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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第三章 魔の歴史
59/216

5 イェモン(仮)

「ど、どういうことなのっ?」


 突然の緑のロボットに死刑宣告を受けるリヴィア達。


「ハイ、簡単に説明すると、皆さんの吸っている空気が身体に合っていないと思います」


 空気? っと三人は顔を見合わせる。


「詳シク説明するなら、空気中に含まれている二酸化炭素の濃度が高いのが問題です。大体屋外での二酸化炭素濃度は400ppm程度なのに対して、ここでは1700ppmほどありますので常に不快な気分だったり、吐き気や頭痛などがあるかと思います。これ程二酸化炭素濃度が高いと、常人であっても長時間の活動は困難となり、二酸化炭素中毒で意識障害を起こして死に至るデショウ」


 緑のロボットが淡々と説明するが何となく、その理由は分かる。何故なら先程からイライラしているヴァルも、他の二人も気分があまり良くないからだ。


「なるほど、情況が(かんば)しくないことは分かったわ」

「ど、どうしたら……?」


 ニコレットが目を瞑り考える。リヴィアはこういう場合の対処法など知る由もないので困ってしまう。


「おい、なんでこんな密林の真っ只中だってのに、二酸化炭素がそんなに濃いんだァ?」


 ヴァルがウンザリするように聞いてくる。


「ソレはオゾン層と太陽光のせいでしょう。オゾン層が薄いため、太陽の光が普段我々が浴びているものよりも紫外線が強いのですよ。すると植物にも影響が出て、酸素の供給が間に合わない。サラに太陽の位置からして、昼夜が早く回っているのデショウ」


 確かにさっきよりも全然太陽の位置が違う。さらに太陽の当たっていた皮膚がヒリヒリする。


「ちょ、つまり太陽の光も浴び続けると危ないってことっ!?」

「ソウいうことデス」


 リヴィアがそういう事は早く言いなさいよっ! っと緑のロボットに鉄拳を食らわせる。うごごごごっ……っと近くの木にめり込むロボット。


「うう……最悪よ、陽の光も空気も身体に合わないなんて……」


 頭を抱えてしゃがみこむリヴィアだったが、そこへ陽気な鼻歌と共にキアラが帰ってくる。


「あっ! お姉ちゃ〜ん!」

「キアラちゃん? どうしたの?」


 キアラは両手に抱えるほどの果物と、大きな葉っぱを人数分持ってくる。


「これ、ぜ〜んぶ食べられるから食べて〜!」


 そう言ってキアラは笑顔でみんなに果物を配っていく。おや? 気に何かめり込んでるけど……まぁいいだろう。

 キアラの笑顔に何だかみんなの空気が柔らかくなった。全員で渡された果物を食べてみると……。


「「「!!! スッパィィイッ!」」」


 全員が目をまともに開けられないほどスッぱい。身体中が電気が流れるような感覚で、思わず身体が強張(こわば)る。


「ゲホッゲホッ……き、キアラちゃんコレ、物凄くスッパいんだけど!」


 キアラから渡された果物は外は緑だが、中は真っ黄色の果実がギッシリと詰まっていた。今までで一番のスッパい果物をキアラは笑顔でくぅ〜きっくぅ! っといった表情でかじっている。まるで金曜日の夜に見かけるサラリーマン達のような感じだ。


「これネ? 皮をこうやって……こう……ホラッ! 取れたよ〜!」


 キアラが急に皮を剥がして渡してくる。


「? コレをどうするの?」


 受け取るリヴィア。満面の笑顔でキアラがぴょんぴょんしている。


「お肌に塗り塗りするんだよぉ〜。そうしたら、ヒリヒリも太陽のも怖くないんだよぉ!」


 つまり、日焼け止めみたいなものかと、試しに塗ってみる。


「〜〜〜〜ッ!!!!!」


 めちゃめちゃピリピリして、お肌が焼けそうな感覚に襲われるリヴィア。足をその場でじたばたさせている。ニコレットもヴァルもその様子に一歩引く。しかし、急にピタリとリヴィアが止まり、叫ぶ。


