30・竜は速いのだ
残りの薬剤は全て集まったのだ。
我の帰りを楽しみに待ってるが良いぞナスカよ。
「では、行ってくるのだ」
「タツキ、くれぐれも街から見える所では」
「わかっておる」
「先ずは《影移動》でブラックフォックスの集落まで行く。ドラゴンになるのはその後なのだ」
マリはナスカと同じで何かと五月蝿いのだ。
ナスカは仕切り屋だが、マリは心配性なのだ。
もう少し我を信頼してくれて良いと思うのだがなあ。
「タツキさんも今度はゆっくり来て下さいまし」
「おう。また来る」
「ミドリは勉強とやらをがんばるのだぞ」
「まあ、ファスルトですぐに会うかもしれぬがな」
ミドリは他の者は呼び捨てだが、我にはさんを付けて呼ぶ。なかなかわかっている奴なのだ。
「タツキちゃん気を付けてね〜」
「うむ。メソも気を付けるのだぞ」
メソは素直で可愛いい奴なのだ。
一緒にいるとほっとするのだ。
「では行ってくる。村の事は任せるのだ」
我は自分の陰に潜り、認識出来る一番遠い影まで飛ぶ。それを数回繰り返しブラックフォックスの棲家を目指すのだ。
《影移動》は自分の認識出来る範囲内の影から影に移動出来るスキルなのだが、長距離の移動では繰り返さねばならぬので面倒なのだ。
なぜ我程の者が《亜空間移動》を使えぬのか理解できぬ。《亜空間移動》は《影移動》の上位互換にあたるのでナスカの奴が両方とも使えるというのも納得出来ぬのだ。
まあ我の場合は移動など、竜の姿で飛んでいってしまえば良いのだ。
《亜空間移動》は《影移動》に比べると格段に疲れるらしく、休まないと連続して使えぬらしい。
ナスカはまだブルジ山まで一度では飛べぬと言っていた。
やっぱり我の方が凄いのだ。
☆
「そういう訳でな、カンプ、アレティー。今回は誰も帰りに此処には寄れぬのだ」
我は今、ナスカの頼みでブラックフォックスの集落に別れの挨拶に来ているのだ。
ナスカの奴め、我に言伝を頼むなどと偉そうなのだ。
「残念ですが、そういう事情ならば仕方ないですね」
「お土産を用意していますのでお待ち頂けますか?」
「おお。すまぬな。頂くのだ」
この森の物であろう木ノ実やら動物や知恵なき魔獣の肉や毛皮、魚等まで用意してあった。
群れの皆で集めてくれたのであろう、気の良い奴らなのだ。
我はそれらの品々を一つ一つ丁寧に《影収納》にしまっていく。
今度来る時には、此奴らに何か土産を持ってきてやらねばいかんな。
「ではな。一晩だけではあったが世話になったのだ」
「タツキ様もお気を付けてお帰りを」
「ナスカ様達によろしくお伝え下さい。タツキ様もまたお越し下さいね」
「うむ。また来るのだ。では皆少し離れるのだ」
「「「「「おおお〜〜〜!!」」」」」
我が竜の姿に変身すると、途端に大歓声が上がる。
我の竜の姿はカッコイイからな、無理ないのだ。
しかし我の竜の姿はちょっと小さいのは納得いかないのだ。
仲間の竜族たちは皆10メートル以上あるし、母様は50メートル、古竜様は55メートルもあるのだ。
まあ我は竜族ではなくドラゴノイドであるし、これはこれで可愛いから有りなのだ。
ブワサアァァッ、ブワサアァァッ。
我は華麗に上空へと舞い上がったのだ。
『ナビよ、今からブラックフォックスの森を出発するのだ』
『了解です。なるべく急いでお願いします』
『わかっておる。任せておくのだ』
偶には我の本気を見せてやるのだ。精々驚くが良い。
キイイイイィィーーンン・・・・・・
翼が空気を切り裂き、音が消えていく。
目下に広がる雲海と蒼空の静寂の空間。
此れが我の世界なのだ。
☆
「何を呆けた顔をしておるのだ、お前は」
「お前が出発したってナビさんから聞いたのは、ついさっきだぞ」
「どうだ!速いであろう!」
「まあ我には医療知識はあっても医療技術は無い」
「お前が先に戻ったことにも意味はあるのだ。悲観するな」
ナスカの驚く顔が見れて、我は大変満足なのだ!
タツキ視点は一旦終了。
次回、ちょっとだけナスカ視点に戻ります。
段々と主人公の陰が薄くなってきてるので、偶には戻さないとね。
♫ブクマ、ブクマ、ブクマがふっえた〜ようっれし〜いな、♪う〜♫
ありがとうございます。




