

「チッ……」


 更に見るとニコレットも獣人に捕まっており、緑の生体兵器は四人ぐらいに囲まれていた。

 レッドは状況の悪さに動くことが出来ないでいた。


 すると、どこからともなく足音が聞こえてくる。



 ズシッ……ズシッ……



 重たい身体を地面が支える様な音。リヴィアは目だけを動かしてそっちを見ると獣人ではなく、リヴィア達と同じような人間が現れる。


 しかし、その身体はかなり大きく、二メートルを越える大男であった。更にその身体は筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)(たくま)しく、まさに野生の生み出した人間ゴリラであった。


「ほぉ? 珍しい客人じゃねぇか」


 その大男はリヴィア達を見回して、舌をペロリとしていた。その顔はゴツく、黒髪短髪の黒目で赤褐色系筋肉ゴリラであった。


「な、何なのよっ! アンタはっ!」


 大蛇に身体を締めつけられながらも、リヴィアが叫ぶ。ニコレットもヴァルも手を上げた状態で顔だけその大男へと向けている。緑の生体兵器は白く太く、そして伸縮性のある糸で絡め取られていた。


「ほう? ねェちゃん、随分と威勢がイイじゃねぇか。気に入ったぜ」


 下卑な視線でリヴィアを眺める大男。しかし、レッドを目にすると表情を変える。


「ほお? その殺気……てめぇ、只者じゃねぇな?」

「………………」


 実際、レッドにだけは誰も近寄らなかった。いや、近寄れなかったのだ。その溢れんばかりの殺気に身体が動かない手下達。


「オレ様の手下達が手も足も出ない……か。面白いっ! てめぇ、オレ様と勝負しやがれぇ!」

「………………」


 そう言って大男はレッドに襲いかかった。その極太の腕は掴まれたら引きちぎられてしまうと思わされる。レッドは後方に飛び退き、大男の掴み攻撃を避ける。


「まだまだァ!!」


 右、左、右っとレッドを追い回すように腕を振りまくる大男。大木を間違えて掴むが、掴んだ場所が物凄い音と共に砕ける。まさに暴走機関車。


「オラオラオラオラオラっ!」


 何処かの高速早口オラオラ連打とは違い、ちゃんとリズミカルなオラオラをする大男。決して超早いパンチの雨ではないっ!


「………………」


 レッドは黙って大男見つめ、全ての攻撃を紙一重で躱す。まるで相手の攻撃を誘い、いつ当たってもおかしくないように、わざと動いている様にも見える。


 大男も「ちっ……ちょこまかと……」と呟いている。あと少しで当たるはずだと、その脳みそ筋肉ダルマが更なる追撃を見せていた。


(おかしい……)


 リヴィアは思った。この程度の相手なら、レッドは一撃で倒せるはずだ。なにを悠長に遊んでいるのだと。そして、気付いた。


(まさか……魔法が使えない?)


 ニコレットが言っていた通り、ここでは魔法が使えない。なので、レッドは単純に力と力で戦うしかないのだ。


(でも……待って……それなら……どうやって……)


 リヴィアの中で矛盾が広がる。


(どうやって、ジハードちゃんを治療したの?)


 リヴィアはてっきり、ハーズェンド戦で見せた回復魔法を使用したのだと思い込んでいた。思考を集中するリヴィア。


 しかし。


「ダァーハッハッハッ! どうだオレ様の力はっ!」

「! レッド!?」


 リヴィアが思考に集中するあまり、レッドが大男の攻撃を食らって吹き飛ばされているのを見ていなかった。


「レッドぉ! レッドぉお!」

「ダァーハッハッハ! よォし、満足したしコイツらを連れていけぇ!」

「「「あいあいさー」」」


 リヴィア達はどこかの世紀末な手下達の指示で連れられて行くのであった。レッドが吹き飛ばされた先は谷底だったらしく、どうなったかも分からなかった。


 必死に叫ぶリヴィアだが、大男が笑いながらに言う。


「残念だったなぁ。オレ様にかかればこんなもんなんだよっ!」

「くっ! アンタなんか私がっ! は、離しなさいよっ! コイツゥゥウ!」


 大蛇にグルグル巻にされて動けないリヴィア。その威勢に大男は満足そうな表情で笑いながら歩いていくのだった。





(くぅっ、レッド……)





最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

よくわからない急展開で申し訳ない。しかし、どうか続けて読んで頂きたいです。


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