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中央大陸学院一年生必修科目一覧(あいうえお順)
・家庭科:調理、裁縫を中心に独り暮らしの際に必要と思われるスキルを身に付けます。
・機械:タブレットやパソコン等の正しい使用方法を学びます。
・数学:日常生活から経済学の基礎まで。
・生活魔法学:生活に根付いている魔法を基礎から学び、仕組みを理解します。
・体育:健康な体を維持するために必要な知識を学び、実践します。
・大陸歴:この世界の歴史を学びます。
・文章:文章を書く力、読み解く力を育てます。
・野営学:野営に必要な知識を実地で学びます。野外学習あり。
「だからあたし、はっきり言ってやったの! あんたたちなんかにぜ~ったい渡すもんかって! だってジェレちゃんはあたしの友達で、大事なあいぼーなんだもん。ね~?」
「ぷに~」
……入学式から一週間。今日は生徒が週に一回、家族または身元引受人の家に限り外泊しても良い日である。
繰り返す。外泊「しても良い」日。つまりしなくても良い日。
外泊するには一々申請(っつってもタブレットから学内イントラネットを介して申請するだけらしいが)しなきゃいけないわけで、しかも私はなぜだか知らんが入学式後もしょっちゅう学院にお使いに行かされているわけで。たまに廊下で会ったりもしてて。
だというのになんでもう帰ってきたんだ? 一週間だぞ?
私の迷惑そうな視線にもめげず(ってゆーかもしかしてこの子気付いてない?)、ミサさんはクラスメイトへの不満をさっきから盛大にぶちまけている。
うるちゃい。どーでもいー。
「なんかさ、すっごいおじょーさまらしくて。従者みたいな男の子がくっついてるんだけどその男の子がも~っとヘンな子でね! せーふくにマントとか付けちゃってるの! 似合ってるけどっ!」
「ぷにぷに!」
「おじょーさまのこと『我が姫君』とか呼んでて、廊下でひざまずいて手にキスとかしちゃってるんだよもーうらやましいいい!」
「ぷにいぃぃぃ!」
ヒートアップするミサさん。ぷるぷる身体を揺すりながら合いの手を入れるジェレミーナⅩⅩⅩⅠ世さん。
あぁ馴染んでる、完全に馴染んでるよ……。そういやさっきミサさん、言ってたよね。「大事なあいぼー」って。ⅩⅩⅩⅠ世さんも異存ないみたいだし、これはもうミサさんが飼い主ってことで決定してしまったってこと?
いやしかし、修行の旅に出た「ルビーの靴」パーティーはどうしよう。あとでモメるんじゃなかろーか。あぁ、頭痛の種がまた一つ……。
「……とか言ったんだよ! ねぇ聞いてる? 聞いてるのミツキさんっ」
「聞いてる聞いてる」
「じゃーあたしが言ったことまとめてみて」
「授業開始日の二時間目の休み時間、いきなり派手で偉そうな男の子から『ジェレミーナⅩⅩⅩⅠ世さんを譲れ、または売れ』と声を掛けられた。その男の子は東大陸ミミカの豪商のお嬢様の付き人で、お嬢様はジェレミーナⅩⅩⅩⅠ世さんをペットにしたがっている。ミサさんは断った」
「……すごい、合ってる」
「そうでしょうとも」
こんな簡単にまとめられるようなことを、ミサさんは部屋に入った瞬間から3時間しゃべり続けていたのである。もちろん、途中お茶やお菓子を所望しつつだが。
ある意味すごいんだけど勘弁してほしいです。
「ミサさんはもっとこう、お話をまとめる力を養ったほうが良いですよ。確か必修科目にありましたよね、文章学」
文章学っつーのはたぶん、日本における現国のようなもの、だと思う。
ほら、この世界ってさ、超高性能な翻訳魔法のお蔭で外国語やら古語のおべんきょーはしなくてもふつーに聞き取りできちゃうし読めちゃうから「国」語ってのがないんだよ。
でも、いくら翻訳魔法が高性能だろうが、本人のお話が支離滅裂のままでは意思疎通に困難をきたすのは間違いないし、この際しっかり学ぶといいよ、ミサさん。
「まぁ、なんというか、濃いキャラのヒトに絡まれて災難でしたね」
そして残念、ミサさんがおそらく思い描いていただろう「私が主役の学園生活」は夢と散ったに違いない。
だって、どう考えても縦ロールのお嬢さまとナイト気取りの気障な従者のほうがキャラ立ってるし。他にもほら、新入生代表やってた竜人のなんとかクン。あっちの方が主人公っぽかったし。
地味系主人公気取るには、新人の「落とされモノ」というちょびっと目立つ属性ついちゃってるから無理があるし。
「そんなことよりお勉強はどうですか? ついていけそう?」
「う~ん。必修は楽しそうだよ! 歴史と数学と文章学以外は……」
8科目中3科目で脱落しそう、という意味だろーか。う~ん、身元引受人としてこの子の成績についてどのくらい干渉するべきなのかなぁ。
……という悩みは、ミサさんの次の一言で吹き飛んだ。
「そうそう、なんかね。一学期の間だけ、担当のせんせーが変わるんだって。体育の先生が、リオウせんせーだったよ?」
「はあああああぁっ?」
なぜだっ?




