13 炸裂!大魔法!
「いい加減にしてって言ったのよ!!」
リヴィア姫が遂にキレた。
目の前で多くの人がいなくなり、信じていた家臣に裏切られ、訳の分からない物に、命を奪われなければならないという理不尽が、遂に爆発する。
「ヒッヒッヒッ……ヒ?」
フェアの笑い声が止まる。
ラリィの後ろにいたリヴィア姫は、ゆっくりとフェアに向かって歩き始める。その表情は分からない。
ラリィも「あ、ちょっ」っとリヴィア姫の行動に戸惑いつつ着いていくが、先程とは別の汗が吹き出る。
これは好都合だとばかりに魔法を放つジオラルとハイド。二人に向かって再びエンバーとヒョウジンが迫る。
「! ーーーー姫、、、さ、ま?」
リヴィア姫を庇おうと盾になるラリィであったが、守るべき対象がいなくなっている事に気が付く。「あ、あれ?」っと動揺するが、無慈悲にもエンバーとヒョウジンが迫ってくる。
ドカァァァアン……
リヴィア姫達が居た場所に命中し、大きな音と共に、砂埃が舞う。
「……は、はは、、、アヒャヒャヒャ、ビビらせおって、小娘が! 口程にも、、、」
っとフェアがリヴィア姫達のやられる様を見て笑い出すが、突然フェアの真横を勢い良く何かが吹っ飛んでいき、そのまま壁に衝突する。
視線だけそちらに向けると、そこには白目を向き、口から血反吐を吐きながら地面に倒れるジオラルがいた。
さらに別の方向でも壁に衝突する音が聞こえる。恐る恐る視線を向けると、今度は同じ様にハイドが倒れる。
何が起きたのか分からないフェア。
「ロス! あなたはどうする?」
声のする方を見るフェア。
バルド王に羽交い締めされていたはずのロスが、リヴィア姫の細く小さなで腕で胸ぐらを掴まれた状態で宙に浮いていた。
そんなバカな! と目を疑うフェア。
「姫様、申し訳ございません。私にはやはり、貴方様を殺す事など出来ません。」
ロスは目に涙を溜め、訴える。リヴィア姫は「……そぉ」っとその言葉を受け入れ、ロスを手から離す。
「い、一体何をした! 小娘ぇぇええ!」
優位に立っていたはずが、急に状況が変わり混乱するフェア。
「私……貴方を、、、絶対に許さない!」
後ろ姿のリヴィア姫の肩が怒りで震えているのがわかる。目の前で座り込んでいたロスとバルド王が、リヴィア姫の見たことの無い表情を見て震えあがる。
ただ一つ分かったことは、リヴィア姫を本気で怒らせたということだった。
「! ーーな、舐めおって、、、!?」
フェアが逆上し、何か言おうとしたら、見ていたはずのリヴィア姫が突然居なくなる。いや、正確には目の前にいる。
次の瞬間にフェアは左から強烈な衝撃を受け、壁まで吹き飛ぶ。
「ーーぐぱぁ!」
壁に衝突した事で意識が戻り、身体中に電撃が走るような痛みを感じる。
痛みにより身体の自由が効かないフェアは、そのまま地面に倒れこもうとするが、髪を掴まれ倒れる事が出来ない。
そのまま右に、左にと高速で景色が入れ替わる。息が出来ない程の怒涛の往復ビンタに、掴まれている髪も首もブチブチ、メキメキと生々しい音をフェアの脳内に刻んでいく。
一方、砂埃が舞う中からラリィがゲホゲホ言いながら現れる。なんとか直撃は避けたももの、衝撃は吸収し切れなかった様子だ。
「ひ、姫! ゲホッ、リヴィア姫様ぁあ!」
守るべき者の名を、むせながらも叫ぶ。無事であることを祈りながら。そして目にする、倒れているジオラルとはハイド、そしてバルド王に土下座しているロスの姿に、壁際でボコボコにされているフェアの姿を。
リヴィア姫のその壮絶なるビンタは、まさに絶技と言わんばかりの勢いだ。「あれ? 俺さっき格好良く命を懸けて守りますとか言ったのになぁ、あはは」と、ラリィが地面に膝を付く。
そして、ビンタをしているリヴィア姫は涙を流しながら訴える。
「返しなさい! 皆を返しなさいよ! ここに居た人々を返しなさぁぁぁいい!!」
叫ぶと同時にビンタの威力も増していく。既に周囲にはフェアのものであろう、血や歯などが散乱していた。
あまりの勢いに、呼吸すら許されないフェアが答えられないのは当たり前の事なのだが、リヴィア姫にはそんな事は関係ない。答えないフェアに対してさらに怒りをぶつける!
