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パーティーマッチング立ち合い時の心得五カ条+1
・紹介がすんだら、意見を求められるまではなるべく聞き役に徹すること。
・パーティーのバランスを考えること。
・焦って無理にまとめようとしないこと。
・あくまでも中立の立場で見守ること。
・各メンバーの能力に関して、誇張表現は控えること。
*無理そうだと思ったら潔く破談にしましょう。
「本日はお日柄もよく、『ルビーの靴』パーティー御一行ならびにジェレミーナ一族の皆様には心よりお祝い申し上げますぅ。マッチングの立ち合いを務めさせていただきますシルヴァリエ・デリクスとミズキ・アキノですぅ」
緊張の顔合わせが始まった。私とシバさんは、そろってぺこりとお辞儀する。
……どうでもいいんだけど結婚式のスピーチみたいになってませんかね、シバさんや。
「ご紹介しますぅ。『ルビーの靴』パーティーのリーダーの案山子さんですぅ。えーと、こちらに落とされて来てからの記憶しかないらしいので出身地はわかりませんが、『落とされモノ』さんで、職業は炎使いさんですぅ」
シバさんの紹介に、人間大の藁人形(にしか見えねぇ!)がこくこくと頷いた。
えーと、自称案山子。チートは……「精霊憑き」ぃ?
えーそれってただ単に、その辺にあった藁人形に「落とされ」て来た精霊が入っちゃっただけじゃないの? なになに、精霊の記憶がないからあくまでも藁人形が本体って判断された? へぇ……。
「副リーダーのPNK2さん、通称ブリキさんですぅ。斧使いさんで、盾役も兼任してるそうですぅ」
「ヨロシ……ク……」
四角い頭、武骨な胴体、申し訳程度に作られたような手足。
錆ついたロボットがカクカクと手を振って、ついでにぴこぴこぴこ! とけたたましい音を立てながら頭の上の回転灯を回した。彼なりに愛想を振りまいたつもり……らしい。
「それから、今日は欠席ですが、獣人の格闘家さんがいますぅ」
もちろん、案山子、斧持ったブリキとくれば、ライオンの獣人な!
つまりこのパーティーはさ、アレなんだよ。メインヒロイン(回復役?)とマスコット動物(支援系?)抜きでエメラルドの都目指してるんだよ、多分。バランス悪っ!
そういう大事なもの抜きだから、戦績が振るわないんじゃないかな……。
「ミズキさん、ミズキさん!」
「あ、はいっ!」
おおっといけねぇ、物語におけるヒロインの欠如が及ぼす影響についての考察はまた後に回そう。今はとにかく、ジェレミーナXXXI世さんをこのヒト達に引き取ってもらうことに集中するべき時間だった。
こほん、と咳払いをしてまずは営業スマイル。ソファの上で丸くなっている大小のスライムを手のひらで示した。
「こちら、ジェレミーナXXXI世さんです。本日は特別に、現在の後見人であるXXX世さんが御同席なさっていますが、パーティーへの参加を希望なさっているのはXXXI世さんのみです」
……から、安心してくださいね、という続きはごっくんした! 飲み込んだ!
「ジェレミーナ一族について簡単にご説明します。彼らの初代は約60年前にこちらに『落とされ』て以来、ほぼ二年に一回の分裂を繰り返して代を重ねています。『知能向上:世代単位』という能力を授かっていて、非常に高いコミュニケーション能力を有しています。7代目が『個性』を学習して以来、世代ごとに性格が大きく違うという特性もあって……」
だから、悪名高いXXX世さんとは違うんです!(ごっくん)
「こちらのXXXI世さんは、発声器官の応用を学習なさったので、他種族との意思疎通がより簡単になりました。他、筆談等も可能です。性格は穏やかで、好奇心旺盛です」
まぁ実は、発声っつったってイエスとノーくらいしかわかんないけどな。だいたい「ぷに~」って鳴いてるだけだし。
これくらいなら、誇張表現にはならない、よね……? マッチング心得五カ条に引っかからない、よね?
あ、でもXXXI世さんが今のところ穏やかってのは紛れもない事実なんだよ? 我が子(っつーか、分身?)の飼い主が決まらない苛立ちでぷんすか怒るXXX世さんの横でおとなしく絵本読んでたりするくらいだから。
よかった、これだけはほんとーに、心底助かった。
分裂手伝った私にもよく懐いててさ。お蔭で大分スライム恐怖症が薄れたよ……。
だからこそ! XXX世さんとは一刻も早く引き離したいんだ、悪影響受けないうちに!
「慣れるとひんやりして気持ちいいんです! 硬さもある程度調節可能なので、手の上で好みの硬さになってもらってぐにぐにすることも可能です。絶対クセになります。抱き枕にもいいと思います」
それからそれから、えーと。
「……サビトリ……イイ……?」
「あ、はい。錆とかも取ってくれると思います」
ブリキさんの回転灯がえらい事になってる! 超高速回転してる!
さてはこのヒト達、それが目的で応募してきたのか。いや、まぁいいんだけどね。錆取り大変そうだし気持はわかる。
「オラたちゃ、あんま強ぐねぇげんど、そのぶん、無理さしねぇんだぁ」
しゃべったあああああ!
藁人形がしゃべった、ビックリした! だ、だってさっきはこくこく頷いてただけだったんだもん。
「本で読んだ話さあごがれで、こんなぱーてー名つけたども。たぶん、オラたちゃこのさぎも英雄にゃぁなれねぇ。腰の引けだ弱小ぱーてーのまんまだぁ。そんでも、いいべか?」
ゆうしゃさま……!
私とシバさんの心は今や一つ。引き取ってくれる、引き取ってくれるんだ……!
二人揃って思わず、胸の前で両手を祈るように組んで見つめちゃったよ。藁人形なのにやけに男前だよ。
そうだよね、退くのも勇気って言うし。命あってのモノダネじゃないか。無茶な突進繰り返すよりもず~っとず~っと賢い生き方ですよ、ねぇ?
「ありがとうございます! よかった、よかったですねXXXI世さん。この方達ならきっと幸せに……」
ぶにゅるるるるるるるる!
幸せにしてくれるに違いないですよ、と続けようとした私の言葉は、遮られてしまった。赤い膜によって。
なっ、何が不満だって言うんだあああああ!




