フレッドの失敗と精霊の加護の行方
精霊の加護のもらう儀式、精霊式は五歳になった日に王子、王女が精霊に会いに行くというものだ。
五歳の誕生日の午前中は精霊に会い加護の証明となる鍵をもらいに、午後からは精霊からもらった鍵を国王とともに民に見せる。
滅多にお姿を拝見できない王族が見られ、そして精霊から加護を頂けた王子、王女というのは国の繁栄を意味するため、五歳の誕生日というのは国をあげて盛大に祝う。
もちろん、フレッドも王子として五歳の誕生日を迎える明日、精霊式を行う。
儀式なために適当に出来ることではないので、フレッドも一週間前から精霊式の手順を教えられ何度も練習をさせられていた。
精霊式自体は城の中で数人の立会人のもとでやるのでたいして大変なものでもないらしい。
「シャール、ここで精霊式をやるんだよ」
「ふーん、ここで」
精霊式の前日、城に遊びに来ていた俺はフレッドに引っ張られ精霊式の会場に連れてこられていた。
飾り付けられた会場は厳かな雰囲気を持って、精霊式が大切な儀式なのだと子供ながらに感じていた。
しかし、近づく人間がいないからって警備をしてないのはどうかと思うが。
フレッドは明日が楽しみなのかテンションが高く、しっかりと覚えた儀式の動きを俺の目の前でやってくれる。
陛下から借りているという精霊の世界に行くための鍵をフレッドが取り出し、両手で包むように持った瞬間、鍵が強い光を放った。
次の瞬間、それは扉の形を作り始めて光の扉はギィと音を立てて勝手に開いた。
「わっ、すごい。シャール!」
「いいのかよ、これ」
純粋に喜ぶフレッドと違い俺は喜ぶことはできなかった。
どう考えてもこれはまずい。明日、やるべき儀式のはずだから。
扉の向こう側はどうやら森のようで、この辺りでは見かけないほどの巨大な木々が生い茂っていた。
出現した扉には喜んだフレッドも中には入ろうとせず躊躇っていると、扉の向こうから声が聞こえた。
大人とも子供とも取れる、性別の分からない声。
「んー、子供?」
俺はフレッドを背に隠して声の聞こえた扉の先を見つめて警戒をする。
例え勝てない相手でもフレッドがいる限り逃げるわけにもいかない。
それがクレヴァン、王家を守護する一族だと周囲から教えられてきたわけで、俺は静かに声の主が姿を現わすのを待った。
「王子なんだぁ」
声は舌ったらずの子供の声になって、扉の向こう側に光をまとった子供が姿を現わして、こちらをニコニコ見ていた。
「精霊……」
「そ、だよ。おいで、二人とも」
手招きして精霊は森の奥に行ってしまう。
俺たちは顔を見合わせると、精霊に後を追うために扉をくぐった。
森の中を少し歩くとひらけた場所があり、中央には大きな切り株があり、その周りには椅子になりそうな丸太が転がっている。
その近くには、精霊の宝ものなのかガラクタのようなものが山積みされていた。
精霊は驚く俺たちを見て、クスクスと笑う。
教えてもないのに精霊式を前に扉を開けてしまったことを分かっているらしい。
「フレッドはせっかちなんだぁ」
「あぅ……」
フレッドは恥ずかしさに顔を真っ赤に染めながら今にも泣きそうな顔をする。
「明日はフレッドの鍵で会いに来て」
「……うん」
そんなフレッドに精霊は優しく声をかけて、どこから取り出したのか一本の鍵をフレッドに握らせる。
そして、俺の前に来ると手を握ってそこに光がふわりと集まる。
「シャールには加護をあげる」
「それもフレッドに――」
「いいの。これで」
慌てる俺に精霊は有無を言わせない笑みを浮かべて、俺の方が必要だからと加護を渡された。
それから俺たちは両親たちの仕事が終わるまで精霊と遊んでいた。
フレッドが精霊の世界に行く扉を開けたことを知った陛下に、勝手に会場に行ったことについては叱られた。
陛下や父上たちは無事にフレッドが鍵をもらったことに安堵し、俺が精霊の加護を渡されたことに動揺をして表情がクルクルと変わって百面相をしていたのだった。
シャールはわりとフレッドに振り回されてますね。




