79・呼ばれて飛び出て
ベダムの王城は片付いた。
ベダム王国の残りの攻撃目標はギリス教プロステート派のベダム教会。特にルタ提督の身柄の確保だ。
『ポンキチ、ラスリル、ルタ提督はいたか?』
『見当たんないっすね、どっかに隠れてんじゃないっすかね?』
『私も見てないよ、ナスカお兄ちゃん』
『そうか、引き続きルタ提督を最優先で捜索してくれ』
『『了解』っす』
ギリス教ベダム教会の制圧はほぼ完了した。しかし、ベダム教会の上層部の人間の一部が未だに捕まっていない。とりわけルタ提督は、逃がすと後々に厄介な事になる気がする。
なんとしても捕まえないと。
『ロロ、王城の方はどう?』
『はい、制圧は全て完了しました。王族や国の重要人物の確保も終わっています』
『ご苦労様。ロロはそのまま王城で人心の安定化を図ってくれ。それと、部隊の一部をこっちに送ってくれ、ベダム教会上層部がまだ確保出来てないんだ』
『わかりました、直ぐに送ります』
この教会の地下が、これ程までに入り組んだ迷路になっているとは思わなかった。奴らを見つけるには、人員を増やして人海戦術しかないかな。
「ナス兄様、教会ではありませんが、外れの港から船が一艘出ました。あれが怪しいと思います」
「ん、どれだ?」
「あれです、あの高速艇です」
ルルが指し示す方向を見ると、確かに一艘の小型高速艇が出港したところだった。針路的に、目指しているのは東の大陸か?
「自分が行って確かめてきましょうか?」
「いや、俺が行く。ルルは此処の指揮を執ってくれ」
「了解しました。お気をつけて」
俺は高速艇を見つめ《魔素感知》で中の状況を確認する。乗船しているのは人間が6人だ。
その内の一人の影に目標を定めて、俺は自分の影に飛び込む。《影移動》で移動した先に目的の人物を見つけた。
「やあ、お久しぶりですルタ提督」
突然現れた俺の姿に、ルタ提督は一瞬、驚愕の表情を浮かべるが、直ぐに眉を顰めて俺のことを睨み付けてきた。
「突然、俺の教会を襲っておいて、久しぶりとはご挨拶だな。貴様の国が野蛮な魔国だと自ら認めた様なものだぞ、ナスカ国王」
「お話は後程伺いますので、先ずは船を港に戻して頂けませんかね」
「貴様と話し合う事などこちらには無い。邪悪な魔物め!」
「聖なる光よ、我が刃となり・・・」
ルタ提督の前に、白銀の鎧を纏った二人の聖騎士が立ちはだかった。一人は聖銀の含まれた銀製の剣を抜き、一人は詠唱を始める。
俺に向かって詠唱など、間に合うはずがないだろうに。
トトン、ドザザン
「出来れば手荒な事はしたくないのですけどね」
俺は移動しながら、二人の聖騎士の首筋に当て身を入れて昏倒させ、ルタ提督の眼前から話しかけた。
ルタ提督には俺の移動は認識出来なかったのだろう、眼前に突然現れた俺の姿に腰を抜かせてへたり込み、後ろへと後ずさる。
「お、俺は聖職者だ! ま、魔物なんぞに屈する事などないぞ!」
「貴方が裏で色々とやっていた事はわかっているんですよ。今回、ラース王国を唆していたのも貴方だ。それとね、俺は一応人間なんですけどね」
俺は一歩近づく。
「貴方はもう終わってるんですよ」
更にもう一歩。
「悪いけどさ、そいつは僕が助けるって決めたから、君は引いてくれない?」
し、死ぬ?
スザザザッ
突然降り注いだ凄まじい殺気に、俺は船の最後尾まで後退り、声のした方向を見上げた。
人が、人が二人宙に浮いてる?
「僕達はそいつらを引き取りにきたんだ。大人しく渡してくれると助かるかな」
「コイツがどういう人間か、知ってて言ってるんですか?」
「う〜ん、欲の深い人だとは聞いてるんだけどね、一応プロステート派を名乗ってるみたいだから助けてあげようかと思って」
「実はね、プロステート派って僕の為に生まれたようなもんなんだ」
「俺はコイツを信用できない。殺すつもりはないけど、野放しにも出来ない。だから貴女達に渡す事も出来ない」
「それじゃあ、力ずくって事になるかな」
二人の人間はずっと宙に浮いたままだ。羽があるわけじゃないし、人間にしか見えない。
人間って空飛べないよな!
「貴女達は一体?」
「ああ、ごめんごめん、自己紹介がまだだったね。僕はメテス。大魔王って言われてるけど、一応今でも人間だよ」
「こっちはウォルナット。人間に見えるけどドライアド なんだ。霊獣だよ。まあ僕のお姉ちゃんみたいなもんなんだけどね」
メテス! エウデ様の言っていた【反逆の勇者】四大魔王のメテスか!
身長は小さい、150センチもないんじゃないかと思う。何百年も前に大魔王になった筈だけど、見た目の年齢では16歳くらいにしか見えない。
深緑色髪の毛はまるで男の子のようなショートカット、いや、ベリーショートとでもいうのかな。
瞳の色は瑠璃色、ラピスラズリそのものという感じだ。その目はクリッとして大きく、薄いが燃えるように赤い唇と相まって可愛いらしい顔付きをしている。
髪の毛と同じような深緑の軽鎧を身に纏い、下は何故かミニスカート姿。
全体的に可愛いらしい女の子だが、内に秘めた闘気の量が半端ではない。
腰に短刀を差しているが、ガントレットの形状から見ておそらくは俺と同じ格闘タイプだろう。
その横に浮かぶもう一人の女性、ウォルナットというらしい。霊獣ドライアドらしいが、人間の女性として見ると長身だ、178センチくらいかな。
髪の色はメテスと同じ深緑だが、対象的な長髪で地面に立ったら下まで着きそうな程だ。瞳の色は翡翠色。
メテスが可愛い系なら、ウォルナットは完全な美人系。
髪色以外は何から何までメテスと対象的な感じだ。
「僕が名乗ったんだから、そっちの名前も聞かせて欲しいかな」
「ああ、ごめん。俺はナスカ。アスリ獣国って国の国王をやってる」
「そっちの狼くんは?」
フッ
俺の隣にルルが《影移動》してくる。
俺とは《魂の協和》で繋がってるから勿論移動している事に気付いてたけど、メテスはよく気づけたな。
『自分の名はルル。ナス兄様の護衛だ』
「ルルくんだね、よろしく。それでどうする? やっぱり僕に渡す気にはならない?」
「そうだな、やはりルタ提督は俺の管理下に置きたいと思う」
「そっか、まあ君達も強そうだから大丈夫かな」
フッ
な、なんだ? 消えた?
ゾクッ
や、ヤバイ
ドゴオオン
消えたと思ったメテスが、突然隣に現れて、右脚で腹を蹴られた。ギリギリで軌道上に右腕をねじ込みガードしたが、ガードした腕が痺れている。
「あは、凄いね。初見で僕の《瞬間移動》について来れるんだ!」
何だよ《瞬間移動》って。
俺の持ってるスキルでこの《瞬間移動》についていけるものはない。反応速度と反射神経で対処するしかないのかよ。
本気でヤバイかもな、大魔王メテス。
久々の主人公登場と大魔王の初登場は如何だったでしょうか。
次回案が2通りありまして、どっちにするかまだ迷っております。
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連載中[能力はチートだけど・・・]
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
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