ハリエット再び
入学直後から騒いでいた自称か弱いご令嬢ことハリエットは、王子の従者の手により王子には近づくことができず、大人しくなったので諦めたのだと誰もが思っていた。
季節が冬に近づき始めた頃。
ハリエットは再びやってきた。
警備の薄くなる放課後、馬車待ちの時にそっとハリエットは王子の下にやってきた。
馬車を呼びに行った従者は王子のそばを離れ、そこに備え付けられたベンチに王子は座って馬車を待っている。
俺は二人から距離を置き、様子を窺う。横にはつまらなそうな表情のルディ。
「全く、従者どものせいでシャール様のご負担が」
とか、ぶつくさと言っている。
従者としてもいきなり任された仕事に戸惑いがあるんだろ、まだまだ見習いとして頑張ってる途中だし。
わりと安全な学校に安心してるようじゃまだまだ見習いのままで、だから俺もこんなことやってるんだけど。上司(父と陛下)の命令なので仕方ない。
従者見習いはあくまで見習いなので、足りないところは影でサポートをするようにと命令として指示が入っている。
「フレッド様、やっとお会いできましたわ」
頰をほんのり赤く染めたハリエットはそう言って、王子のそばに座る。
「いつもいつも邪魔が入るんですもの。私とフレッド様は赤い糸で結ばれてるというのに」
「そ、それは違うと」
距離を詰めるハリエットと引きつり気味に気味と取ろうする王子。
「あれくらい対処してもらわないと困りますね。王子も従者も。今回は一人でも気づければ及第点としておきます」
興味はなさそうなルディは淡々という。
気付ければ及第点、ね。実践としてならそれもそうか。
風が吹いて、微かに甘い匂いがする。
媚薬だ、これは大して効果の望めないやつだけど、速効性だから厄介なものだ。
王子に効果は薄いだろうし、気づきさえすれば対処しようはある。
ただ、問題は従者だ。
耐性訓練はしてないだろうし、そもそも知識があるかどうか。
戻ってきた従者は顔をわずかにしかめて、王子に近づく。
迎えがきたのでと王子は去ろうとするが、ハリエットは王子の腕を掴んだまま、従者に妖艶な笑みを浮かべる。
「フレッド様との話をジャマしないで。下がりなさい」
静かに言いなりになる従者。
さすがにおかしいと感じた王子は、辺りを見回すが、原因までは気づけてない。
「まあ、今回は良しとします」
ルディが呆れたみたいにつぶやく。
「ですが、次は見放してもいいのでは?シャール様が必ずいるわけでありませんし」
「それはちょっと……。賢王になる可能性もあるから」
「目を逸らしては説得力がないです」
賢王は言い過ぎた。あいつは平和な時代でこそ才能を活かせる感じっぽいし。
「ルディ」
「はい、こちらですね」
ルディを呼べば、小さな球を渡してくれる。
王子と従者、3つ渡されたのでハリエットにも投げてぶつける。
王子には不敬罪になるんじゃないかは問題なし。クレヴァン家の人間がやることに苦言はあっても咎められることはない。
従者についても問題はないし、ハリエットもまあ、媚薬の効果を切るためってことで。
痛みに顔をしかめる三人。
我に返った従者がさっそくハリエットを王子からひっぺがす。
近くに転がった球を拾い、王子は呟いた。
「認めてもらうにはまだまだ未熟者か」
残されたハリエットの言葉遣いが乱暴になる。
「なによ。あいつに言われたようにしたってのに、効果ないじゃないのよ」
ハリエットはポケットから小瓶を取り出すと、ゴミ箱に投げ捨て怒ったように帰った。
ゴミ箱に捨てられた小瓶をハンカチに包み、カバンにしまう。
これは報告するにして、ハリエットの周辺を調べる必要がありそうだな。
シャールも王子も毒に耐性はつけさせられています。ルディは知識と対処法のみで耐性はないです。




