25 ウボォァ!
ウボォウボ、ウホッホホホッウボァ、ウホーホホ !
ブランガは魔王向かって指を突き立てる。
ウボァウーボォ、ホホホッホッホッウ!
気合い十分やる気満々のブランガがドラミングして魔王を威嚇する。ちなみにブランガの言葉は、無駄に洗練された声真似でタイムリーにキアラが翻訳していた。
若干苦笑い気味のリヴィアと痺れて憧れるキアラ、さらにライバルの出現に闘志を燃やすラリィ。
しかし、ブランガが助けに来なければ確実に殺られていたリヴィア達はブランガに感謝する。
「ありがとーう! ブランガさーん」
その言葉に大興奮のブランガ。キアラも翻訳出来ないほど暴走しているようだ。すると近くの建物の上から二頭のワンゴが現れ、背中に乗れと合図する。リヴィアとキアラで一頭の背中に乗り、ラリィ一人でもう一頭の背中に乗る。
キキーっ、キキ!
この姉御とはリヴィアの事であると、タイムリーかつ的確に翻訳するキアラ。リヴィアの額に怒りマークが浮かぶが助けて貰っているので我慢する。
そして二頭のワンゴは魔王から離れるように移動を開始する。
後ろを見るとブランガが建物を壊して、その瓦礫を魔王へと投げつけていた。
ウボァーーーッ
魔王は全身薄らとした紫色のバリアで多い、瓦礫を防いでいる。
「だ、大丈夫なのっ?」
心配になるリヴィア。いくらブランガでも、あの魔王相手に戦えるのだろうかと。
|キキーキーッキッキキーキキ《兄貴はそう簡単に殺られませんよ姉御》!
ワンゴの声真似をしながらキアラが翻訳する。
「リヴィア! 一度城に撤退しましょう! ニコレットさんと合流して作戦を練るべきです」
ラリィがリヴィアに進言する。
「確かに……魔王がいる限り、あの檻のような魔法は解けないわ」
「あ、あの空にいた人が……魔王なの?」
「間違いないわ、アレに似た化け物と出会ったことがあるの」
キアラが恐る恐る聞く。リヴィアは怒りを押し殺しながらも、奴が魔王であるとキアラに説明する。
「では城に向かいましょう!」
「分かったわ、ワンゴさん達! あのでっかい建物に向かってちょうだいっ!」
リヴィアは城に指を指して、ワンゴ達に指示を出す。
キッキーッ
素直に指示に従うワンゴ達。二頭のワンゴ達は建物の上を素早く移動して城へと向かう。しかし、急に地面が大きな影に覆われる。
「! 避けてっ!」
二頭のワンゴ達は素早く飛び退き、進んでいた先に上から巨大な物が降ってくる。
ドガガガン
建物ごと潰して落ちてきたのは片腕を失ったブランガであった。
「ぶ、ブランガさんっ!」
「ブランガ兄ちゃん!」
キキーっ!
