王子の付き添い
夏休みに入り、シャーロット宛に来た招待状は仕事上顔を出して、それ以外はほぼ鍛練に費やす。
そんなある日、王子から呼び出しをくらう。
「町に出かけたいから、付き添いを頼みたい」
なんでも、学校に通っているうちに話だけでなく実際に民が暮らしている様子を知りたくなったとか。
馬車越しの景色じゃなく、同じよう目線で見たいからお忍びで。
陛下に伝えたところ、隣に実力のある護衛がつくならと許可を出そうと言われたらしい。
まあ、陛下は悪友だけ引き連れて城を抜け出し、城下に遊びに行ってたみたいだから止めはしないんだな。
バレるとその度雷を落とされたと父上が震えながら言っていた。
陛下が認めそうな実力のある護衛となれば王子より年上ばかりで、一緒に歩けば兄弟か親子に見えるだろう。
それはそれでいいと思うが、たぶん、ぎこちなくなる。あの人たちは真面目な忠義を持つからな。クレヴァン家と違う。
考えた結果、俺に声をかけたと。
「いいけど、氷飴を二瓶な。大瓶の」
「意外と高いのに」
町にも普通に流通はしてるし、庶民の子供の小遣いでも買えるが、透明なものは高い。貴族用だな。味はほぼ変わらないが。
王子個人の頼みごとの報酬に毎回これにしてる。
「いつも思うけど、シャールが全部食べるわけじゃないよね?」
「精霊が好きだからな。会いに行く時の手土産」
「なるほどね……」
精霊が関わっていると知ると王子は自分を責める表情をする。巻き込んだ負い目があるからだ。
「もう一本はルディにだ。あいつら同じようにしねぇとケンカすんだよ。ホント、兄弟みたいなんだよな」
困ったというより、呆れたふうにいえば王子は笑った。
翌日、町に溶け込めるの服に着替えて町を出る。
俺は髪色が目立つので帽子を被り、王子は眼鏡をかける。王子の失敗の可能性を考えて、少々いいとこのお坊っちゃんくらい見えるようにしてある。
きっちり身分を隠し通せるとは初めから思ってない。
ちなみに名前はそのままだ。同じ名前も多いから問題ないはずだ。
町の外れで馬車を降りて町の中に入る。私服の護衛がちらほらとついてくる。
王子の希望を聞きながら、町を散策する。
一休みするためにカフェに入る。天気はいいので外のテラスに座る。
町行く人を眺めているとエメリを見つける。
王子も気がついたらしい。
「彼女は去年同じクラスの」
「エメリ•マチュー。男爵令嬢」
ルディと同じ年くらいの少年と少女と一緒に喋りながら歩いていて、その顔は穏やかでしっかり者のお姉さんらしい。
「学校でみるより随分と穏やかそうだ」
「そりゃそうだろ。学校で何かあってみろ、どっちが悪いかなんて関係ない、責められるのは身分の低い方だ」
「認めたくはないけど、そう、だよね」
王子の顔がどうしようもないことだとでも言いたげに沈む。
別にそんなことはないんだけどな。不敬を働いても許される家もあるわけだし。
「けど、上に立つ人間の対処次第では、救えることもあるんじゃねぇか」
「うん、そうだね」
一休みを終えた俺たちは陽が沈むまで町を見て回った。
馬車に戻る途中、ハリエットらしき人物が伯爵家の令息と腕を組んでいるのを見かけたが、王子は気づいていなかった。
ハリエットはあれでいて、異性からはモテる。同性から嫌われてるけど、本人はくだらない嫉妬にしか思ってないようだ。
本心なのか虚勢なのかはわからないが、面倒な相手なのは変わらない。
護衛たちは自主的についてきました。ちゃんと手の空いてる人たちです。
クレヴァン家であるシャールが戦うところがみたいと思っているよう。




