2 夢夢 Ⅱ
「……なんか、スッキリしちゃったな」
「なのっ」
リヴィアは今まででにないほど晴れ晴れとした表情をしていた。二十歳の女の子には重すぎる現実が、リヴィアをずっと締め付けていたが、ルゥと一緒に泣いて身体中の嫌な気持ちを全て吐き出す事が出来た。
「あんなに悩んでた事がバカみたいに思えてくるわ」
「なのっ」
リヴィアは座ったまま、真っ白な空間を見つめる。ルゥは立ったまま、リヴィアの右側で同じように空間を見つめている。腰にはリヴィアの右手が優しく回してあり、二人は仲良くくっついていた。
「私……必ずやり遂げてみせる。ラリィや他のみんなの為にも……」
「なーのっ!」
リヴィアが笑顔でルゥを見る。ルゥも嬉しくなって笑顔で返事する。
「そういえば、ここって何なの? ルゥちゃんはこの珠をどうやって手に入れたの?」
「夢の中なのっ、その珠は届けてくれたなの」
(届けた……?)
そーいえば前に聞いた時も夢の中って言ってたけど、とリヴィアは思案する。感触もあるし、意識もハッキリしている。身体は自由に動かせるしで、全く不思議な場所であった。
「一体誰が?」
「秘密なの。 今はまだ教えること出来ないなの」
ルゥが小さな指をクロスさせてバッテンを作ると口元でダメダメーっとジェスチャーする。ルゥの事だからうっかりで喋ってしまいそうだなっとリヴィアは思う。
「そういえば、前に私を待ってたって言ってたけど、どういう事なの? それにルゥちゃんは何者なの?」
すると、ルゥがよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに腰に手を当て、胸を精一杯張って自分を大きく見せつつも首を伸ばそうと顎まで上に持ち上げる。
「あちしはお姉ちゃんのー……って、これもダメだった!」
(惜しいっ!!)
両手であわあわと口を塞ぐルゥ。リヴィアは心の中で舌打ちをする。
「あっ! でもこれなら大丈夫っ! あちしはお姉ちゃんと一緒に魔王を倒しに行くお手伝いさんなのっ!」
確かに前回は仲間を集めてって言ってたけど、まだ仲間と呼べるような間柄でもない人達がいるなぁと思うリヴィア。
「前に言ってたけど、仲間って誰のことなの?」
「んきゅ?」
口に指を当てて不思議そうにしているルゥ。
「今、過去へ向かっている人達全員がそうなの?」
「んー! んー!」
身体全体を使って頷くルゥ。
リヴィアはあの変な鎧と、やる気のなさそうなヴァルも仲間なのかと肩を落とす。
「そ、それで魔王倒すって言ってもどうしたら倒せるの?」
「んー? エーちゃん何も教えてなかったのなの?」
「エーちゃん?」
(エーちゃん……? んー、誰のことだろう?)
頭を捻って考えるリヴィア。
(んー、最近出逢った人の中に……あっ!)
「ルゥちゃん、エーちゃんってエレノアさんのこと?」
「んー! んー!」
正解正解〜っと、ぴょんぴょんと両手を上にあげて跳ねながら頷く。
「確か魔王の力の源って言ってたけど、一体なんの事なの?」
「んー?」
リヴィアが尋ねるが、ルゥはまた指を加えて不思議そうに見つめてくる。
(こ、このパターンは知ってるはずって事ね!)
少しだけルゥの事を理解したリヴィア。またまたリヴィアは頭の中を走り回る。
(魔王、魔王、魔王、魔王、倒す、魔王……)
そして思い当たった。
(……まさかっ)
ガバッとルゥの両肩を掴むリヴィア。
「魔王の身体の一部と呼ばれる化け物の事っ!?」
「あぅあぅ!」
肩を掴む手に力が入り、前、後ろにと揺らす。そしてルゥの首もそれに合わせてカックンカックンしている。流石にやっちゃったっ! っと離すリヴィア。
「ご、ゴメンねルゥちゃん! 痛かったよねっ!」
必死に謝るリヴィアだが、ルゥは特に気にもせず説明してくれる。
「大丈〜夫! んとね、魔王の身体の一部って言っても、封印されてるから、それを見つけて破壊するだけなのっ!」
「ふう……いん……? あっ!」
なるほど、封印されている魔王のパーツを見つけてデストロイすれば、ミッションコンプリートって事なのか! つまり、クラーゲンではホントにやっちまったな私っ!
と言うような考えに至ったリヴィア。
(あわわ……でも、アレと同じようなモノを壊していけばいいって事ねっ! ようしっ!)
「分かったわ、ルゥちゃん。私が全部破壊してくるっ!」
「なのっ! お姉ちゃんなら出来るよっ! ぜーったい!」
ルゥが嬉しそうにリヴィアの周りを走り回る。そんなルゥの姿を見てリヴィアも嬉しくなる。ルゥの無邪気な振る舞いはキアラとは違ったピュアさがあって、見ているだけで微笑ましい気持ちになる。
「封印さえ解かなければ、あんな骨董品のペンダントなんてちょちょいのチョイよ!」
「頑張るなのーっ!」
小さな拳を振り上げ、ジャンプするルゥ。すると、急に何かを思い出したかのように声を上げる。
「そ、そうだっ! お姉ちゃん過去の世界ってどんな場所か分かるなの?」
「? そういえば、過去ってどれくらい過去に戻るか聞いてなかったなぁ……」
わァァァどうしよぉぉう! という風に慌てふためくルゥ。
「? そんなに慌ててどうしたの? ルゥちゃん」
「大変大変っ! もうすぐ目を覚ましちゃうから、目を覚ましたらすぐに隠れてなのっ!」
その慌てぶりは中々真似出来ないコミカルな動きである。人間慌てると何をしでかすか分からない。
「隠れる? 何か不味いことでもあるの?」
「い、いいなの、説明する時間……がーーーー」
ルゥがフッと離れていく。
「あっ! ルゥちゃん!」
「隠れーーすーーー、危険ーーーーー」
途切れ途切れの声でよく聞き取れないリヴィア。
「待って! ルゥちゃん! 何が、何が危険なのっ?」
「ーーーーーー!」
完全に聞き取れなくなるリヴィア。すると身体が周りの白い空間に溶け込んでいく。
(これはっ!)
感覚が段々と麻痺し、何も感じなくなっていく。それに段々と気が遠くなり、意識の維持も困難になっていく。
「る、ルゥ……ちゃん」
そこでリヴィアの意識は途絶えたのだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
次回から説明がちょっと多めなのでお許しください。
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