16 最悪のシナリオ
派手に膨らんだ頬を撫でる人物がいる。その人物はジンジンする痛みと、何故か前後の記憶が飛んでいるという状態にあった。
ダールである。
ダールは一人悲しく涙を浮かべているが、誰も目を合わせてくれない。
ーーーー孤独。それが今のダールにはピッタリな言葉であった。
「……あ、あの」
「……………」
一番不機嫌そうなミロに声を掛けるが、シカトされてしまう。ダールは「俺、一体何をやらかしたんだ?」と頭をねじるのであった。
ダールの悲劇の原因を作った張本人は、全く気にしてない様子でキアラ達を探していた。その様子にダール以外の男性陣が身震いしている。
「ここにも居ないかぁ〜……、キアラー! キアラー?」
「まだ、湖の方にいるのかしらね」
「う〜ん、でもあっちはレッドの縄張りなんでしょ? どうしようね」
リヴィアとニコレットは悩む。キアラを探しに湖へ行きたいが、ミロ達を危険な目に遭わせたくないという想いがせめぎ合っていた。
するとーーーー。
ドゴオオオオン
轟音と共に、地面が軽く揺れる。
「なっ、なに!?」
「こりゃ一体?」
「! 見てっ!」
同様するリヴィア達。ミロが何かを見つけたかのように指をさす。そこにはモクモクと黒い煙が立ち上っているのが見えた。
「あ、あれはっ!」
「不味いぞ! あの方角はガーゴ村の方じゃねぇかっ!」
「何っ!? っく! 行くぞ!」
ダールが一目散に駆け出す。ミロとヤンナが制止しようとするが、間に合わない。
「ま、待ちなさいっ!」
「あっ、おいっ! ったく、追いかけるぞ!」
「うん!」
「行きましょう」
急いで追いかけるリヴィア達。しかし、ダールの身のこなしは相当なもので、リヴィア達では追いつけなかった。
「不味いな、今は俺達がここに居るから、村の連中が心配だ」
ヤンナが苦虫を噛み潰したような表現で告げる。そもそもガーゴ村の住民達は大人しい為、戦闘には不向きな性格をしていた。
「急ぐ。走る」
珍しくムンガジも焦っているのが表情に出ていた。
ドゴォン
さっきよりは小さいが、また爆発音のようなものが聞こえる。それに合わせて小さな黒い煙が上がる。
「な、何だってんだ! まさかレッドが村を襲っているのか!?」
焦るヤンナ。しかし、ミロは冷静に判断していた。
(レッドじゃない……でも、何? この胸のざわつきは……)
リヴィア達も密林で動きずらい中、懸命に駆けて行く。更に連続して爆発音が続く。
ドン、ドドン
地面が揺れるのを感じる。その揺れにニコレットがある事に気付く。
「この揺れ……。もしかして、地震……?」
周りの木々もゆらゆら揺れており、爆発の衝撃にしては異常であると判断する。
グオオオオオッ
「! あれはっ!」
その咆哮は空を飛ぶレッドであった。
ヤンナ達の表情が青ざめていく。
「クッソォォォ!」
ヤンナとムンガジは更にスピードを上げる。流石についていけないリヴィア達。しかし、ヴァルだけは二人の後を追いかけて行ったのだった。
ミロは震える声で「そんな……」とレッドを見上げている。リヴィアもニコレットも立ち止まるミロに駆けていき、息を整えつつ話す。
「ハァ、ハァ、ミロッ! 大丈夫っ!?」
「ハァ、ハァ、ミロさんっ!?」
「どうしよう……私、私……」
気が動転さているようだった。レッドの訳が無いと思っている反面、目の前には空を飛ぶレッドと黒い煙が何本も上がっている。
「ミロッ! しっかりしてっ!」
「! リヴィア……」
ミロの肩を掴み、目を覚まさせるリヴィア。ミロにとっての最悪の状況。しかし、リヴィアも今まで多くの絶望を味わってきたのだ。痛いほど分かる。分かるからこそ行動するのだ。
「諦めないでっ! まだ間に合うっ!」
「でも、私……」
大粒の涙を溜める赤い瞳。その瞳に映る絶望の色をリヴィアは知っている。何度も目にしてきたのだから。
「……レッドじゃない! そうでしょ?」
「リヴィア……」
優しくだが、しっかりとミロへ訴えかけるリヴィア。
「そうよ、この揺れは尋常じゃない。もしかしたら別の原因があるのかもしれない」
「ニコレットさん……」
ニコレットも優しく微笑むように、ミロの頭を撫でながら言い聞かせる。
ミロは一度下を向いた後、大きく頷き、空を見上げる。
「分かったわ! 行きましょう!」
三人は顔を合わせて頷き、そしてガーゴ村へと再び走り出したのだった。
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村に一番先に到着したのはダールだった。
目に映るのは燃え広がる炎の海。その光景を目の当たりにして、ダールの頭に最悪の状況が思い浮かぶ。
すぐ近くの木が倒れて来るのを間一髪避けるダール。道を塞がれるように倒れた木が火を纏っており、村の中へ進めない。
するとーーーー
グオオオオオッ
「……お前か。お前が俺たちの村をっ!」
聞き慣れた咆哮。それは幼い頃に決意した時と同じ咆哮。憎き赤竜の咆哮であった。
ダールは心が黒に染まっていくのを感じる。育ての親を殺され、更には愛する村を焼かれ、憎しみが頂点に達する。
「殺すっ! お前が奪ったもの、全て俺が奪い返すっ!」
そう言ってダールは密林へと消えていったのだった。
ダールがいなくなってしばらくするとヤンナ達三人が駆けつけた。
「くっ……こりゃひでぇ……」
「…………」
燃え盛る炎が大きすぎて近付くことが出来ない。
「くそがぁぁあっ」
ヤンナが近くの木を思い切り殴る。その拳に込めたどうしようもない怒りが、ムンガジとヴァルにも伝わってくる。
しかし、ここは冷静にムンガジが言葉を発する。
「ダール、どこ?」
「「!」」
ハッとしたようにヤンナが周りを見渡す。ヴァルも同様に探すが見当たらない。
「まさかアイツ……」
ヤンナが最悪の事態を想定する。
「……かもしれねェなァ」
ヴァルも同じ考えにたどり着いたのだろう。ハットを深めに被り、小さく舌打ちをする。
「こうしちゃいられねぇ! 追いかけるぞ!」
「あァ、あんのバカヤロウを止めに行くぞッ!」
こうしてヴァル達もダールが向かったであろう場所へと急いで向かうのであった。
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次回急展開するシリアスモード突入です。
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