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こちら冒険者ギルド別館、落とされモノ課でございます。  作者: 猫田 蘭
第二部―0章<NINJYAとパシリと副学院長>
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✝冒険者ギルド立 中央大陸学院 入学案内✝


入学資格について


 当学院への入学資格は、以下のいずれかに該当する方に認められます。


1.年齢10~16歳までの、初等教育課程が終了したモノ。

2.年齢10~18歳までの、「落とされモノ」。

3.ギルドにおいて個別の入学資格審査により認めたモノ。


                学院長 ユリウス・クァトゥナ

「よぉ、じょーちゃん」

「あ、ジーさん!」

 今日からしばらくシバさんは出張である。

 というわけで、私は初めて受付カウンターに一人で座ることになった……はずなんだけど何故か、シバさんの席にジーさんが座っていた。


 ……ビックリしたよ!

 だってさ、いつもは柴犬が座ってる場所にグリズリーだよ? 一瞬シバさんが食われたのかと思ったわ!


「おはようございます。えっと、お久しぶりですね?」

「おうよ! 元気だったか?」

 がっがっが、と豪快に笑うジーさん。こ、こわい。

「ええまぁ、お蔭さまで、おおむね……」

「そうかそうか。まぁ、ちょいとばかし大変だったらしいがな! そういうのは慣れだ、慣れ! 痛いのや苦しいのはいずれ慣れるもんだ!」


「さ、参考になります」

 いやぁ、私には想像も及ばないほど痛かったり苦しかったり散々な目に遭っただろうジーさんの言葉は重いわぁ。

 これ別に、嫌味とか苦労自慢で言ってるんじゃないんだぜ……。本気でそう思ってて、私のために言ってくれてるんだぜ……。


 なんつーの、いいヒトなんだけど、やっぱり生きてきた環境に絶対的な溝があって、価値観とか物の考え方が微妙に違うんだよね。

 生きてる限り苦しんで当然、その中で活路を見出す、というのがジーさんの人生論ってゆーか。

 ジーさん……。(ほろり)


「まぁ、すぐにけろっと回復しちゃいましたし。そのあとたっぷり飴をいただいたので、もう大丈夫です」

 喉もと過ぎた熱さはとっとと忘れることにしました、と言う私を、ジーさんは「上等!」と褒めてくれた。うんまぁ、ほんといいヒトなんだよ。

 ところで。

「それで、どうしたんですか、こんなところで」


 ジーさんは基本的に外回りの仕事を好んで受け持っている。デスクワークが苦手だそうで、身体を動かしていたいんだとか。

 もちろん外回りって言っても、営業とか御挨拶回りじゃないからね? フリーランスの傭兵みたいな意味だからね?


 欠員ができたけど、遺跡探索のスケジュールを変更できないから助っ人がほしいだとか。

 戦力に不安があるので「災厄級」の討伐隊に加わってほしいだとか。

 そういうリクエストにお応えして、日当うにゃうにゃクレジット(教えてくれないんだもん!)で、どこぞのパーティーについて行くのである。


「シルヴァリエがしばらくいねぇんだろ? そんで、じょーちゃん一人じゃ大変だろってユリウスが心配してよぉ。連れ戻されたんだ」

 がっがっが。

 ひぃぃ、牙が、牙がぎら~んって!


「ごご、ごめんなさいっ」

「なぁに、ちょうど愛用のエモノを研ぎに出す時期でよ。たまにゃぁこうして過ごすのも悪かぁねーや」

 がっがっが。


 ……ジーさんのエモノって、そういやなんだったっけ。

 なんとなく勝手に、そのおててに生えてる立派な爪でザクってやるのかと思ってた。相手の肩からこう、じゃき~んと。もしくはガブって。頭からバリバリって。

 まぁ、よく考えたら、追いつめられない限りそんな野蛮なことするわけないよな。しつれーしました。


「それにな、じょーちゃんにも他の仕事が入りそうだぜ?」

「え、そうなんですか?」

「おう。忘れてたけどな、出勤したらすぐオフィスへ顔出せって言付かってたんだわ」

「それは早く教えてほしかった!」


「がっがっが。わりぃわりぃ、久しぶりにじょーちゃんと話せたもんで嬉しくてよ」

 くっ。わ、私だって、ジーさんとおしゃべりできるのは嬉しい……よ……?(とデレてみる。ただし心の中で)


「行ってきますっ」

「おう、行って来い」

 私はオフィスのドアのインターフォンを連打した。


 実はこのドア、ただ「あるだけ」なんだよね。

 どうやってるのかは何度説明されてもわからないんだけど(空間座標学なんざ知るか!)ユリウスさんが魔法で空間を繋げているらしい。


 彼の許可をもらわない限り、ドアをあけても壁があるだけ、という非常にマヌケな作りで、だから用がある時はインターフォンで呼び出して招いてもらわねばならないのである。めんどくしゃー。


「ミツキです! お呼びですかっ?」

『遅いですよ。それと、うるさい』

 オフィスのドアが開いて、不機嫌そうなユリウスさんが内側から私を睨みつけた。いやあの、遅かったのは私だけのせいではなくてですね……。ね、ジーさん、って早速居眠りしてるうう!


「まぁいいでしょう、入りなさい」

「失礼します」

 うぅ、緊張する。

 オフィスのドアをくぐった途端、身体の中に衝撃が走った。


 空間の繋ぎ目を通る時独特のもので、身体中を静電気が一撫でしたような、ぞわぞわぴりり、という感覚。

 あーやだやだ、何度やっても慣れない。

 鳥肌がたった腕をさする私を前に、苦虫をかみつぶしたような顔でユリウスさんが切り出した。


「実は、あなたをしばらく泳がせてやれという指示がありまして」

「うわぁ、開き直ってぶっちゃけた!」

「あなた自身、泳ぎたがっているようには見えないと言ったのですが」

「えぇまぁ、そうですね。今のところは」

「もちろんギルドの監視下で、ですよ。野放しにしろという意味ではなく」

「わかってるけど複雑です」

「そういうわけですから、少しカウンター以外の業務を任せたいと思います」


 前フリいらなかったよな……?

 絶対、言わない方が良かったよな?

「私の名代として、しばらく学院を見学してまわってください」

 目の前にパンフレットが差し出された。あ、それ持ってます。ミサさん(とジェレミーナXXXI世さん)が入る予定の学校ですよね?


「何故か今朝、学院長の名前が差し替えられていまして。悪い夢かと思って問い合わせたのですが」

 ぺらり、と促されるままページをめくる。

 なになに、「学院長、ユリウス・クァトゥナ」。


 ……がくいん、ちょう?

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