リヴィアとキアラ、ワンゴが悲痛な叫び声をあげる。
「よ、避けるんだリヴィアァァァ!」
リヴィア達とは別方向に避けていたラリィから叫び声が上がる。リヴィアとキアラが「え?」っと思った瞬間、乗っていたワンゴの身体を紫の細い線のようなモノに貫かれる。
バシュン
ぐらりとワンゴが体勢を崩し、建物を落ちていく。
「「きゃぁぁぁ!」」
ドサッ
ワンゴと共に落ちるリヴィアとキアラだが、ブランガが手で受け止めてくれた。身体中傷だらけになっているブランガは荒い呼吸でとても辛そうだが、リヴィア達を優しい手付きで道路へと置く。
「あ、ありがとう……」
リヴィアのその言葉にブランガはニヤッと笑顔で返すが、すぐに表情を引き締めて空を見上げる。空には既に魔王がいた。
「くっ」
「リヴィアァァ! 大丈夫ですかっ!」
リヴィアもキアラも魔王に身構える。そしてワンゴに乗ったラリィがリヴィア達の元へとやってくる。
「私達は大丈夫、でも……」
「ワンゴちゃん……」
リヴィア達を背負ってくれていたワンゴは既に息がなく、リヴィアとキアラは悲しい表情で撫でる。ラリィもワンゴから降りて申し訳なさそうに見つめる。
ガラガラ……
左腕の肘から下がないブランガが、崩れた建物から身体を起こして大通りに出る。大量の血が流れるブランガ。痛ましい姿に、リヴィアもキアラも目を覆いたくなる。
「ダメだ、このままでは全滅してしまう! 早くここから移動しましょう」
「で、でも……」
「うう、ううう!」
ラリィが先導するため前に出るが、リヴィアはブランガと魔王を交互に見て、圧倒的な差がありこのままではブランガが殺られてしまうと心が訴えて動けないでいた。キアラもブランガには死んで欲しくないと願い、でも叶わない願いだと現実が囁き、涙が溢れ出る。
「行くんだっ! 救われた命を無駄にする気かっ!」
「「!」」
ラリィが叱咤する。そしてブランガも、サムズアップで答える。二人はブランガのその姿を目に焼き付け、涙を拭いて走り出す。
もう一頭のワンゴも、死んだ兄弟に別れを告げ、後ろをついて行く。
しかし、魔王は逃がさんとばかりに魔法をリヴィア達に向け放つ。魔法を放つ瞬間、ブランガが飛びかかった事で魔法は逸れて、リヴィア達と城の間に直撃する。直撃した地面が巨大な穴となって、リヴィア達の行く道を阻む。
しかし、魔法の威力と言うよりは、元々地面の下に空間があり、崩れたような感じであった。
穴を覗き込むと大分深い場所な用で、暗くて見えない。
「ダメだ、迂回して行こう!」
そう言うラリィだったが、後ろから紫色の輝きが放たれ、振り向くとブランガがこちらに向かって吹き飛ばされて来たのだった。寸前で止まるが、ブランガの身体は既にボロボロで無事な箇所を探す方が難しい状態だった。
そして空中に奴が再度現れる。
「っく!」
「ぶ、ブランガ……」
「うう、ううう!」
魔王の手に魔力が集まる。先ほどよりも大きい。このままでは殺られるっと思ったリヴィア達。ブルブルと震える身体でブランガが起き上がる。痛みで言う事をきかない身体にムチを打ち、リヴィア達に、向き合う形で立ち上がる。
ウボォ
魔王に背を向け、両腕を開きリヴィア達を見送るように守る。
「ブランガさん……」
「お前……っく」
「や、やだよぅ……死なないでっ!」
キ、キキ……
ウボォァ!
涙を浮かべてブランガを見つめる三人と一頭。ブランガの瞳に宿る優しく、強い力が訴えかける。
生きろーーーーっと。
ワンゴはブランガの意志に応えるため、キアラを肩に乗せる。
「いゃ! いゃだよっ! 行かないでよ!」
駄々をこねるキアラ。両手を必死にブランガへ伸ばす。
次にラリィを反対の肩に乗せるワンゴ。
「っく、キアラ、ブランガの意志を無駄にしちゃいけないっ!」
「ううう、にぃちゃァァあん」
大声で叫び、大粒の涙を零すキアラ。最後に大事そうにリヴィアを両手で抱えるワンゴ。
「ぶ、ブランガ! ブランガァァァ!」
涙を流しながら、必死に手を伸ばし叫ぶリヴィア。
ブランガの目は優しいままリヴィアを見つめていた。
そして放たれる巨大な光の魔弾。ブランガを呑み込むように紫色の光が包み込んでいく。
その姿を最後に、ワンゴは地面に空いた穴へと飛び込んだ。落ちていく三人の目には大きな穴の上を、紫の光が突き抜け、何かを跡形もなく消し去っていく様子だけが映っていた。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
攻撃を背中で受けるか、胸で受けるかで悩みましたが、
最後は愛する人を見つめたままを選ばせて頂きました。
後ろ姿の方がいいって方、すみませんが
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