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中央大陸学院教育方針
1.本来属すべき世界に見合う知識を身につける
本学院は「落とされモノ」としてこの世界にやって来た方々の、「我が子にも元の世界と変わらぬ水準の教育を」という強い希望の声に応えるべく設立されました。
故に、特に高い教育レベルを誇る世界出身の教育者を多数招き、より高度な知識を学べる環境を整えております。
2.この世界で生きるために必要な知識、技能を身につける
この世界の風習を理解し、更には異世界の知識、技能を身に付けることで、あらゆる不測の事態に対処できるようになるでしょう。
学院を出た後、第一線で活躍できる人材の育成を目指します。
3.己の適性を理解し、その道を極める
学院内で何らかの分野において特に優れた成績を修めたモノは、4年後完成予定の「中央大陸総合技術学術研究都市(仮名)」への移住が認められ、更なる高みを目指した教育を受ける事ができます。
また、ギルド関連施設への就職も有利になります。
学院長、ユリウス・クァトゥナ……。学院長。
冒険者ギルドが必死こいて、湯水のごとく資金をつぎ込んで建設している学術都市のモデルケースである中央大陸学院の、院長とな? ユリウスさんが?
えーと……?
「御栄転おめでとうございます?」
「なにをとんちんかんな事を言い出すんですか、あなたは」
「え、だって……」
どう考えても重要なお役目じゃないですか。
だってギルド別館なんてさ、所詮アレよ?
扱いがめんどくさいからって理由でよそから押し付けられたヒト(例:ジェレミーナXXX世さん)とか、待たされるの嫌だし今日は銀行に用がないから空いてる方に来たってヒトとか、中央大陸観光ついでの「七罪」見物ってヒトとか、取り扱うお客はそんなんばっかりよ?
完全にイロモノ扱いっつーか、なんつーか……。
「って事は新しい館長が来るんですか? それとも、年功序列で上がるとか? エリスさんでしょうか」
「ヒトの話を聞きなさい。名代を頼まれた時点で、自分がまさか無関係だと思ったわけではないでしょうに」
「めんどくさ……」
「それについては同感です」
はぁ……。
二人分の溜息が部屋に流れた。
「つまり、別館館長と学院長を兼ねるんですね。っていうか、学院長は名目だけ?」
「その通りです。『七罪』の関与を匂わせた方が箔がつくとでも思ったのか、名義だけ貸してほしいと」
うわぁ。
「世間って、『七罪』に期待し過ぎって言うか夢見過ぎですよねぇ」
見物に来たヒト達もさ、みんなすっごいガッカリして帰っていくんだよね。
受付に座っている私とシバさんがその一員だと知ると、みなさん一斉に、「だまされた!」みたいな顔してくれてさぁ。中にはなかなか信じてくれなくて本物が出てくるまで帰らないとか言うヒトもいるんだ。
もちろん、そういう面倒な輩は用心棒に放り出してもらうけどな!
「あ、でも、元々学院長になる予定だった方は? 確かイギリス出身の……」
「オーガスト・チェンバレン氏は了承済みだそうです」
「そうそうそのヒト。なんかこう、御大層なお名前ですよねぇ。気難しそう」
元は名門寄宿学校の教師だったとかなんとか。
偏屈なおじーさんなんだろうなぁ。きっとカイゼル髭みたいなのはやしちゃってさ、イライラしてくると右手の指先でくるんってするクセとかがあって……。
「そうでもないですよ。会ってみましたが気さくな人物です。……まぁ、変わった御人でしたが」
え、そうなんだ。
「百聞は一見に如かずと言うでしょう。ちょうど良いですから、今からでもおつかいついでに挨拶に行って来なさい。はい、これ」
ひょい、と差し出されたのは一通の封筒。御丁寧に蜜蝋で封までしてある。
お馴染みのギルドの紋章の林檎の中央にライオンの顔。これはユリウスさん専用の紋章である。ってことは重要機密かぁ?
「うわぁ、レトロ」
「この方法が一番、機密漏れが少ないんです」
「そういうもんですかねぇ」
「少なくとも、あなたが持っている間は奪われることはありませんからね。一度読んだら燃える魔法が掛かっています。くれぐれも、盗み読みなどしないように」
「しませんよ!」
しつれーな!
私が食ってかかると、ユリウスさんは真顔で「冗談です」と言った。わかりにくいうえに面白くねぇ!
私はユリウスさんの目の前で、手紙を「鞄」に取り込んだ。はい、確かにお預かりしました、と。
「じゃ、配達行ってきまぁす」
「寄り道するんじゃありませんよ」
「買い食いは寄り道に入るでしょうか」
「200クレジットまでですよ」
……パパ!
*****
異世界人特別保護区から一歩出たところで、あまり顔を合わせたくなかった人物に出くわした。
「やぁ小鳥ちゃん」
「げぇ!」
ひぃ、なんだよこいつ。まさか私が出て来るまでここで何日も張ってたとか? それともそういう情報が逐一報告されてて、チャンスとばかりに駆けつけたとか?
どっちも怖えぇ、偶然であってほしい!
しかし、あっさりこのヒト近付けちゃうって、警備のみなさんは何をしてるんだ?
「まだ私にご用ですか? ってゆーか、妨害とかされないんですか?」
「それが一切。余程小鳥ちゃんの洗脳に自信があるんですねぇ」
洗脳……。
言ったよ、言ってくれたよはっきりと。自覚がない分、心に突き刺さるわぁ、その事実。
「ほんともう、お気持だけで。ほっといていただけるとありがたいです」
「籠の中はそんなに心地いいですか?」
「はぁ、お蔭さまで」
だって、飼い主が優しくて(まぁ、たまに厳しいけど)ご飯がおいしくて安全なんだよ? なんで好き好んで、明日をも知れぬ野生生活に自ら飛びこまにゃあかんのか。
「困りましたねぇ。愛しいお姫様の呪いはまだ解けませんか」
「あ、一応白馬の王子様のつもりだったんだ、アレで……」
「僕、一応王子ですからね? お望みなら白馬にも乗りますよ?」
小鳥ちゃんが望むなら、と彼は私の手をとった。
……こういうところは王子様っぽいのになぁ!




