藤堂 雛 2
「…というわけなんだけど、何かわかる?」
喫茶店で数少ない那帆と待ち合わせた雛は頼んでいたコーヒーが届くと先日会ったことを相談していた。
「え?ヒナが“教授“をダシにしてモテモテってこと?」
那帆がすっとぼけたことを言う。
「そっちじゃないっ!」
ダンッと机に手をたたき付けて立ち上がりながら言う。コーヒーも驚いてわずかに身を浮かべていた。
「えっと、ヒナ、冗談だから落ち着いて、ね?」
冷静になって周囲を見渡す雛。幸い同じような学生が数人いただけであったが、店長さんの方に顔を向けて頭を下げる雛。
「わかってるって。せっかく洗ってあげたのに即効でゴロンしやがった“教授“のことでしょ?どうやってお仕置きしてやろうかしら…ふふふ」
「そっちでもなくて!」
今度はやんわりと怒鳴るという器用な真似をするヒナであった。
一方で那帆の方はこれじゃないの?と本気でわからないようだ。
「撫でようとしたら“דってしたりしたことよ」
最終的に触れたもののあれはどういう意味だったのか気になっていた雛。
「ああ、なんだそれか。想像してみて、ヒナ。見知らぬ3mの外国人がいきなりヒナの頭に手を伸ばして来たら怖いでしょ?」
人差し指を立てた那帆が真面目な顔でそう言っている。でも…
「3mの人間ってだけで怖いんだけど…」
ん?と考える那帆。
「あれ?いや、そうじゃなくて。でもえっと」
はぁ、と雛はため息をついて。
「まぁ、言いたいことは分かったわよ。上から撫でるのはNG,下から見えるように触るのはおオッケーって言ってたのね」
ホッと安心した様子を見せながら
「そうそう。そのあと指の匂いを嗅いで舐められたんでしょ?それはもう覚えたから大丈夫だよってことだったんだね。あいつら、匂いフェチだから」
思わず吹き出しそうになるのを必死で堪えた雛。那帆はときどき奇妙な言い回しをするのだが、それが雛のツボにクリーンヒットすることが多いので気をつけなければいけないのだ。
「多分、“教授“は大丈夫だったんだろうけど、ヒナが他のねこに触ろうと思ったときのために教えてくれようとしたんだと思うよ」
普通ならそんな馬鹿な、と思うのだろうけど、“教授“ならそうかもしれないと思えてしまうのだった。
この日以後、キャンパス内でねこを撫でている雛の姿が散見されるようになる。
いつもより表情が軟らかい雛の姿をそっと見守る藤堂雛愛好会が発足していたとか。