「キタァァァァォア!」


 まるで身体から力が湧き上がるかのようにリヴィアがポーズを取る。何故か木にめり込むロボットがその姿に感動して、めり込んだまま拍手している。


「ニコ姉! それとヴァル! コレ塗ってみて!」


 ずずいっとリヴィアが二人に皮を手渡す。勢いに負けて受け取る二人は顔を見合わせるが、リヴィアの自信満々な表情に仕方ないとばかりに塗ってみる。


「「〜〜〜〜!!!」」


 リヴィア同様声にならない声を上げつつ、ニコレットは上品に、ヴァルは下品にじたばたした後、ピタリと止まる。そして二人一斉に叫ぶ。


「「キタァァァァォアッ!!」」


 みなぎる力が叫びとなって天へと駆け上がる。塗ったそばから皮膚があわ立ち、ビリビリと身体を電気がまたもや駆け巡る。しかし、その後にやってくる爽快感が堪らない。今の二人にはこの場所が何処であろうと関係ないっ。何故ならっ……翼を受け取ったのだから……。


 ……といっても、実際に翼が貰えた訳ではなく、身体に塗った謎の果物の皮は、身体中の免疫を活性化させていた。さらに身体の内側からも豊富な栄養と共に、気分の悪さを吹き飛ばしている。


 緑のメリ込みウッド曰く、この果物はこの過酷な環境に合わせて進化を遂げたもので、厚い皮が紫外線をカットし、内側に高濃度のビタミンを生成。さらに皮と実の間に、紫外線をカットする特殊な免疫繊維が含まれており、塗ることで紫外線から身を守ることも可能らしい。


 そして実の中には二酸化炭素を分解する酵素が含まれているため、定期的に摂取する事で中毒にはならなくて済む他、免疫力を格段に上げてくれる効果もあると分析する。


「す、凄い! 凄いよコレっ!」

「肌が……活き活きしてるわっ!」

「こいつァ堪らねェ……」


 三人が肌や身体を確かめながら感動している。すると、今度は人数分持ってきた葉っぱをキアラが渡していく。


「? これは?」

「ふふん、この葉っぱの茎から思いっきり吸ってみて!」


 ニコニコとキアラは自信満々にそう指示する。果物の件もあるし、試してみるかと顔よりも大きな葉っぱの茎から息を吸ってみる。茎は空洞になっていてストローのようになっていた。


「! 空気が、美味しい……」


 目を丸くして葉っぱを見つめるリヴィア。その様子を見て他の二人も試してみると、リヴィアと全く同じリアクションをしている。


 ここでも同じく緑のボロットがスキャンして解析。どうやら葉っぱの葉脈全てが空洞になっていて、葉の先から空気を取り込んで、不純物や二酸化炭素を吸収しながら最終的にちょうど良い空気を送り込むことが出来るらしい。


「凄いよキアラちゃん! これならこの環境でも何とかなるわね!」

「えっへへ〜、自然とはお友達だからね!」


 頭の後ろで手を組んで嬉しそうにしているキアラ。


「この果物は他にはないのかィ? あるだけあった方が良さそうだが」

「んんー? たっくさんあるよ! こっちこっちぃ〜」

「あ、待ってキアラちゃーん!」


 颯爽(さっそう)と走っていくキアラ、リヴィア達は急いで追い掛けて行く。密林の中は思った以上に暗く、触れる葉っぱは硬いし、木の幹は太いしで視界が悪い。


 何とか追いかけるリヴィア達は、ようやく少し陽の光が零れる場所へと出る。キアラが笑顔でココだよここ〜っとぴょんぴょんしている。


 そして、そこには一面に緑の果物を実らす木が立っていた。


 がーーーー。


 どうやら先客が居たらしい。



 大勢…………。



 ギチギチ…………ワシャワシャ…………。



「「「………………!!」」」


 リヴィアとニコレットとヴァルは苦笑いをする。同じ緑の角張ったロボットが興味深そうにデータを収集している。


 数えるのも面倒な数の昆虫がいた。もちろん先程のイモクワガタ(仮)だ。リヴィア達は身体中を大量の虫が走り抜けているような感覚に襲われ、回れ右して来た道を戻っていく。


