2-13 古豊千朝日の奇行
コーヒーを飲み終えた頃にはまだ雷は鳴っていたが雨は少しだけ穏やかになる。これ以上は粘れないしそろそろ出たほうがいいだろう。
「それじゃあ今のうちに買い出しをしつつホテルに行こうか。また雨が激しくなる前に」
「だな」
真矢はそう切り出し会計を済ませて俺と一緒に外に出る。しかし真矢は自分のカバンから折り畳み傘を取り出してそのまま広げてしまった。
「自分の持ってたのかよ。俺の献身を返せ」
「持っていないとは言ってないよ。君が優しくするものだから言うタイミングを逃しただけさ」
「まあいいけどさ」
彼女は悪びれる様子もなくふふ、と嬉しそうに微笑んだので俺は怒る気力を失くしてしまった。別に元々そんなに怒ってはいなかったけど。
でもきっと俺みたいなすぐに勘違いする奴が上手い具合に女に転がされるんだろうなあ。けれど助手になったんだからこいつの手玉にとられないようにしないと。
雨の降る中俺たちは散歩をしつつ必要なものを揃える。食事もそうだけど俺は生活に必要なものをほとんど持ってきていなかった、というか持っていなかったからな。
「うん、雨の中を散歩するのも悪くないね。おや?」
「ん? って」
しかし河川敷の周辺に移動した際俺たちは奇妙なものを発見してしまう。それは空をゆらゆらと揺らめいている凧だった。
今は正月でもなければ雨なのに何故――疑問は尽きないが真矢はそれに興味を示して駆け出してしまう。というか普通に危ないし俺も追いかけてみよう!
「おい、何してるんだ!? 危ないぞ!」
「あれー? おじさんやっほー」
河川敷に移動するとそこには雨合羽を着ながら凧揚げをしている少年がいたがそいつはなんと先ほど会ったばかりの古豊千朝日だった。どうしてこんな事をしているのかはわからないが雷雨の中こんな事をするのは自殺行為でしかないので早くやめさせないと。
「おじさんって……いやそうじゃない、危ないから早く家に帰るんだ!」
「けちー」
俺は詳細な理由を聞かず有無を言わさず朝日君を家に帰そうとする。まったく、お母さんの苦労が少しだけわかったよ。
「やれやれ。朝日君は僕が家に届ける。君は先にホテルに行ってくれるかな」
「ああ、わかった。じゃあよろしく頼むわ」
「ちぇー」
朝日君は不満そうだったがこれは命にかかわる事なので強引にでも返さなければならないだろう。しかりつけるのはお母さんに任せて、俺は真矢の指示通り荷物を持ってホテルに向かう事にした。
けど家に来た時に陰毛と竹を欲しがったり、雷雨の中で凧揚げをしたり……最近の子供のする事はよくわからんよ。




