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縄張り紀行「仮」  作者: 夢辺 流離
20/24

仕組まれた偶然

 予想以上の売上を記録し、CDは珍しいダブルミリオンを突破。


 が、しかしそのことでメンバーの一部が事務所と険悪になる。番組のことで苦情を言ったのは仕方ないにせよ、そのおかげで得られるようになった利益はもらうというのはおかしいじゃないかということだった。


 七菜と豪は事務所と縁を切った。

他のメンバーも事務所と協議したり、独立したりと騒がれた。彩は本業に集中するということでメンバーから外れたが、後は全員残った。


「開は絶対来ないと思ったのに」


 古哉と開は意外そうに見られたのだった。


「…人前で歌うのが意外に楽しかったんだよ」


 とは開の弁明だ。



 一曲目とは違い、お膳立てがなかったので一から全てやらねばならなかった。

基本は独立した豪や七菜が中心になって準備し、手が空いた時に他の人が手伝うという形だった


 そして完成したのが『ウニャッペホフ旅に出る』シリーズだ。

 主人公ウニャッペホフが様々な冒険にでる物語が歌になる。


 一曲目は飼いねこのトラジが、飼い主の見ているテレビ番組を足の上で丸くなって見ていた。

その内容を野良ねこのクロロンに興奮して話す。


「針でツボをついて魚を眠らせるんだって!」


「馬鹿、魚にはウロコがあるんだぞ針なんか刺さるはずがないだろ」


 そして言い合いになりあわや喧嘩、というところでウニャッペホフが現れる。


「わかった。それなら僕が調べて来よう。そのかわりに僕が戻るまで喧嘩をしてはダメだぞ」


 心優しいウニャッペホフはトラジから聞けるだけのことを聞くと旅に出た。時に満員電車の網の上、時にヒッチハイク(こっそり便乗)、時に船で酔いながら旅をする。そして知りたかったことをしって故郷に帰ると、


「やぁウニャッペホフ、間に合ってよかった。実はあれから僕たち仲良くなってさ。今度一緒に暮らそうってことになったんだ」


「ウニャッペホフには迷惑をかけて悪かったけど、一緒に祝福してほしかったの。ダメかしら?」


 ウニャッペホフは文句をいいもせず、


「もちろんだとも。君達の新しい門出を祝って!」


 近所中のねこたちが集まって合唱して祝う。


 という内容だ。

歌としては珍妙だったが、ジワジワと売れはじめ、大ヒットする。

絵本化の依頼が来るが、そもそも歌より絵本の方が向いていたという皮肉な話。



「ねぇ、皆スラスラとアイディアがですぎじゃない?普通もうちょっと悩むと思うんだけど……」


 ある日七菜がそう言った。


「あ、それ俺も思った。何かモデルになった存在があるんじゃないかって」


 ゴクリと息を呑む音が会議室に響いた。


皆の手元に紙が配られ、何かを書き込む。

せーの、でひっくり返すと全員一致で


        “教授“


 と書かれていた。


流石に誰もが驚く。


葉はこのメンバーが過去にとある大学に訪れていたという共通点は知っていた。


学生だったものもいれば、番組で訪れた者。

理由こそ様々だったが皆行ったことがあったのだ。


 しかしそこで何があったかまでは流石に知りようがなかった、のだが、奇妙なことに彼らを結び付けたのだった。




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