「え、あれ、どうしたのお姉ちゃん達?」

「無理よ! あんなの絶対に無理!」

「ケモ耳の嬢ちゃん、悪いが俺達は取りに行けそうにねェわ」

「……! ……!」


 あれー? っとキアラは不思議そうに見ているが、常に冷静なニコレットでさえも、リヴィアとヴァルの意見に無言で頷いている。


「んんー、仕方ないなぁ……じゃあちょっと行ってくるねっ!」


 まるでコンビニに行くような気軽さでキアラが駆け出す。リヴィア達は木の陰から見守る。


「ちょっとゴメンねぇ!」


 キアラがジャンプして、イモクワガタ(仮)の頭を踏み台にして跳ぶ。さらに身体や尻尾らしき部分も踏み台にしつつ、木の上へと登って行き、見えなくなる。暫くすると木の上からポイポイポイ……っと緑のフルーツ・イェモン(仮)を落としてくる。


「流石キアラちゃん!」

「よゥし、今のうちだっ!」


 リヴィアとヴァルで落ちたイェモン(仮)を回収し、ニコレットが受け取って貯め込む。そうして大量のイェモン(仮)を回収出来たリヴィア達は、既に日が落ちていた事に気付く。密林の中はそもそも暗いのと、日が落ちるのがやけに早いのが相まってしまう。


「やべェな。さっさと移動して、身を落ち着ける場所を探さねェとな……」

「あ、あれ? 一人いない気がするけど……」


 リヴィアが珍しく気付く。


「コチラですよぉ、皆さーん!」

「ああっ!」

「あっ! 変なポーズの人ぉ!」


 声のする方を見ると、ちょっと小高い崖の上に緑の変なポーズの人がライトを付けて手を振っている。

 集めたイェモン(仮)を皆で崖下へと運ぶ。すると、上からワイヤーを垂らして来たので、身体に結び上へと持ち上げてもらう。全員が崖の上へと運んでもらうと、そこはただの一枚岩の上であった事が分かる。


「凄いわね、こんな大岩があるなんて」

「そうね、それにこんな景色見たことないわ」


 辺りを見渡してみると、遠くの水平線に沈んでいく夕日が見える。密林はどこまでも続いており、遠くの方に一際大きな山が見える。


 それにリヴィア達のいる大岩は大小様々であるが至る所にあり、変わった風景となっていた。


「まァ、森ん中で寝るよりはマシだろうォよ」

「枯れ枝持ってきたから、これで焚き火も出来るよぉ〜」


 ヴァルがごろっと横になり、キアラがせっせと枝をキレイに並べている。キアラのサバイバル能力に脱帽するリヴィア。リヴィアはキアラが並べた枝に、火の魔法を使って焚き火をする。


「ひとまず、日が昇るまではここで休みましょ」

「私ノ計算では、約九時間後に日の出が見れると思います」


 つまり約19~20時間で一周する計算だった。


「随分早いのね」

「んー? 早いの?」


 リヴィアが不思議そうに聞くが、ニコレットはあまり気にせずそうよ? と答えて横になる。


「私は皆さんほど睡眠は必要ではないので、見張りはお任せ下サイ」


 緑の置物がたまには役に立つと感心しながらリヴィアも横になる。岩の上ではあるが、若干短めの草が生えているのでそこまで硬くない。



(明日は神器の居場所が掴めればいいのだけど……)



 リヴィアは手がかりを見つけられるように願いながら眠りにつくのであった。夜空に輝く星々がリヴィア達を優しく見守っていた。



最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

お肌も身体もイェエエエイな果実!それがイェモン!


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✧‧˚\\\\‎٩(*´▽`*)۶////✧‧˚

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