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☆可愛いスライムの相棒いかがですか☆
冒険者のみなさまに朗報です。
先日、ジェレミーナXXX世さんが無事分裂を果たし、ジェレミーナXXXI世さんが誕生しました。
体重400グラム、体色赤、不定系の可愛いスライムです。
現在ジェレミーナXXXI世さんは、パートナーを募集しています。
スライムを連れていると、冒険中に出た不要品の処理はもちろんのこと、鍵のかかった箱をあけるのにも便利です!
ひんやりした身体は、蒸し暑い夜の寝苦しさも解消してくれるでしょう。
あなたのパーティーに素敵なスライムを一体、いかがですか?
*要面接、応相談。お問い合わせは冒険者ギルド別館受付、シルヴァリエ・デリクスまで
*応募は冒険者ギルド別館メールフォームより。タイトルは「XXXI世」でお願いします。
ジェレミーナ一族の朝は、早い。
……なーんていう、昔の職人さん紹介番組みたいなナレーションが一瞬、頭の中で再生された。実際はそこまで早いってわけでもないんだけど。
いや、だってさ。毎度毎度開業二時間前からエントランスに陣取ってるのってすごくない? いくらなんでも張り切り過ぎじゃない?
今日もXXX世さんはキレのある動きで準備運動を怠らないし、XXXI世さんもラジオ体操みたいな動きしてるし。なんなんだあの一族は。
私はそ~っと窓から頭を引っ込めて、ブラインドを下ろした。
「ミ、ミズキさん。いよいよ、ですね!」
「ですねぇ」
シバさんが緊張の面持ちで、肉球にぎゅっと力を入れる。今にも「ぷぎゅっ」と聞こえてきそうなその愛らしいおててに、私は思わず……。
ふにふに。
「ぴゃっ」
ふにふにふに。
「はううう、やめてくださいっ」
あぁ、いいなぁコレ。ほしいなぁ。
ふにふにふにふにふにふに。
「何をしているんですか、あなた達は」
「はっ」
「か、館長!」
酷いんですミズキさんが無理矢理っ、とえぐえぐ泣きながらユリウスさんに訴えるシバさん。まるで私がセクハラでもしたような言いようである。
ま、まぁ、否定はしないが。
50代のオジサンと23歳の独身受付嬢。うむ、シチュエーション的にもバッチリだ。
一般的に、立場が逆のような気もするけど。
「いえこれはけっしてそのような意味ではなく。シバさんのご家庭を壊すような意図もなくて、気がついたら手が勝手に!」
「……さすがにそこまで勘ぐってはいないから安心なさい」
「よかった」
職場での不倫を理由に解雇とか、みっともないからな!
と、冗談はさておき。
「なんか、緊張しちゃって。だってほら、今日はアレですよ、アレ!」
「緊張する必要性を感じませんが」
ユリウスさんは心底わからないという表情で私とシバさんを見下ろしている。く~、ヤだねぇこれだから現場を知らん上司は!
「XXXI世さんの飼いぬ……じゃない、パートナー決定は、受付にとっての重要事項なんですよ!」
「そうなんですよぅ。ジュニアちゃんに早くいいパートナー見つけない限り、ボク達に安息の日はやってこないんですぅ!」
XXXI世さんが分裂によって誕生してから二週間経った。
成長の早いスライムは通常一週間ほどで独立するらしいのだが、XXXI世さんは未だにXXX世さんと一緒に行動している。
別にマザコンとかファザコンとか、そういう理由からではなく。
飼い主が見つからない限り心配で離れられない、というXXX世さんのヒステリー故に。
私もシバさんもさ、何となくそう言い出すんじゃないかと思って、分裂の翌日から頑張って募集したわけよ。
慣れないながらに必死でポスター作って、そこら中に張りまくったよ。
外周大陸まで出かけて行って(この前の仕事以来、短時間に限るという制限つきではあるものの、外周大陸への移動許可が簡単に下りるようになったんだ。ヤッタネ!)、支部という支部に頭下げて回ったよ! くれぐれも宣伝お願いしますって。
……いやまぁ、データだけ送るって手もあったんだけどさ。こういうのって、なんつーの? 姿勢が大事ってのがあるじゃないか、ヒト相手なんだし。
もちろん紙のポスターだけじゃなくてデジタルポスターとか、ネット広告とか、CMとか(ちっこい赤いスライムがふにふに踊っているだけの画像だけど……)、お金も手間も掛けたさ。別館の特別予算惜しみなくつぎ込んでな!
ところが、XXX世さんの噂のせいで誰も名乗りを上げてくれなくってさぁ……。ほら、例の「飼い主を訴えて係争中」ってやつ。
アレが冒険者の間では有名らしくって。み~んな後込みしちゃうんだよねぇ。
あぁ、なんて空しい。そしてもったいない。(予算が)
XXX世さんは日に日にピリピリしだすし、私達としてもいつまでもXXXI世さんをアレと一緒にしとくとクレーム体質がうつりそうで気が気じゃないし、最近ずっと胃がキリキリしてたんだ。
「ところがとうとう! 連絡があったんです。是非会ってみたいっていう勇者様から!」
「おや? 応募してきたのは勇者枠の誰かなのですか?」
「え、いや。ただの例えです。その勇気に敬意を表して」
「そうですか」
「実際はあんまり、その、実績面ではふるわないパーティーなんですけど。写真を見る限り穏やかそうで、優しそうなヒト達でした」
ぬぼ~っとしてるってゆーか。
「そうそう、素朴そうなヒト達ですぅ」
垢抜けないってゆーか。
「「とにかく、このお話はなんとしてもまとめるんです!」」
ね~。とシバさんとハイタッチ。
といっても、シバさんは私の胸ぎりぎりくらいの身長なので、実際は私の顔の前でぺちんってしただけである。それでもシバさんは精一杯伸びたのだ。
……かわいいなぁ。
「まぁ、この件に関してはあなた方にお任せします。くれぐれも、ジェレミーナの新世代を失うようなことがないように気をつけるんですよ。上層部がうるさいので」
「「はぁい」」
「……アレに過度な期待を抱くのは、無駄な事だと思うのですがねぇ」
ユリウスさんはため息をついて、ついでにやれやれと頭を振りながら部屋へ引っ込んでいった。
つくづく、悩みの尽きないエルフである。
*****
昨日たっぷり時間をかけてお掃除したミーティング室をもう一回お掃除して、ついでにちょっと家具の配置を換えてみたりして、気持が大らかになる香りのするお茶を準備して。
よし、用意はいいな?
私とシバさんは視線を合わせて頷きあう。
始業のチャイムが、鳴った。