「何か言いなさいよ! こんのアンポンタンがぁぁああ!」
新たな魔法、アンポンタンが生まれた瞬間だった。拳に溜めた怒りを、相手の腹に突き刺す、超近距離パワー型のボディブローである。いや、魔法である。
「うぼぉほぉぉぉおう」
やっと呼吸出来るようになったというのに、肺を強制的に圧縮されている為、空気を吐き出せても、吸い込めない逆ダイ〇ンとなっていた。
「返して! 返してよォぉーーーー!」
霊長類最強限定超近距離パワー型大魔法アンポンタンが、消費MPゼロで放たれ続ける。
フェアのHPはゼロとなる。
ラリィが肩を痛めたのか、手で押さえつつ、バルド王の元に行く。そして、リヴィア姫の怒涛のボディブローを見ながら尋ねる。
「ひ、姫は一体どうされたのですか? ……あ、あんな力見たこともありません。」
「うむ、そりゃそうじゃ」
どこかのオー〇ド博士が言いそうな台詞を吐くバルド王。その力の秘密が、あのリヴィア姫の着ている衣装にある事を説明する。
「い、戦乙女の戦衣と天女の羽衣ですかっ!?」
「うむ、でなければ説明がつかん」
「わ、私は助かったと言うことですね」
ラリィが衝撃の事実に驚愕し、危機一発救われたロスが汗を大量にかく。
バルド王が説明している間も、リヴィア姫の手は止まらない。むしろ既に吐き出す内蔵すらないのでは? というフェアに、同情の念すら抱き始めるラリィ達であったが、状況が一変する。
ゴゴゴゴ...
地面が音を立てて揺れ始める。
これには流石のリヴィア姫も手を止める。すると遂に手が止まり、喋れるようになったフェア、勝ち誇ったように言い放つ。
「あーべずどだまが、ずいにびらじゃった」
何を言ってるか分からないので、顔面を地面に叩き付けて黙らせるリヴィア姫。そして視線を天井付近をずっとグルグルと渦巻いていた黒い何かに向ける。
何か良くないことが起こるのは間違いない。が今はただジッと見守るしかなかった。
そして急に地面の揺れが収まる。さらに渦の中心部から、黒い雫が落ちる。一滴二滴と落ち、やがてバケツを引っ繰り返したように黒い液体の柱となって地面と天井を繋げる。
それは何よりも黒く闇そのものが詰まった円柱となり、見る者を死の淵へと立たせる。
誰も息が出来ないでいる。呼吸を忘れてしまう程の恐怖が、目で見えるものとして目の前にあるのだから。
やがて漆黒の円柱の中から巨大な手が出てくる。
鋭い爪に禍々しい刃が手の甲から肩に向かって、曲線を描いている。
肩であろう場所には、立派な角が幾つも生えている。
手の次は身体が姿を現す。分厚い胸板の中心に真っ赤な血の水晶のようなものがハマっている。その水晶を中心に血管のように身体中を真っ赤な線が通っている。下半身は蛇のようになっていて、動きづらそうだがその鱗は黒光りしていて実に硬そうである。
背中には四枚二対のコウモリのような翼が大きく広がっている。
顔は騎士の兜のようで、バイザー部分の隙間が全て紅く光っている。
会場の天井いっぱいの大きさは、かなりの迫力があり、見上げても顔が見えない。
全員身体中が恐怖でガクガクと震える。リヴィア姫の隙をつき、逃げ出したフェアが回復魔法で身体を癒す。
「見たか、この御方こそ我らが真の支配者、ハーズェンド様である。生け贄の人数が足りなかったようだが、無事顕現出来たようだ。これで貴様らも終わりだ! ヒャーーーーハッハッハッ……」
終わりという言葉に、全員が覚悟する。それほど次元が違っていた。
「さぁ! ハーズェンド様! この者達を喰らい、リヴィア姫を消滅させるのですぅぅう!」
狂喜に打ち震えながら、叫び散らすフェアであったが、その巨大な手に首から下を掴まれる。
「! ーーーーっが、がはっ! ハーズェンド様? 一体何を! 私ではなくあっち、あちらの者達をお食べ下さい! ハーズェンド様、ハァァァズェンド様ァァーーーー……」
兜のバイザーらしきものが開き、その奥に幾億もの牙がある中へとフェアは放り込まれる。まさにそこは地獄そのものであった。
フェアがハーズェンドに掴まれた際に首に下げていたペンダントが転がり落ちる。それはリヴィア姫の目の前で止まる。
よく見るとペンダントは最初に見た時と同じく様に、十字架が閉じた状態だった。
咄嗟に拾い首にかけるリヴィア姫。ハーズェンドがフェアの悲鳴と共に咀嚼している間に、バルド王の元へ走り出す。
「父上!」
「リヴィア!」
親子で抱き合う。まだ生きているという実感を、ほんのわずかでも確かめ合う。
「! ーーそうだわ! これ、この神器とかいうのでまたあの化け物を封印出来ないかしら!」
「こ、これは、、、」
「? 父上?」
一縷の望みを懸けて、リヴィア姫はバルド王に尋ねる。しかし、その表情は重く暗い。バルド王だけではなく、ロスも目を背けて言いづらそうにしている。
「……あのハーズェンドなる者を封印するには、それ相応の代償が必要になる。あれ程の大悪魔……果たして命だけで足りるかどうか……」
「! ーーっでも! このままじゃこの国は終わりよ? いいえ、国だけではない! この世界の終わりなのよ!」
「わかっておる。わかっておるよリヴィアよ。……それでもワシはお前が一番大事なのだ。どうかわかっておくれ。」
必死に訴えるリヴィア姫であったが、バルド王は首を横に振り使う事を拒否する。その目は何処と無く優しい父親の目であった。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
少々中途半端ですが、長くなるので次回に持ち越しました。
次回もよろしくお願いいたします。
良かったら↓評価☆やイイネ↓ポチってね!
✧‧˚\\\\٩(*´▽`*)۶////✧‧˚




