ポンコツが知られない理由
俺は大きくため息をついた。
昼休み、エメリたちと昼食を食べていたところに、ルディがどこかいら立った様子で遅れてきた。
手にはサンドイッチの乗ったトレイを持っている。
ルディはいつも、俺から離れないのでエメリたちもそのまま一緒に食べる。弟妹の感じがしてみんな緊張はしないらしい。
むしろ、実の弟妹より可愛がっている気すらする。
「シャーロット様、召し上がってからで構わないので、お時間よろしいですか」
「ええ」
言葉も動作も丁寧なのに、どこかトゲのようなものが隠しきれてない。
基本的にほとんどのものに興味のないルディがこういう態度をとる相手は1人しかいない。
ルディが自分で対処出来ないと感じて俺を呼んだんだな。
いつもより少しだけ急いで昼食を食べると、ルディの案内の下個室のサロンにたどり着く。
部屋に入ればやっぱり王子。
「すぐに連れてくるっていったじゃないか、ルディ」
困った顔で王子が言えば、ルディはしれっと表面上謝るだけだ。
「申し訳ございません。ですが、シャール様のお食事を妨げるわけには参りませんので」
「相変わらずだね、ルディは。シャール、これを直してもらいたいのだけど」
ルディは放置して、渡されたのは王家のお印のペンダント。
正確には王家と精霊が繋がっていると示すもので、精霊の加護が国にあると知らしめるものだ。
チェーンが壊れている。それと、よく見ると王子の袖口のボタンが取れかかっている。
「どうしたらこうなるんだよ」
この部屋はプライバシーが保護されてるから、シャールとして喋る。
「いや、その、ポケットからはみ出してたみたいで、ボタンに引っかかって外そうとしたらこう、パキッて」
普段はつけていないが、肌身離さず持っているものだ。大切なペンダントを……こいつは適当にポケットに突っ込んだのか。
呆れていると能天気な声が降ってくる。
「ボタンに引っかかったのを気づいたのジョルジュでね。ちょうど、移動教室の帰りだったみたいなんだ」
ほんっと、助けのタイミングだけは絶妙にいいな。しかも、余計なことは言わないし喋らない、ポンコツなことを知ってるやつで。
昔からそうなんだよな、こいつは。
たぶん、ジョルジュ以外は気づいてないだろうな。
「へぇ、何か言われなかったか」
「あぁ、うん。学校に直せる方はいないでしょうねって」
「見事に釘を刺されてますね」
直接俺を呼ぶなって遠回しに言われて、ルディに頼んだのか。
察しはいいな。
ペンダントは応急処置をして、袖口のボタンを縫っておく。
クレヴァン家だから、大抵は出来る。
それを知ってる王子は誰にも知られたくない時と急ぎのときは俺を頼る。
バレるときもあるが、大抵の場合助けがはいる。
失態を知っても、落胆も驚きもせずにさりげなく手を貸してくれるような人が。
だから、王子は素晴らしい人だと世間でも貴族間でも噂される。
本人もそれに答えようとするからこそ、助けがはいるんだけどな。
昔、精霊が話してくれたのはこういうことなんだろうな。
なんだかんだジョルジュも付き合いが長いので王子のやりそうなことを理解して、さりげなくフォローはします。
シャールやルディがいない時は注意をしているようです。




