16 黒いローブ
「グォォオオオオオオオッ!」
ハーズェンドの刃の間合いに入り、その両手の凶悪な刃が左右から振り下ろされる。
「うぉおおおっ!」「ーーーーっ!」
ラリィは最期の咆哮を上げ剣を構え、リヴィア姫は気を失っているバルド王を庇うように覆いかぶさり、死を覚悟する。
ーーーーその時。
バッキィィイイイン!
物凄い衝撃と音が会場を襲う。何が起きたかわからず、リヴィア姫は顔を上げる。するとハーズェンドがその鋭い刃をクロスしている姿を目にする。
ーーいや、正確に言うとクロスした刃で、あるモノを防いでいた。
よく見ると真っ赤な稲妻が、そのあるモノを中心に渦巻おっており、黒いローブを身に纏った人間らしいことが分かる。その激しく迸る稲妻は真紅の剣を形作り、ハーズェンドの刃と互角に張り合っていた。
「……あ、あれは……一体……?」
「わ、分かりません、突然後ろから……っな!?」
目の前の光景に戸惑うリヴィア姫。しかし状況を確認しようと後ろを振り向くラリィの目には、さらに信じられない光景を写す。
リヴィア姫達のいる壁に大きな穴が空いており、外の風景がそこにはあった。あのハーズェンドがいくら暴れてもビクともしなかった守護結界 神の寝室が、外から破壊されていたのだ。
「……こ、これは!?」
ありえない出来事に言葉が続かない、というよりも理解が追い付かない。
あれほど巨大な生物に、生身の人間が互角に渡り合っていることも、王国最強難攻不落の絶対防御結界を破壊する存在も、何一つ信じられないことであった。
「ぐ、グォォオオオオオオオッ!」
ハーズェンドも異常な事に腹を立てたのか、雄叫びを上げ、兜のバイザーらしき部分を開き、地獄の口から突然極大のビームを放出する。
しかし黒いローブの人物はすでにいない。虚空を穿つ極大ビームは破壊された結界を抜け、外の世界へと放たれ、その後爆音がする。
すぐそばにいたリヴィア姫達はその強烈な勢いに、頭を上げることが出来ずに伏せていた。
頭を伏せていると今度は鋭い斬撃の音が響き渡り、ハーズェンドの悲鳴のような雄叫びも聞こえてくるので、恐る恐る顔を上げる。
本日何度目の信じられないという光景を前に、言葉が出てこない。
それはまさに紅い稲妻が、下から上に向かって、ジグザグに昇っていた。稲妻が通過した後をハーズェンドの体液らしきものが、噴水のように吹き出し、堪らずハーズェンドが身体を仰け反らせる。
「! ギィィィガァァァァア!」
天を仰ぐように悲鳴を上げるハーズェンドの頭部に、黒いローブが現れる。次の瞬間、衝撃が天から地へとハーズェンドの身体を伝わり地面を粉々にする。そしてそのまま仰向けに倒れる。
ドッシィィイイン
巨体が倒れた事で辺りに砂埃が舞う。
リヴィア姫達からすると、特大の砂嵐が迫ってくる。「まずい!」と思い、ラリィがリヴィア姫とバルド王の前で仁王立ちする。
「ーーーーっく」
「ーーーーぅぅう!」
砂嵐が収まり、目を開けられるようになるとハーズェンドがどうなったのかが気になる。目を凝らして見てみると、倒れたハーズェンドの手前には、あの黒いローブの人物が畳んずんている。
「! ひ、姫様! チャンスです! 今ヤツは弱っています! 今なら封印の呪文でヤツを封印できるはずです!」
「! ーーーーそ、そうね……。私、やるわ!」
(終わらせる……父上を、ロスを、みんなを……私の、せいで……本当に、、、ごめんなさい)
「我、汝を許す者、我、汝を救う者ーー」
リヴィア姫は胸元のペンダントを優しく包み込むように両手を添える。
倒れていたハーズェンドが身体をゆっくりと起こし始める。黒いローブの人物は再び右手に稲妻を集め、真紅のの剣を生み出す。
「我、汝と共に歩む者、汝の罪を浄化しーー」
ペンダントが徐々に輝き始め、リヴィア姫の身体を中心に風が集まる。
ハーズェンドが完全に起き上がり、足元で稲妻を発生させている人物を睨み付ける。黒いローブの人物は何かを感じ取ったのか、一瞬コチラを見た気がしたが、激しい稲妻でローブがバタついてるのがそう見えただけだろう。
