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Rd end (アールドエンド)  作者: 十画
第二章 旅立ち
33/216

11 塀の中のラリエッティ

急ですが投稿時間を変更しました。

 時は遡る事、二日前ーーーー。


 真っ暗な空間に、一人の妙齢な女性が立っていた。しかし。真っ暗といっても、女性の目の前にある直径五メートルはある巨大な水晶が、ぼんやりと紫色に光っているのでその周りは何となく明るい。


 そのぼんやりとした明かりに照らされている女性は、身長が女性にしては高く、黒いローブの上からでもスタイルが良い事がわかる。顔はフードを被り、目元などは分からないが、長い青白く輝く髪が胸の辺りまで真っ直ぐに伸びている。

 女性は俯くようにして、両手を顔の前で組み、お祈りをしているように見える。


 そんな女性の後ろにある人物が訪れる。


「どちら様でしょうか?」


 女性は気付いて、微動だにせずそのままの姿勢で声だけ発する。


「………………」


 返事がないのでフードの中からチラっと視線だけを後ろへ向ける女性。


「……随分面白い事になっていますね……レッド」


 そう言うと女性は視線を元に戻す。女性の後ろに立つのは言葉通りレッドであった。


「……まぁな」


 若干不機嫌そうなレッドの声に、女性はクスッと笑う。


「捜し物は見つかりましたか?」

「……ああ」


 なにやら事情を知っている女性は、レッドと会話を続けている。


「それと……」

「? ……なにか?」

「切り札も見つかった」

「!」


 今まで姿勢を崩すことのなかった女性が、レッドに振り向く。


「……誠なのですか?」

「……ああ」


 女性はそれが真実であるのか確かめるように、フードを脱いでレッドの瞳をジッと覗き込む。その瞳は水晶と同じように紫色をしており、猫のような切れ長の目をしていた。

 しばらく見つめていた女性は、レッドの瞳に嘘偽りなどないと読み取り、ホッと安心したように、人形のような表情を和らげて笑顔で言う。


「……遂にやり遂げたのですね」


 万感の気持ちがその言葉には込められていた。しかしレッドはいつも通りの仏頂面で言う。


「まだ魔王を倒した訳では無い」

「そ、そうですね。私とした事が……」


 目尻に溜まる涙を拭き、最初と同じ人形のような表情に戻る女性。


「それで今後はどの様になさるのですか?」

「……もうすぐ、魔王が来る」

「!!」


 女性の目に動揺が走る。


「ま、まさか……」

「このままでは間に合わない。例のモノを使う」

「! また、使われるのですか……」


 レッドの言葉に表情が曇り、やや寂しげな声で女性が言った。


「それしかない」

「……畏まりました。すぐに準備致します」

「頼んだ」


 それだけ言うとレッドはその場を立ち去る。女性は立ち去るレッドに深くお辞儀をして見送るのだった。



 ______________________



 そして現在ーーーー。


「ちょっとぉぉぉお! 私達は何もしてないって言ってるじゃない!」


 鉄格子を手で掴みながら、守衛のいる部屋に声を掛ける。角度的には直接見えないので、声を反射させるように、大きい声を上げるリヴィアがいた。


「無駄ですよリヴィア? 俺達はスケープゴートにされたのですよ?」


 簡易的なベッドに横になり、腕を枕にして寛ぐラリィ。


「だってラリィ! 超ムカつくじゃないのよ! あんの男の憎らしい顔思い出したらぁぁぁあ!」



 ガコン!



 苛立ち、怒りに打ち震えるリヴィアは、ヴァルの顔を思い出すだけで鉄格子を丸ごと外す。ーーあっ! っとなって、やり過ぎちゃったと少し反省して、急いで鉄格子を元に戻すリヴィア。


「ん? 何か今、物凄い音がしませんでしたか?」


 音に反応したラリィが目を開け、起き上がる。


「えっ! いや、な、なんだろうね? あ、アレかな? ちょっと私が小突いちゃったからかなっ! アハハ……」


 挙動不審になるリヴィアは、えいえいっと猫パンチするように鉄格子を小突く。


「? そうですか」


 ラリィは気のせいかと思い、また横になる。鉄格子を壊した事がバレてないとホッとするリヴィア。


 リヴィア達は馬車泥棒として捕えられ、地下牢へと投獄されたのだった。



 それもこれもヴァルの計画通りであり、リヴィア達を身代わりに、自分は悠々と入国を果たした。わざわざ遠回りしてオアシスに向かったのも、シルトの街から馬車が盗まれたという情報が、最短距離で伝わるのを待つ為の時間稼ぎであり、リヴィアのダウンもヴァルにとっては好都合だった。

