22 白旗
「チッ……ハズレだ。ここだと思ったんだがなぁ。」
高級そうな物が並ぶ部屋に、一人の人物がいた。ここは工業区画と住宅区画の間辺りにある中小工業製作所。しかし、規模の割には羽振りの良い部屋である。
「くそっ、こんな絶好のタイミングだってのに、何もないなんてやってられねぇなァ」
イラつき、近くにあるカラフルな壺を割る。
「ちきしょう……どこにあるんだっ……」
壁に手を付き、頭を軽くぶつける。すると壁の奥が空洞のような音がする。目を開き、念入りに壁を探っていく。そして、分かりずらいが、壁に切れ目のようなものを見つける。
「こ、こりャあ……」
その壁を強く押すと回転扉の要領で向こう側への道が開く。ゴクリと生唾を呑み込み、先へと進む。
細い道が続き、やがて階段が現れ、下へ下へと進んでいく。
そこは地下に繋がっており、薄暗く迷路のようにクネクネと先が見えずらい構造となっていた。
「ふぅ……ついにここまで来たか。待ってろよ……」
そう言うと、ポッケからジッポのような物をだし、火を付けて警戒しながら進んでいった。
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「キアラー! どーお?」
「クンクン……クンクン……」
リヴィア達はキアラの鼻をたよりに、逃げ遅れたであろう人を探す。屋根の上からキアラがクンカクンカしていた。
「もうすぐ住宅区画についてしまいますね、南側は山脈続きで逃げるには適していないので不味いですね」
ここロンダーク王国は西に渓谷、南には高い山脈が連なる土地となっており、逃げるなら東か北側であった。しかし、現在東から既に敵が侵入しているので、北側へと逃げるべきである。
「! 分かった! こっちだよっ!」
するとキアラが屋根伝いに走り出す。それを地上からリヴィアとラリィが追う。しかし、不自然な事に気が付く。何か変なのである。それに気が付くラリィ。
「待って下さいっ!」
「! ラリィ?」
「おかしい……」
「何がおかしいの? キアラちゃん行っちゃうよ?」
周りを見て思考するラリィ。この違和感は……。
「リヴィア、見てください」
ラリィが指を指したのは壁にある少量の血。
「こ、これがどうしたの?」
「よく見て下さい。この辺りはまだ被害は少ない、それなのによく見るとそこら中に血痕があります」
「!」
確かによく見ると至る所に少量ではあるが、血痕がある。建物の被害も、ここまで来れば無いと言ってもいいほどだった。
「ど、どういう事!?」
「……」
ラリィはゆっくりと剣を抜く。そして、警戒を一層強くする。リヴィアもラリィの傍に寄り、周りを警戒する。
キアラは既に見えなくなってしまった。しかし、ラリィとリヴィアは見えない敵に動けないでいた。
「どこだ! 出てこいっ!」
これでいなかったら恥ずかしい奴だが、割と早く出てきてくれたので安心するラリィ。
既に三十人ほどに囲まれているが。
(多すぎだろぉぉぉ!)
顔はしてやったりとした堂々の表情だが、心は既に白旗を振っていた。
リヴィア達を囲んでいたのは全員同じ格好をしており、軽装で頭巾を被って、表情などは一切分からない。だが闇に紛れるような色合いや、気配の殺し方などから、彼らがジャパニーズニンジャであると訴えている。
屋根の上も建物の隙間も全て封鎖されている。
「ら、ラリィ!」
「リヴィア、離れないでっ!」
二人は密着した状態で何とか活路を探す。しかし、全員が細く、中くらいの振りやすそうな剣を抜く。っとそこにーーーー。
「舞えっ! 大嵐守」
リヴィア達二人を中心に大きな風が舞う。それは台風の目が二人を守るように、周りだけを建物ごと跡形もなく吹き飛ばす。
「こっちだよっ!」
「キアラっ! それに……貴方はっ!」
「また会ったわね! 元お姫様」
二人の窮地を救ったのはニコレット・ノアであった。前に見た時は黒いローブ姿だったが、今は紫色の全身ピッタリのドレスで足の裾、手の裾がふんわりと広がっている。身体のラインをバッチリ強調するようにボンキュッボンの役満ボディと、魅惑的な笑顔がまさに大人の女性であった。
「ニコレットさん! どうしてこんな所にっ!」
「うん、話したいのは山々何だけど、今はここを切り抜けましょ!」
そう言うとタクトのような杖を右手に持ち、構える。先程の魔法はあまり効果がなかったようで、敵は再度包囲網を完成させている。
「兄ちゃん! どっちが多く倒せるか、勝負だよっ!」
キアラがペロッと小さな舌を出してやる気満々だ。
「やれやれ、怪我だけはしないでくださいね!」
ラリィもこれならと、やる気を出して剣を構える。
先に動いたのは敵だった。まず全方位から十人の忍者が低い姿勢で突っ込んでくる。
「行くよっ! 獣拳 象撃」
キアラは白く光る足を振り回し、まるでコマのように旋風する。最初の二人に強烈な蹴りを浴びせ、そのまま上下を入れ替えるように、前転から今度は手で身体を持ち上げ、左右に広げた足を回転させて次の二人に蹴りを叩き込む。まるでカポエイラをしているようだ。