「汝の悪を滅ぼしーー」
ペンダントの十字架が少しずつ開き、うっすらとリヴィア姫の身体が地面から離れていく。
ハーズェンドが先程と同様に極大ビームを放とうと、ヒビの入ったバイザーを上げ、地獄の口を開く。その口の奥からエネルギーが圧縮されていく様が、肉眼で確認出来る。
「汝と共に生きようーー」
「? ……まさか、アイツ!!」
完全に開いた十字架はペンダントの宝玉を中心に、衛星の様に激しく回る。
ハーズェンドが一気にそのエネルギーを放出させるが、その方向はまさかのリヴィア姫たちだった。しかし、その間に割って入るように黒いローブの人物が極大ビームを受け止める。
「! ーー今ですっ! リヴィア姫っ!」
「生きる十字架」
強烈な光が勢い良くハーズェンド目掛けて放たれる。しかしハーズェンドは既に極大ビームを放っているため、強烈な光は飲み込まれるように極大ビームへと突っ込んでいく。
「くっ、、、くぅ、くぅぁぁぁぁああ!」
身体がバラバラになりそうな衝撃に、リヴィア姫の顔が歪むが脳裏に浮かぶ人々を想い、歯を食いしばって耐える。
すると突然、極大ビームと強烈な光の狭間で大爆発が起きる。
ドカァァァァアン!
「ーーきゃあっ!」「姫様ーーっ!」
リヴィア姫は爆発の勢いで身体を壁に叩きつけられる。急ぎ助けに行くラリィ。
「姫様! 姫様っ!」
「うっ、、、だ、大丈夫よ! それよりもヤツはっ!?」
身体中の痛みに苦痛の表情のリヴィア姫だか、今はそれどころではないと脳の片隅に追いやり、現状を把握しようとラリィに問い詰める。すると、高い所から放物線を描きながら、何か黒い物がリヴィア姫達の傍に落ちてくる。
ドサッ
気を取られ、落ちてきた物に注目するリヴィア姫達だが、見覚えのある物に息を呑む。
それは黒いローブの人物であった。爆発が直撃したのか、ローブからは黒い煙や焦げた臭いが漂ってくる。
これではきっと、、、と思ったその時。
「……やってくれたな……」
黒いローブから声がした。ドキリとするリヴィア姫達。まさか生きているとは思っていなかったようだ。
ムクリと起き上がる黒いローブの人物であったが、何故か縮尺が合わない。
立ち上がっているはずなのに、ローブを引きずっている。と言うよりも最初に見た時よりも明らかに小さくなっていた。
「……あ、あなた大丈夫?」
恐る恐る声を掛けるリヴィア姫。すると、今気付いたかのようにコチラをフードの中から見る。深く被っているせいか、表情や顔立ちまでは分からない。
「………………」
沈黙が続く。
痺れを切らして、リヴィア姫がもう一度訪ねようと口を開いた瞬間。
「……その神器」
そう言われ「えっ?」っとリヴィア姫は胸元のペンダントに視線を落とす。するとそこには真っ黒な宝玉に十字架は半分吹き飛んだのか、四個でとんがり〇ーンしたペンダントがあった。
「あ、あれ? これ、こんなに真っ黒だったっけ!」
「……貴様、その神器はまさかアレを封印していた物か?」
「え? そ、そうだけど……」
非常に中性的な声なため、男か女か分からないがその威圧的な喋り方にラリィが突っかかる。
「貴様とはなんだ! こちらはクラーゲン王国国王の一人娘リヴィア姫であるぞ!」
「………………」
「ちょっと、ラリィ! 今はそんな事どうでもいいでしょ!?」
「し、しかし姫様……」
フードの中の視線はラリィを見た後、リヴィア姫で止まる。そして、黒いローブの人物は名を名乗る。
「……俺の名はレッドだ」
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
やっとここまで来れました。長かった・・・。
あらすじの回収まで、もうすぐなのでよろしくお願いいたします。
良かったら↓評価☆やイイネ↓ポチってね!
✧‧˚\\\\٩(*´▽`*)۶////✧‧˚




