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こちら冒険者ギルド別館、落とされモノ課でございます。  作者: 猫田 蘭
第二部―1章<紳士と淑女とサイボーグ>
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【九老院 レディ・オニキス 略歴】

翼竜族、女性

BA127年 雷鳴世界トゥーロより、西大陸リューゼルに落とされる。奴隷として捕獲されるも、自力で脱走。

BA93年 自らをリーダーとする「竜族連合」を設立。多くの同族を解放する。

BA09年 解放王アルフレドと合流。以降、参謀的役割で解放運動に尽力。

0000年 解放戦争開始。「竜族連合」のメンバーを率いて南西大陸キキヌイを制圧。

0007年 冒険者ギルド初代館長就任。

0104年 ギルド館長退任後、九老院のメンバーとなる。慣習により名を捨て、「オニキス」を襲名。


 AA(AfterAlfred)0210年度入学式なう。

 なんかよくわかんないけどさっきからすっげー見られてる気がする。誰にって、そりゃぁ、もちろん。不特定多数にですとも。

 例えばリオウさんの前にお祝いのスピーチしてた九老院(とゆー、ギルドを裏で牛耳ってるこわ~い組織があんのよ)の「レディ・オニキス」だったり、新入生代表の「エルメル・ネル・エルネスト・ネア・メルル」君(竜人の男の子。いかにもがきんちょのリーダーってかんじのちびっこ)だったり、「祝品贈呈」の列に並んでるその他(失礼)の生徒さんだったり?

 む~、なんだよぅ。


 あ、「祝品贈呈」とはなんじゃらほいというとだな、ありがたくも私に割り振られたどーでもいいお役目で、学園内だけで使用できるタブレットと安全管理用のタグを、名前呼ばれて順番に壇上に上がってくる生徒さん一人一人に手渡しする、とゆーものである。

 別に入学式でやらんでもいいよな、これ……。まぁ、私の能力を皆様に見せるためのデモンストレーションなんだろうけどさ。あと、かさばるものをさっさと処分したかったという理由もあるか?


 でもね、空間から取り出していざ渡そうと、手がちょっと触れるたびに「ひっ」とか「ひゃっ」とか悲鳴上げる生徒さん続出でいたたまれないのです……。

 やだな、あの都市伝説ってそんなに有名なの? 別に君たちがどんなに悪い子でも、おねーさん捕って食ったりしないってば。

 私の隣で「祝福贈呈」やってる聖女のレームさんと握手する時の表情はいかにも「癒されてます」風なので、地味に凹む。


 と、話が逸れた。

 とにかく、なんかこう、観察するような警戒するような、ただの「暴食の魔女(笑)」に対する畏怖だけじゃなさそうな視線をあちこちから感じて居心地悪いんです。

 うぅ、早く帰りたいよぅ。でもまだ30人くらいいそう。このあと確か、職員紹介と閉会の挨拶だっけ。まだしばらくかかるなぁ……。はふぅ。

 仕方ない、気を紛らわせるために動物耳率でも計算してみるか。生徒さんの全体数がキリよく100人らしいから計算簡単ですぐ終わっちゃいそうだけど。


 え~とまずは猫耳から。猫耳がいっぴき~、猫耳がにひき~、猫耳がさんびき~、猫耳が……よん?

 あ、あれ? 4匹目の猫耳にとっても見覚えがあるような気がするんだけどどういうことだろう。おかしいな、なんで彼がこんなところに?

 これはいよいよ私の頭がおかしくなったのかと、かる~く目をこすったところで、ちょうどタイミングよくその名前がアナウンスされた。


『学籍番号1079、ルークレスト・エメリア・テッセリス・フィレメト』

「……」

 四匹目の猫耳は、返事することも無くむすっとした顔で立ち上がる。途端に会場内がざわめき出す。う、うん、そうだよね。いるはずのないヒトだもんね。

 へぇ、でもそっかそっか~、本人か~……。へぇ。

 ちらりと隣のリオウさんに目をやれば、彼も目をキラキラさせていた。

 保護者席には興奮したのかちらほらと立ち上がりだす人々。身を乗り出す生徒たち。それを鎮めるように、イラギュラーな解説が入る。


『ご静粛にご着席願います。彼は皆さまご存じの通り、高名な冒険者ですが、「普通の16歳がどういう生活をしているのかを知りたい」という、本人たっての希望により入学することになりました。みなさん、過度の注目はお控えください』

 は~い、ダウト! ぜってー嘘! だってそんなかわいいことるーきゅんが言い出すわけないもん。ほら、見てみなよ本人の顔をさぁ。でかでかと「不本意!」って書いてあるじゃん。

 あー、薄々感じちゃいたけど、やっぱりこの学校なんかあるな……。キナくさい事情がゴロゴロ転がってるに違いないね。ひぃ、こわ~。


 るーきゅんはぶすったくれたまま壇上に上がり、来賓にお辞儀することもなく(それでこそ私のるーきゅん!)無造作に私に手を差し出した。えーっと……。

 むぎゅ。

 思わず手を握る。

「……なにしてんの」

 ち、違うの、せくはらじゃないの。この手が、手が勝手に! 非常事態に思考停止してたせいで本能に従って勝手に!

「い、いやその、ふ、ふつーのオトコノコにもどります……?」

「はったおすよ」


 わかってるくせに、と小さく吐き捨て、彼は私からタブレットとタグをひったくり、レームさんによる祝福(学園敷地内での命に係わるレベルの怪我を無効化する、らしい。しゅげー!)を断ってさっさと立ち去って行った。

 結局、会場からはその後るーきゅんショックが抜けきることはなく、妙に浮足立った空気の中、入学式は閉会した。

 ……えーと、うん。とにかくあれだ。

 るーきゅんのあとに呼ばれた生徒さんたち、可哀想。



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