2 乙女の必殺技
18時までにアップいたします!
(……ら……りぃ……)
「リヴーー! リヴィー! リヴィア!」
(わかって……る、そんなに ……大声で……叫ばなくても……)
「っく……反ーーうがなーー! こ、こうーーら……」
(な、にを、するの……?)
リヴィアは重い瞼を必死で持ち上げる。薄らとボヤける視界に、段々と色が塗られ、輪郭もハッキリしてくる。
(ら……りぃ……)
「り、リヴィア……」
「へ?」
意識も視界もはっきりとしたが、リヴィアは後悔する。視界いっぱいにラリィの顔が広がっていたのだから。
目を瞑り、頬を赤らめ、口はすぼんでいるのを見ると明らかにkissをしようとしていた。
リヴィアは一気に覚醒する。
「こ、この……」
「へ?」
今度はラリィが変な声を上げる。
まさか? という想いでラリィは目を開けた。開けてしまった。軍曹が撤退命令を下そうと大声を上げるが、時既に遅かった。
「エイ……ドォリアァァァァァアン!」
「いばぁぁあーーーー!」
ご存知だろうか、人は顔を岩にめり込ませて宙ぶらりん出来るということを。
吹き荒れる怒りの波動を纏いし拳を振り抜いたまま、リヴィアは言う。
「鉄拳制裁……」
この技は乙女の純情な感情が脅かされた時、かつ怒りのメーターが臨界点突破した時にのみ発動できる超超必殺技なのだ。
まさに乙女の純情な感情の怒髪天パワーなのだっ! 大事な、事なのだァァあ!
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「さて、罪状を述べよ」
リヴィアが両手を組んで仁王立ちしていた。その顔には少女のようなあどけなさも、ましてや女性の色気もない。あるのは背後に薄らと見える羅漢王だった。
既に顔面おイワさん状態のタラコ唇という愉快な顔のラリィが必死に答える。
「ばぃ……わ、わだぐじば、り、リヴィア様のぐぢびるを奪おうーーーー」
ズンッ
「ひ、ひぃいい!」
「ん、んんっ!」
リヴィアの右足に小さなクレーターが何故か現れる。わざとらしい咳払いが「お前、その回答が本当に正しいとでも?」と言っているかのようで、ラリィの寿命をマッハで縮める。
「わ、わだぐじのようなウジ虫が、人様であるリヴィア様に口づけをじようと考えることごぞが罪でございばずっ!」
ラリィは額を地面に擦りつけて謝る。
ガッ!
「びひっ!」
リヴィアの可愛らしい足がラリィの頭を優しく踏み潰す。ラリィはまるで家畜ような鳴き声を上げる。
「次は……ない。わかるな?」
「ば、ばぃいっ!」
その声は腹の底から響くような低い声であった。ラリィは出荷されるのが今なのか、明日なのかという瀬戸際の気分である。
すると頭の上に置かれた足が軽くなり、リヴィアが小声で何か言う。
「……心の準備ってものがあるんだから。」
難聴系のお約束は守られる。
「へ? 今なんて……ぶべっ!」
「なんでもないわよっ!」
再びラリィは顔面岩パックされるのであった。
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「さて、じゃあ私が気を失っていた間、何があったか説明して頂戴。」
「はい、まずこの場所なのですがーー」
リヴィアとラリィは辺りを見回す。どうやら洞窟の中にいるようで天井も壁も岩だらけだ。しかし、人が通っている形跡はある様で、地面はある程度踏み慣らしてあるし、小さな石や大きめの石は壁際に寄せてある。
真っ暗な訳でもなく、天井や壁、地面に含まれている含有物の中にぼんやりと緑色に光を放つ物があり、そこそこ明るい。
そんな周囲を分析していたリヴィアはラリィの言葉に聞き耳を立てていたのだが。
「皆目検討もつきませんっ!」
「ふむ。……っなに!?」
声が裏返るリヴィア。説明を求めたのに第一声が分かりませんだとっ? っという感情が湧き上がる。
「そして我々が助かったのはーー」
「ふ、ふむ」
