24 待たせたな
「ったく、何処まで続いてやがんだァ、この道はよォ」
クネクネと曲がる道で、小さな火を頼りに進んで行く人物がいた。大人が二人通れるくらいの幅で、何度も道が分かれている。方向感覚を失い、迷子になる事間違いない状態で、その人物はすいすいと進んで行く。
「このォ方角は……北に進んでるのか」
正確に現在位置を把握する。階段を降りつつ、どんどんと地下へ進んでいるのを感じている。
「ここに、きっと例の物があるはず……」
火の揺らめく明かりに照らされる表情はとても硬い。すると、後方から人の気配が近づいてくるのを察知する。
「チッ……急がねェとな」
そう言って、ハットを押さえて小走りで闇へと進んで行くのだった。
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一方、ロンダーク王国城内では……
「この城に隠している秘密を素直に教えなさいっ! さもないと……」
小さなタクトのような杖からビュルルッと小さなカマイタチを発生させる。
「ひ、ヒィィ!」
「し、知らん、ワシらは何も知らんっ!」
「こ、こんなことして、た、ただで済むと思うのか!」
そこはロンダーク王国の王の間。一人のソーサラーが複数の大臣達を脅していたのだった。ロンダーク王国国王ジーク・ヴァン・エルド・ダークが鎮座していた。
「お、王の前で……この無礼者めっ!」
「衛兵は何をしておるのだっ!」
六人程いる大臣は、王の椅子を中心に三人ずつで左右に並んで、口々に文句を言って喚いている。
「あら? ここよりももっと大変な事になっているの、ご存知ないのかしら?」
「ぐぅ、ぐぅぅ」
挑発するようにそう言うと、ソーサラーは杖の風をさらに強める。
「……よい」
「お、王よ……」
ここに来て初めて声を発するジーク王。それまでは目をつむって、頬杖ついて居るだけであった。
「そこの美しきソーサラーよ。名を聞こう」
「……ニコレット・ノアよ」
「そうか、ではニコレットよ。お主の求める秘密とは何だ?」
それまで余裕たっぷりに挑発的な態度だったニコレットだが、王からの威圧に気を引き締め直す。
「……」
「さぁどうした? 何が知りたくてわざわざここまで来たのだね?」
(さすがジーク王ね、あの威圧感。ただ者ではないわね)
心の中でニコレットはジーク王の評価を上げ、警戒レベルを一段階上げた。
「ヤツらの目的は何っ!? この城に公に出来ない何かを隠しているんでしょう?」
「目的……か。ワシにはヤツらはこの国を侵略しに来ているとしか思えんがな?」
強い口調でニコレットが問い質すが、ジーク王は何のそのと言った態度を崩すことは無かった。
「あるんでしょ!? ヤツらが求めるものが、この城のどこかにっ! 素直に言いなさいっ!」
「こ、このソーサラー風情がっ!」
「ジーク王に失礼じゃぞぉ!」
さらにニコレットが強い口調で問うと、周りの大臣達が騒ぎ始める。その大臣達の言葉が煩わしくて、本気で魔法をぶっぱなそうか悩み始めた所で王が一喝する。
「よいと言ったであろうっ!」
「! は、ははぁ!」
「お、お許しください王よ」
静かになる腰巾着達が冷や汗をかきながら、王の視界に入らないように下がる。
「ニコレットよ、邪魔が入って済まぬな、許せ」
「い、いえ、それよりも答えてちょうだいっ!」
「ふむ……」
少し考え込むジーク王。すると目を開き、真っ直ぐにニコレットを見据える。
「この城の地下を目指せ」
「地下……?」
「そこにお主の求める答えがあるやもしれぬ」
そう言うと、王は立ち上がって大臣に指示を出す。
「城内の兵士たちを集めよ。ワシも地下へ行く」
「お、王よ、良いのですか……」
「……決めた事だ、行くぞ」
大臣達は心配そうに王を見た後、それぞれがすぐに行動を起こす。
「ニコレットよ、しばし待たれよ。戦の準備をして来るでな」
「……分かりました。しかし、何故話す気になったのですか?」
「なぁに、座して死を待つのが退屈になっただけだよ」
不敵な笑みを浮かべるジーク王。ニコレットはその表情に一瞬驚くが、何となくジーク王という人間がどういう人なのか理解して、フッと笑って同じように不敵な笑顔で返すのだった。
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心と記憶に刻まれた恐怖は中々消えない。
リヴィアとラリィにとって、つい最近の出来事なのだから尚更である。ハーズェンドのもたらした絶望を、そのまま身に宿したような人型の魔王。
真っ赤なマントの下からは、四枚二対の翼が生え、ゴツい鎧がハーズェンドの肉体を彷彿とさせている。顔は兜によって分からないが、その禍々しさは相変わずであった。
未だかつて無い恐怖に怯えるキアラは、身体が動かず、そのまま口を開いた状態で魔王を見つめる。
魔王らしき人物は檻の上あたりで留まり、悲鳴や怒号の飛び交う人々を見下ろしていた。何を企んでいるのか分からないでいるリヴィア達。すると、チラッとこちらを見る魔王。
目が合った気がして背筋に氷塊が滑り落ちる三人。ラリィは剣を握ろうと、手を伸ばすが、指が震えて掴めない。リヴィアは先程から地面に座りっぱなしで、起き上がりたいのだが腰が抜けて力が入らない。キアラは声にならないのか、口をパクパクしている。
魔王は手だけをこちらに突き出して、手のひらに小さな魔力が集まる。
「魔弾」
呪文を唱える魔王の手から、小さな紫の弾が五発ほど放たれる。打ち出された弾は、広がるように飛び出し、ホーミングするようにリヴィア達がいる場所へと向かう。
突然の攻撃に気がついていても、身体が動かない三人。
(う、動けっ! 動け動けっ!)
(リヴィアをま、守らねば、動いてくれぇ!)
(あ、ああ……こ、怖い……)
身体は動かない、声に出せないが、思考だけはハッキリとしていた。まるでゴミを見つけたから、捨てとくかという程度の動きで魔王はリヴィア達を攻撃する。
五発の紫に光る弾が、確実にリヴィア達を当てるように角度を変えつつ飛んでくる。そして当たるという直前。
(だ、ダメっ!)
全員が思ったその時、黒く大きな影がリヴィア達を覆うと、目の前に大きな瓦礫が降ってきた。
ドカァァン
降ってきた瓦礫に遮られ、五発の弾は全て防がれる。
降ってきた瓦礫と爆発する魔法の弾の勢いで、リヴィア達は吹き飛ばされそうになるが、何とか踏ん張る。
「く、くぅぅう、一体何が起きたの!?」
「あ、あれを見てください!」
巻き起こる砂埃を防ぎつつ、リヴィアが言うと、ラリィが即座に周りを見渡して、助けてくれた人物を見つける。
よーく目を凝らすリヴィアとキアラ。そしてキアラはとてもキラキラした笑顔で、その者を見つめ、リヴィアが目を大きくして驚く。
何故ならそこには、大きな建物の上でドラミングする恋する獣、ブランガがいたのだった。
ウボォアアッ、ホッホッゥゥ!
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
やはりイケメンだけがイケメンじゃないんです!グスン
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