9・根性!
【ドスウウゥゥゥゥン】
[ズボッ]
何?身体がズレた?俺今どうなってんの?
何なの今のは?俺の身体どうなったの?
あれ、風?風が頬に当たった?
って眩しい!目が開けられない!
「奥様あぁぁっ!」
なんだ?外なのか?
お母さんはどうなったの?
俺は今どうなってんだよ!
「赤ん坊?生きてる?奥様!」
駄目だ。目が開けられない!
なんか外っぽいけど状況が掴めない!
手は動く。とりあえず手探りしかないか!
「生きてる!奥様、私が!」
俺って外出てもなにも出来ないじゃんか。
んっ。これ足、太ももか!
ちくしよー、これお母さんの脚だろ。なんで動かねぇんだよ。
「赤ん坊は私が助けます」
「奥様の子供は私が、このポタミアが取り上げるんだ!」
あれっ、俺の下半身ってまだ出てない?
俺まだ生まれてないじゃんか!
この状況ってあれか?お母さんが踏みつけられて、その圧力で俺が半分押し出されたって事?
なんだそれ?そんな事あり得るのか?
「ガアアァァァッ!」
あ〜、ガーゴイル五月蝿ぇよ。
兎に角早く出ないと。
んっ?あれ?俺掴まれた?何に?
「奥様!お子様は私が必ず」
これおばちゃん?おばちゃんの手か!
おばちゃん。ヤバイって!ガーゴイルの声近いから!
ズルルッ
脚出てきた!
でもおばちゃん、逃げないと駄目だって!
ズルッ
足まで全部出た!やっと生まれた!
それよりおばちゃん!早く逃げて!
抱きしめてくれなくていいから!
「必ず私が助けますから!」
「ゴアアァァァッ」
ドガッ!
うわぁっ!何だ?吹っ飛ばされた?
おばちゃん!
よかった。おばちゃんはまだ俺を抱きしめてる。
早く逃げないと。おばちゃん!
「お母ちゃあぁん」
「ダメっ!ダメだよメソちゃん。今出て行ったら」
おばちゃん!早く!おばちゃん!
おばちゃん?
「マリちゃぁん。お母ちゃんがぁ」
「メソちゃん落ちついて!」
おばちゃん。なんで動かないんだよ。
動いてよおばちゃん。
ちくしよー、動けってんだよぉ!
「メソちゃんはここにいて。私、あの子助けてくる」
「ダメだよマリちゃん。死んじゃうよ」
「私の弟か妹だもん、私が助けないと」
おい。おいおい嘘だろ!何言ってんだよ!
お姉ちゃんここに来る気か?
駄目だって!早く逃げろって!
くそっ!まだ目、開かないのかよ!
「私が助けるんだもん!」
俺が立って声のする方に行けば!
駄目だ。立てない。
アクラの野郎、産まれて直ぐ歩けるって言っただろうが。いい加減な事、言いやがって。
くそっ。小さな手に掴まれた。
早く置いて逃げてくれって!
「お姉ちゃんが助けてあげるからね」
助けなくていいから。
俺が死んでもこの状況なら多分また転生させてもらえるから。だから置いて逃げてよ。
あぁ。くそ。抱きかかえられた。
「ガアアァァァッ」
「マリちゃん。早くこっちに」
「メソちゃん先に逃げて!」
「いやだっ。マリちゃんといっしょじゃなきゃやだ!」
ああっ。トテトテ走ってる。
赤ん坊ったって2・3キロあんだぞ。
おばちゃんの娘もまだ近くにいんのか。
二人共、俺置いて早く逃げてよ〜。
「ゴガアァァ、ガアアァァァン」
「マリちゃん早く早く」
「メソちゃん。この森の中に逃げよう」
「うん」
良かった合流出来たみたいだ。
じゃあ早く逃げて。
俺は置いてっていいから。
「ゴガアァァァァァンッ」
「追いかけてくるよ〜マリちゃん」
「メソちゃん手を離して!先に行って!」
「やだっ!いっしょに行くの!」
「ガアアァァァッ」
だから、俺は置いて行けって!
ズガンッ!
うわぁっ!
また飛ばされた。
ゴロロロラッ
転がってる?地面?
ドタン!
止まった。
「ゴガアァァァァァ」
二人は?
二人はどうなった?
「ガアアァァァッ」
二人の声が聞こえない・・・。
嘘だろ?
おいっ!どこだ?どこにいった?
ドンッ!
「ぐぎぁっ!」
いってぇ!
踏まれた?ガーゴイルに?
「ゴガアァァァァァン」
上のゴツゴツしてんのがガーゴイルの足か?
重てえなあ、くそ。
「ガアァ、ゴガアァァン」
うるせえなぁ、おい!
おい!この野郎!
お前か!
お前が俺の家族もおばちゃんの家族もやったのか!
え〜おい!
てめぇがやったのかって言ってんだよ!
ガシッ!
何だこれ?爪?足の指って事かこの野郎!
くそぉ。手が短過ぎんだよこらっ!
ググッ!グググググッ!
「ゴガアァァァァァン」
うるせぇって言ってんだろが!
俺はなあ。前世でも色々逆境に合ってんだよこの野郎!
それを全部乗り越えてきたんだよ!
根性には自信あるんだ!
グググググググググググッ!
舐めんじゃねぇよ、この野郎がああぁぁぁ!
グワアアアッ・・・スドガァアァァン・・・ドン
ゴロッゴロロロロン・ドバカアァンッ!
どうだあこの野郎!
ぶん投げてやったぞぉおら〜!
くそっ、勢い余って俺も吹っ飛んじまってんな。
ドンッ
いてっ。落ちた。
ゴロロロロロンッ
いててててっ。凄え勢いで転がってる。
フヨンッ
あれっ?なんか柔らかい物に頭が当たって止まった。
なんだろこれ?
まあもうなんでもいいや。動けねえし。体に全然力入んねえや。
「グギャ、グギャアッ」
ガーゴイルの鳴き声が遠くなってく。
さすがに生まれたばっかの赤ん坊じゃ倒せねぇか。ちくしょう。
頭がなんかヌメヌメする。
血だろうな。
ガーゴイルを投げた時に、頭に爪の先が当たったかな?
切れてんのか割れてんのかわかんないけど結構出血してんな、これ。
駄目だ。意識が遠のいてく。
頭の下のふよふよしてんの、なんか気持ちいいな。
ほんとなんだろこれ?
やっと少し眩しいのに慣れてきた。
と思ったら暗くなってきたよ。意味ねぇ〜。
まあいいや。どうせ何も見えないし。
また死ぬのかな、俺?
また転生?まあ今はどうでもいいや。
そろそろ意識が保てない・・・
生後1時間?いや分かな・・・
最短記録だな、ちきしょうめ・・・
やっと転生出来たのにねぇ