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サイド:シャールの自由時間

 剣術指導に参加したくてたまらない三年生が時間を作って、最終日にやってきた。

 この日だけは教師陣も生徒の熱意に負けて、授業を早く切り上げるらしい。授業にならないとため息をついて。


 ボリス師匠(せんせい)は騎士を目指す人間にとっては尊敬する、いや、雲の上の人だからな。そんな人に直接指導を受けれるわけだから、集まるのは仕方がない。


 ジョルジュなんかは指導を受けにきたというより、指導をしにきたようだ。

 有望そうなのを探すんだって。


 手持ち無沙汰になった俺にボリス師匠は学校を見学させてもらうといいと自由時間をくれる。学校からも許可はもらってるそうだ。


 ボリス師匠は俺が女装して通ってるなんて知らないし、鍛練ばかりの俺に気を使ってくれたんだろう。学校なんて通うはずもなかったから。


 せっかくなのでシャール姿で見て回る。


 一年半近く通ってると珍しさはないけどな。


 校庭近くに植えられた木に登って、どこに行こうか考えているとイザベラが歩いているので声をかけるためイザベラの前で枝に逆さにぶら下がる。


 気づいたイザベラがすごくと驚いている。悪いことしたな。


「――おどろ、かせないでくださいませ。城内と違って心構えができておりませんの――ってシャールさんがなぜこちらに?」

「剣術指導の講師。師匠(せんせい)の命令で」

「そうでしたの。今は休憩なのかしら」

「三年生が乱入して暇になったから、学校でも見学してこいって」


 イザベラが納得して、せっかくなので王子に会いに行ってはどうかと提案して、教室の場所を教えてくれたので行くことにする。

 バレてなさそうで一安心。


 次の休み時間に王子のもとに向かう途中でルディに見つかる。

 まあ、休み時間ごとにきてたし、ルディいわく()()()()()()()()()があるのですぐに見つけられるらしいが。


 ふくれたルディをつれて王子に会いに行く。


「シャール?僕は午後からだけど」

「三年生がいるし、学校見学でもしてこいってさ」

「ああ、毎年恒例みたいだよ。とくにボリス騎士になってからは」

「そっか」


 無言で王子に睨み続けるルディ。

 相変わらず王子は嫌いらしい。一応、ルディは宰相になる予定だし、仲良くしてもらいたいんだけど。難しい話かもな。


 そろそろ次の授業が始まるとルディが自分の教室に戻っていく。


 俺も邪魔にならないような場所に移動しようとして知り合い(教師)に捕まる。


「シャールちゃん、今ヒマなんでしょう。授業、出席してみる気はない?」

「……マノン先生」


 外国語の教師で、子供の頃の家庭教師の一人だった人だ。今は選択授業でシャーロットとして授業を受けている。


 で、この人は相手が誰であれ使えるものは使うがポリシーでさっきの台詞、正しくは『私の授業の手伝いをしてくれるよね』である。


「いいですけど、邪魔になりませんか?」

「そう、ありがとう。シャールちゃんはいつもテスト満点だもの大丈夫よ。忘れてなくて先生はとっても嬉しいわ」


 ん?現在進行形?

 この人は、あー、まあ、おかしくはないか。父上とも気が合うし。(人をからかうという点で)


 もしかしてと声を発しようとして、止められる。

 マノン先生はクスリと笑みを浮かべて、悔しそうな顔をする。


「昔はもっと鈍かったのに。生徒の成長を喜ぶべきか、からかい甲斐がないのを悲しむべきか悩むわね」

「そこは成長を喜んでください」

「まあいいわ、授業に行くわよ!」


 ついたのは三年生の教室で、選択授業のため人数はかなり少ない。

 この辺りの国は、一つの言語で統一されてるから学ぶ必要性をあまり感じないのだろう。


 今日は授業中、母国語は禁止で全て外国語で話すこと。それなら、できるな。


 マノン先生の手伝いも終わり、王子とルディに誘われ一緒に昼食を取る。


 午後からはボリス師匠の手伝いに戻り、初日の話を聞いた三年生に挑まれたので剣を打ち合う。

 一度でも負ければボリス師匠の特訓が待つから、回避するためにも全力でいかしてもらった。


 シャールとして通っていれば、こんな感じだったのかなとか思いつつ帰路についた。


シャールとして通っていたら王子の世話や、マノン先生とかに使われる日々で学校生活は満喫できない恐れがありました。

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