「行くぞっ! 剛心」
ラリィの剣が光る。薄く白い膜が剣を覆うと、ラリィは飛び出す。そしてまず二人に剣を横薙ぎに払う。忍者はこれを一人が剣で受け止め、その後ろに控えたもう一人がトドメを刺す動きを取る。
すると受け止めた剣を叩き折るラリィ。そのまま受け止め損ねた忍者を吹き飛ばし、トドメを刺そうとしていたもう一人へとぶつけ、体勢が崩れた所を逃さずラリィは一撃叩き込む。
ゴアルは一時的に対象を硬くする効果があり、剣を硬くしてウェポンブレイクしたのだった。
「穿てっ! 突岩石」
ニコレットは杖から黄色い魔力を生み出し、周りに落ちている家の瓦礫などを持ち上げて、一気に敵に向けて放つ。すると向かってきていた三人は、身体中を瓦礫に撃ち抜かれ、骨が砕ける。さらに後ろに控えていた忍者達も急いで避けるが、四人が餌食となる。
「み、皆凄いっ!」
リヴィアはみんなの攻撃に関心していたが、後ろから向かってきていた最後の一人が飛び掛る。しかし、振り向きもせずに裏拳一発で顔面がへこんだ上、大きくきりもみしながら後方に吹っ飛び、崩れ掛けの建物をジェンガのように崩した。
インパクトでリヴィア。華麗さでキアラ。範囲殲滅でニコレット。地味さ(技術点)でラリィに軍杯が上がる。
「こっちよ!」
「はいっ!」
「はぁい!」
ニコレットがこじ開けた道をみんなで突っ走る。右手にラリィ、左手にキアラが敵を跳ね除け、無事突破に成功する。
そのまま城を目指す四人。敵は追跡を諦めたのか、ついてくる気配はない。
「あのっ、助けて頂きありがとうございます!」
「いいのよ。 実は私もキアラちゃんに助けられたばかりだったのよ」
「んんー! 黒い人に囲まれてたー!」
「なるほど、そういうわけでしたか」
キアラは一度会っただけのニコレットの匂いを覚えていたのだった。そして囲まれてたニコレットを救い、逆に囲まれたリヴィア達に加勢したのだった。
「それにしても、何故あんな場所にいたのですか?」
「言ってたでしょ? 魔王が動き出したって。つまり西、東と攻めて来ていて、他がお留守なのもおかしいでしょ? それで南側を見に行ったら案の定、既に敵に侵入されてたって訳」
ラリィの質問に答えるニコレット。
「え? でも、みんなが逃げるなら東か北で、南には何もないんじゃ……」
すかさず疑問を口にするリヴィアであったが、
「いいえ、私が敵だったら、手薄な場所から侵入して本命を落としに行くわ」
「つ、つまり……城を落としに行くって事ですね」
ラリィが答えるが、ニコレットは首を横に振る。
「本命は城に隠された何か。でなければ、こんな所にこれだけの過剰戦力を投入する筈ないわ」
「何か……まさか!? 魔王の身体の一部が眠っている!?」
リヴィアが思い当たる事を口にする。
「あなたの国の話を聞く限りは、それが濃厚ね」
「ふえぇ?」
キアラにはまだ早かったらしい。耳をピコピコしているだけで可愛いから許す。
「っく!」
「これからどうするのかしら?」
嫌な思い出を頭に浮かべるリヴィア。ニコレットが今後の方針を確認する。
「私達は北に一度向かいます!」
「北へ?」
「はいっ! 今までの話で北側にも敵がいる可能性があると分かりました。それなら私達は北門を守って避難をさせるべきだと思うんです」
ニコレットがちょっとの間、指を唇にあて、目を閉じて思案する。
「なるほど、生け贄に必要な人々を逃がす事に成功出来れば、復活は難しくなるわね」
「アハハ、そういう訳ではなかったのですが、一人でも逃したいんです」
ふふふ……っと上品に笑うニコレット。
「分かったわ。貴方のそういう所、嫌いじゃない。それなら私はこのまま城に向かって、魔王の狙うものを確認してくるわ」
大人の眼差しにリヴィアが頬を染める。
(こ、これが……大人の女性。)
そうこうしているうちに、高級工業区画へと突入する。東ではいまだに強烈な爆発音と赤と白の光がぶつかり合っている。
「それじゃあここから二手に別れましょ? 私はこのまま城に向かうわ」
「はい! 北側が落ち着いたら合流します! それまでは無事でいて下さいねっ」
リヴィアが真っ直ぐな瞳でニコレットを見つめる。そんな真っ直ぐな瞳で見つめられ照れてしまう。
「あ、ありがとう。お互いがんばりましょうね」
「はい!」「はいっ!」「はぁい!」
キアラは手を真っ直ぐ上げていて可愛い。
こうして西側は大量の大型獣兵が行進中、東側は謎の生体兵器部隊により半壊状態。南側は忍者による隠密部隊が蔓延っている。
そんな中、リヴィア達は北に希望を、ニコレットは魔王の狙いを潰しに動くのだった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
戦える相手に出会えて良かったねラリィ!
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