 さらに宿屋での三人の会話は筒抜けであり、二人がロンダーク王国へ行く事は先に得ていた情報だった。二人が馬車を探すタイミングで偶然を装って話を持ち掛けた。というのがヴァルのここまでの計画であった。



「ううー、どうしよう。このままじゃ魔王を倒すとか以前の問題で、たたの盗っ人じゃないのよー!」

「まぁ焦っても仕方ありません。落ち着いて考えましょう」


 そう言いながらラリィはベッドでまだ寛いでいる。


「あんた、妙に落ち着いてるわね」

「そ、そうでしょうか? 気のせいですよ」


 ラリィにとって、二人きりの空間というのはかなりのプレッシャーであった。軍曹も新兵も既に戦闘準備万端で、広大な大地で綺麗な隊列を組んでいた。先頭には将軍が目を瞑り、今か今かとその時を静かに待ち侘びていた。


「ふぅ、それにしても狭い場所ねっ! 何も無いじゃない!」


 ラリィは平静を装っているが常に耳はダ〇ボ耳で、リヴィアの一言一言に気を張っていた。


(狭い、何も……ない……二人だけ)


 軍曹が将軍の背中に熱い視線を送る。新兵達もまさか、ここが俺達の最後の戦地になるのだろうかとゴクリと生唾を飲み込む。


「あとラリィ? あんた、いい加減退きなさいよ! ベッド一つしかないんだからっ!」


(これだっ!)


 将軍も目をカッと見開く。

 そう、この牢屋にはベッドが一つしかない。狭い部屋にベッドが一つで男と女、一つ塀の中で何が起こるかなんて化学反応を見るよりも明らかである。


 ラリィは何も言わずスっと立ち上がる。


「? どうしたのよ急に。なんか目が怖いわよ?」


 将軍が気まずそうにそっぽを向く。


「……リヴィア」

「?」


 不思議そうな目で見つめるリヴィア。その顔はラリィにとってとても、とても尊いものであった。

 将軍が遂に出陣の号令を掛けるために、剣を抜き、天高く突き立てる。あとは……振りおろ……。



 ドタドタドタっ


「! ーーー誰か来るわよっ?」


「クソがァァァァア!」

「ええっ?」


 急に叫ぶラリィに驚くリヴィア。ラリィは両手に握り拳を作って、天を仰ぐように力強く叫ぶのだった。


 そんなラリィはほっといて、リヴィアは鉄格子に近付いて、音のする方を見る。角度的に見えないのだが、壁に写る影が複数人でもみ合っているように見えてくる。

 そして声もだんだん聞こえてくる。耳を澄ますリヴィア。


「ほら、暴れるなっ!」

「やーだっ! 離せよっ!」

「あ、引っ掻くなっ!」

「っく、大人しくしていなさい!」

「やーだっ! やーだってばっ!」


(男が二人……っと、これは子供? かしら)


 リヴィアは聞こえる声から人数をは把握する。近づいてくる影はだんだんと濃く、ハッキリとしてくる。


「さぁここに入りなさい」


 そういうと守衛が向かい側の牢屋の入口に手をかける。そしてもう一人の守衛が後から引き摺るように、小柄な子供らしき人物を連れてくる。


「やだったら、やーだっ!」

「いいから、来なさいっ!」


 力いっぱい引っ張る守衛。もう一人も扉を開けて参加する。暴れるその子を二人がかりで何とか牢屋に押し込む。


「ふぅ、しばらくそこで反省していなさいっ!」


 そう言って二人の守衛は居なくなる。

 牢屋に放り込まれた小柄な子供は、押し込まれた時に何処か痛めたのか、うつ伏せに倒れ込んだまま動かない。


 今も天を仰いだまま、頭を掻きむしっているラリィを放っておき、リヴィアは心配で向かいの牢屋の子に声を掛ける。


「ねぇ、アナタ大丈夫? 何処か怪我したの?」

「……」


 ピクリとも動かない。心配になってもっと大きな声で呼ぶリヴィア。


「ちょっと! アナタ大丈夫なのっ?」

「んん……んー……」


 反応した。更に大きな声で呼ぶ。


「おーいっ! おーいって…… ーー」

「……うう、うるさーい!」


 リヴィアが固まる。ラリィはもはやブリッジしている。


「誰っ!? せっかく気持ち良く寝てたのにぃ、起こしたのはっ!」

「へ? ね、寝て……」


 急に起き上がり、右、左っと声の主を探すが、リヴィアに対して背中を向けてしまっているので見つからない。

 寝ていたと叫ぶその子に、驚くリヴィアであったが、それ以上にその子の頭を見て驚く。






 ーーーー猫耳だった。



最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

欲望にまっしぐら!


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