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縄張り紀行「仮」  作者: 夢辺 流離
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藤堂 雛

 奨学金の飼料を貰いに大学にきた藤堂とうどう ひな


 通学手段は赤いクロスバイク。黒いジーンズにボーダーのシャツのシンプルな服装は短めの髪と相まってボーイッシュな雰囲気を醸し出しているが顔立ちはむしろ可愛い。


 一歩間違えばちぐはぐな印象を与えそうだが雛の場合は不思議とギャップを魅力的に見せていた。


 一応本日のやるべきことはこれで終わりかな、と。キーチェーンでクロスバイクを街灯に固定すると自販機でコーヒーを買って近くのベンチに座って飲む。


 コーヒーは缶の俗な味が好きだ。

味わっているうちに自然と閉じていた目を開く。

ちょっと離れたところに黒いねこが現れて、キョロキョロキョロしたあと、ゴロンと身体を横にして背中をこすりつけている。


「確か“教授“…ちゃん?那帆が昨日一緒にお風呂に入ったって言ってたばかりなのに…南無」


 “教授“と呼び捨てきれない人の良さを見せつつ見ていると声で気づいたのか、耳を雛の方に向け、続けて顔を向けると起き上がって寄ってきた。


 雛は少し驚きながら見下ろしていると、傍まで来てヒョイと手を挙げて挨拶してくるので雛も同じように手を挙げてみる。


 テトテト近寄って来て上目遣いをされるとキュンっとしてしまう雛。

思わず手を伸ばすと“教授“がビクッとする。


 反射的に手を引っ込めると、“教授“が両手で“דの字にしていた。撫でるのが駄目なのだろうか、とちょっとしょんぼりしてしまう。


 片手をポンと出して“ד肉球を空に向けて“○“とする。手の甲で撫でろってこと?

やってみようとするとやっぱり“דだ。


 口元に手を当てて、首を傾げていた“教授“が右手を喉元に移して、喉元を見せるようにしてくるのでそーっと伸ばしてやると今度はおとなしく受け入れてくれる。ゴロゴロとのどが鳴って目を細めている様子は気持ちよさげで、雛もうれしくなりWINーWINだ。


 しばらくすると、ちょっと顔を引いて、雛の指先をスンスンと匂いをかぐとザラリと舌が触れていった。雛は突然だったので少し驚いたが、何となく受け入れられたようでうれしくなる。

いつからかねこや犬から敬遠されるようになり、諦めてしまっていたから。


 雛は膝の上をポンポンする。

“こっちにおいで“だ。

“教授“は両手を交互に見た後、こちらに両手の平を見せる。


“汚れてるから“といったところだろうか。

ポケットからハンカチを出して両足を拭ってやる。特に嫌がらなかったのが嬉しい。

そこまですると流石に断るのもなんだと思ったのか、ベンチの、雛の横に登り、もう一度見上げてきて、雛が頷くと、恐る恐る乗っかってくる。


 それなりに重たかったけど、それよりあったかいと雛は感じた。背中をさわさわと撫でてみる。

今度は抵抗もされなかった。

暖房などとは違い、生き物特有のあったかさにいつのまにか撫でる手は止まり、舟を漕いでいた雛。


 通りがかりの学生にその姿を見られ、その後告白ラッシュがつづいたとか。

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