あーそれそれ、それ大事なとこじゃん。そこから説明してくれよなっという気持ちでリヴィアは先程の失態を水に流そうとするが。
「気を失っていたので分かりませんっ!」
「ふむ。……っなに!?」
ラリィはキリッと男前な表情で言い放つ。何もわからないという一点にのみ特化した自信だけが、彼をここまで強くする。
「ちょっと! 何も分からないってこと!?」
「ハッ!」
何故だろう。王国騎士式敬礼がヤケにウザったい。このポンコツラリィは、正真正銘職務を全うしてはいるが、何一つ実らない。
実際の所、ラリィも目を覚ましたらここにいて、周りを確認したら横でリヴィアが倒れており、いくら呼んでも目を覚まさないので人工呼吸を行おうとしただけだった。
決して昔読んだお話で、王子が眠れる姫にマウスtoマウスでウェイクアップおういえい! してたのを真似しようとした訳ではない。きっと。
「……もういいわ、それよりレッドは?」
「……ここだ」
話にならないとばかりに眉間に指を押し付けるリヴィアだったが、ふと気になってレッドを探そうとするが、既に真横に立っていた。
「!! ーーーーっちょっ、いつの間にっ!」
「……お前らが遊んでいる時からだ」
突然声を掛けられてビックリするリヴィア。しかし、実際のところ、ラリィが天井のシャンデリアになった時も、地面に顔パックしている時も、リヴィアの横にいた。
なので見えていたラリィからすると、横にいるレッドに詳細を聞いて欲しいなぁと思ってたりした。
「そ、そお。コホン、じゃあレッド、一体何があったの? ここは何処なの?」
平然を装いつつリヴィアはレッドに話を聞く。その間、ラリィはジトーっとした目でリヴィアを見ていたが、リヴィアのハートはそんな事では砕けない。そして話し出すレッドであったが、口数が少ないせいでかなり、部分的な情報をリヴィアとラリィに歩きながら話し出す。
簡単に要約すると雪の中で倒れた二人を見つけ、ここまで連れて来た。ここは昔鉱山として栄えた場所で、今は誰も使っていない所だそうだ。さらにこの洞窟を抜けて、東へずっと進んだ所に大きな国があり、まずはそこを目指すという事だった。
「あの猛吹雪でよく私達を見つけたわね」
「………………」
「ここへはどうやって運んだの?」
「………………」
実は詳細を聞こうにも教えてくれず、単語で「見つけた」「連れて来た」「鉱山」「今は使われてない」と言われただけで、パズルのように全て繋げてやっと全体を把握出来たという感じであった。
「ふぅ、あんた単語過ぎて分かりずらいわよ、まぁ、助けてくれた事は感謝するわ。ありがとう」
「……簡単に死なれては困るからな」
「うっ……そ、そういえば、魔王ってのは何処にいるのよ! 世界を滅ぼすって言うならみんなで倒しにーー」
「無理だ」
「……だ、だよね」
そう言われて肩を落とすリヴィア。自分で言っていて分かっていたが、あのハーズェンドの親玉相手に人類が簡単に勝利出来るイメージがつかない。
何百人もいた会場の人々を一瞬で飲み込み、どんな防具も跡形もなく消し飛ばす威力のビーム。どんな武器も通さない鋼鉄の身体。これだけでも正直太刀打ち出来る気がしない。
「そ、そうだ! レッド! あんたみたいに強い奴って他にいないの? そういう奴を仲間にすればきっとーー」
「俺より強い奴などいない」
「あ、うん、ハイ……」
ここまでキッパリと言われるとは思っていなかったが、よくよく考えれば化け物のような強さを持つレッドが、何人もいる方がおかしいし、いたとしてもそう簡単に見つかる訳などないと。
(うぅぅ、ルゥちゃん、仲間ってどうやって見つけるのよぉ)
まだまだリヴィア達の旅は始まったばかりであった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
次回もよろしくお願いいたします。
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