7・あれ?まだなの?
そんなこんなで転生編です。
章分けしてませんが、章的にはまだ1章ですけどね。
【ヴァックン!ヴァックン!】
なんだ?なんだか五月蝿ぇなあ。
【ヴァックン!ヴァックン!】
だから、五月蝿いって!
頭が割れるような爆音で、俺の意識は戻ってきた。爆音は途切れる事なく鳴り続けている。
暗いなあ。目は開くけど、開けていても真っ暗だな。
【ヴァックン!ヴァックン!】
なんか狭いな、ここ。
それに暑い。こっちの世界の季節って、今は夏なのか?
それとも暑い地方にでも生まれたかな?
身体も汗だくになってるみたいでベタベタだ。
爆音は相変わらず五月蝿いし。工事でもやってんのかな?
一定のリズムでヴァックンヴァックン五月蝿いんだよ。
【ヴァックン!ヴァックン!】
んっ。ちょっと待てよ?
【ヴァックン!ヴァックン!】
一定のリズムって、一定過ぎないか?規則正しくヴァックンヴァックン。
【ヴァックン!ヴァックン!】
赤ん坊って目が見えなくて、開ければ光くらいは感じるよな?
【ヴァックン!ヴァックン!】
おい。ちょっと待てよ!
【ヴァックン!ヴァックン!】
おいおいおい!ちょっと待てって!
【ヴァックン!ヴァックン!】
ここって、母親の腹の中か?
【ヴァックン!ヴァックン!】
マジで?
【ヴァックン!ヴァックン!】
こっからかよおぉぉぉ〜〜!
☆
何日くらいたったのかな?
母ちゃんの爆音(心音)にも、羊水のベタベタにも流石に慣れたな。
初めは暑かった体温も慣れれば丁度良い感じに眠気を誘ってくれる。
しかし俺っていつ産まれるんだろう?
手足も揃ってるし、身体の大きさも丁度良い気がする。
もう産まれても大丈夫なんじゃね!
ずっと身体が丸まってても腰痛くならねえのは助かるけどね。ただ、手足は伸ばしてぇな。
お腹蹴ったら母ちゃん痛いだろうから我慢するけど。
おお!俺って産まれる前から親孝行じゃん。
産まれたいのは山々なんだけど、今産まれるには一つだけ問題あるんだよな。
外の状況がなあ・・・・・。
慣れてくれば、お腹の中にいても外の音も意外と聞き分ける事が出来る。
父親と姉がたまに話しかけてくるし。
ここ数日は外の状況に気を配っていた。まあ、暇だったし。
その結果把握出来たのだが、この家族は今、馬車に揺られている。しかも何日も。
つまりこの家族は、今、旅行中である。
妊婦さん連れて旅行すんなよ〜。
まあ、今度の両親は旅商人みたいなんだけどね。
だからって産気づいたらどうすんの?
こんな馬車の中で出産とか出来んの?大丈夫なの?
使用人と思しき声のでかいおばちゃんが、俺の姉も取り上げたって何度も自慢してたから、経験はあるんだろうけどさ。
本当に大丈夫なんかっての!
俺の確認出来た状況をまとめると。この馬車の一団は7人。
両親と姉。
ちょっと年のいった使用人夫婦と、その夫婦が年いってから出来た愛娘。
そして御者さんの計7人
更に後ろにもう一台荷馬車がいて、そこにも御者さんとその助手の2人がいる。
安全な街道らしく、ハンターの類は雇っていないみたい。妊婦さん連れて旅するくらいだから、本当に安全な道なのだろう。
さてさて俺はどうすっかね〜。本当にもう産まれちゃおっかな〜。
胎児小説って今までにあったのかな?
もしかして史上初?
結局、まだ転生出来ませんでしたとさ。