後書き
「もしも、何でも叶う魔法があったなら」
幼い頃、誰もが一度はそんな空想に胸を躍らせたことがあるはずです。しかし、その「万能」がもたらす結末は、本当に私たちが望む幸福なのでしょうか。本作は、そんな一つの素朴な疑問から始まった物語です。
魔法という絶対的な力を手に入れた人類は、皮肉にも、自らの正義を証明するために「魔王」という敵を必要としました。そして魔法を失い、科学を興し、AIという全知の神を手に入れてなお、私たちは同じ過ちを繰り返します。道具が変わっても、人間の内側にある「恐怖」と「傲慢」が変わらない限り、世界はどこまでも肥大化し、破滅の輪廻を巡り続けるのです。
タイトルの『万能の杖を折る日まで、さよなら私たちの神様…』には、私たちが依存してきた「大いなる力」への決別と、その先にある人間としての覚悟を込めました。
無限の拡大を諦め、世界を小さく閉じること。
それは一見、衰退や敗北のように思えるかもしれません。けれど、届かない距離の神や敵に惑わされることなく、目の前にいる大切な人の手の温もりだけを信じて生きる谷間の暮らしにこそ、人類がずっと探し求めていた本当の「平和」があるのではないかと、私は信じています。
私たちはいつか、万能という名の病から回復できるでしょうか。
この小さな詩集が、あなたにとっての「閉じた庭」を見つける、かすかな道標となれば幸いです。
最後になりますが、この壮大な輪廻の旅に最後まで付き合ってくださった読者の皆様に、心からの感謝を込めて。




