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中央大陸学院入学式プログラム
1.開式挨拶 オーガスト・チェンバレン副学院長
2.校歌(特別ゲストによる) 合唱:セイレーン歌謡団 伴奏:ギルド友の会オーケストラ
3.担任紹介
4.学院長式辞 「神騙る傲慢」ユリウス・クァトゥナ学院長(ホログラム映像予定)
5.来賓祝辞 九老院代表レディ・オニキス、冒険者代表「無刀」リオウ
6.新入生代表答辞 エルメル・ネル・エルネスト・ネア・メルル
7.祝品贈呈(授業用特殊加工品数点) 「暴食の鞄」ミズキ・アキノ学院長補佐
8.祝福贈呈(学院敷地内における再生力の強化、他) 「瞬きの聖女」レーム・テッセ
9.職員紹介
10.閉式挨拶 オーガスト・チェンバレン副学院長
あかい、海。
きらきらと。
波打って。
真っ赤にひろがって。
箱いっぱいのルビーが、こぼれたみたい。
……って、保護者席いぃぃぃ!
「お嬢さん、そろそろ始まるよ」
三つ揃えのスーツを着たブロンドの美青年が、ぽん、と私の肩を叩いた。なにを隠そう、彼こそオーガスト・チェンバレン副学院長そのヒトである。
いやー、初めて素顔見た時は驚いたわぁ。だってどう考えても若すぎるもん。計算合わないもん。
動かなくなった足をサイボーグ化するだけのつもりで受けた手術にすっかりハマって、いつの間にか全身サイボーグ化して若返りまでしてたってゆーね……。
好意的に解釈すれば、元の世界の文明レベルにこだわるヒトとは正反対の新しいもの好きさんってとこだろうか。
昨今問題になっている改造中毒患者なんじゃなかろーかと心配にならんでもないが。
「今日はNINJYAじゃないんですね?」
「TPOはわきまえているつもりだよ」
いかにも紳士らしく穏やかに微笑まれて、不覚にもちょっとドキドキしてしまった。
いや、だってさ……。入学式の打ち合わせという名目で毎日会ってるうちに、あのNINJYAスタイルにすっかり慣れちまったもんで。
「どうしたんだい? 何か気になるものでも?」
いやぁ、どうしたもこうしたもですね。あっちに異様な光景が広がってるじゃないですか。
アレ見て何も感じませんか? 私はうっかり変な病み系ポエムみたいなのが出てきちゃったんですけど!
「保護者席見ました? ジェレミーナ一族勢揃いしちゃってますよ」
「あぁ、あれはなかなか壮観だねぇ。席は足りるかな?」
「気になるのはそこだけですかっ? まぁ、確かにそれも問題ですけど……」
緞帳の隙間からもう一度そ~っと会場を見回してみる。
ジェレミーナ一族は、一列5人がけの一画を、ぴったり6列占有していた。先程ちらっと私の頭をかすめた通り、赤い海と言うか波と言うか……。
とにかく、うん。目が痛い。
最近は日本においても、両親のみならずおじいちゃんおばあちゃんまでこういうイベントに駆けつけると聞いてはいたけど、まさか30代前まで遡って駆けつけるとは。
恐るべしジェレミーナ一族!
これはますます、XXXI世さんのお取り扱い注意だなぁ。XXXI世さんに何かあったら赤い海が押し寄せて来るに違いない……。こ、こわぁ!
更にジェレミーナ一族の後ろの席は、なんとな~くちぐはぐなヒト達で占められている。多分「ジェレミーナ」の飼い主とその仲間達なんだろうけど……。
なんつーか、こうね。正装っつったってフルアーマーとか、そっちの正装は違うと思うんだ。窮屈そうだし。
かといって、今からダンスパーティーですかっていうその格好もちょっと。
「まぁ、今年は在校生がいないからだいぶ余裕があるはずだけれどね。そちらは誘導係にまかせておいて大丈夫だよ。お嬢さんはそろそろ席につきなさい」
「いやその、できればギリギリまで……」
私はちらりと、背後に目をやった。
ステージ上には立派な椅子がいくつも並んでいて、来賓の皆様が既に幾人か着席しておいでなのだが。
「すごいヒトばっかりで落ち着かないんです」
「お嬢さんだって、世間からすれば『すごいヒト』じゃないか」
「うぅ」
私の場合、他の皆様と違って高額宝クジが当たったヒト、みたいな認識だからさぁ。
自分が何かを成し遂げたわけじゃなくて、たまたま便利な能力もらっちゃった~、そしたら特権ついてきた~、みたいな? 良いことばっかりじゃないけどな!
しぶしぶ割り当てられた席につくと、冒険者代表来賓のリオウさんが早速話しかけてきた。
「ミズキ殿、その後体調はいかがか」
「はぁ、お蔭さまで」
なんでよりによってこのヒトが隣なんだろう……。
「まさかミズキ殿とこのような場所で会うとは思わなかった。学院長補佐とはまた大層な肩書きだが……、あまりうれしくはなさそうだな?」
うん。私肩書きマニアじゃないし。押しつけられた感しかないよ。
「リオウさんこそ、入学式の来賓なんてなぜ引き受けたんですか?」
副学院長から聞いたところによれば、なんでも今、冒険者さんは大忙しなんだそうで。特に戦闘系依頼がメインのみなさんはことごとく都合がつかなくて、どうしようって悩んでたはずなんだけど。
最悪、冒険者代表はナシかな~って。
「私はチェンバレン氏の弟子なのだ。それに、その、な……。先日の一件で、今後『折れぬ牙』はギルドからの要請を一切断ってはならないというペナルティーを……」
後半は声を潜めてぼそぼそと呟くリオウさん。背中をまるめて居心地悪そうにしているその姿は、なんとも彼らしくなかった。
そっかそっか、やっぱり全くお咎めなしじゃなかったんだな。あー、今ちょっとすっきりした。
「なるほど。でもほら、たまにはこういうボランティアも悪くないんじゃないですか。せっかくですから未来を背負う子供達を感動させるようなスピーチをお願いします」
「うむっ! 引き受けたからには全力で当たる。それが『折れぬ牙』の心意気だからな!」
……あ、間違えた。このヒト見た目に寄らず熱血なんだった。余計な事言っちゃった。
「やっぱり適当に。手を抜いてください。できれば5割くらいの力で」
「なぜだっ!」
「いや、ほら……」
せんせーや来賓の挨拶ってのは、短けりゃ短いほどいいからに決まってんだろーが。
……とはさすがに、周りが怖くて言えなかった。




