上手いこと物事をこなす人はガス抜きがお上手
「今更言っても仕方がないことをつべこべ愚痴る暇があるなら、次どうすべきか悩む方がよっぽど時間を有効活用出来ると思うが」
「あ、それ俺も同感」
はーい、と片手ポケットに入れたまま半開きに口を開く曰比谷。
「それにらしくねッスよ先輩。
癖ありの親父が何すか。世間の広さを考えりゃそんくらい、ちょっと想像すりゃわかる、つーか。
先輩ともあろーお方が、そんくらいでビビるタマすか」
いざとなりゃー俺らがガチで殴り込みとか行きますし。
そう言って真顔のまま拳を宙に2、3度振りかざす青二才に、それよりは年上の二人が、思わずニヤリと口の端を引き上げる。
「お前。よく言うわ、こんなかで一番喧嘩弱いくせに」
「学生ん時付き合ってた彼女の浮気相手にボコボコにされてた人が何か言ってる」
「あり、ナニコレ後輩いじめっすか。新手のイジメすか。
人の黒歴史を平気で語る歳上二人」
とうとうどっと笑いが込み上げ、病室内にいい歳こいた大の大人の笑い声が響き渡る。
間もなくして入口から看護師の叱咤が届き、その時も決まって3人同じタイミングで口を×につぐんだ。
「…とにもかくにもだ
ニコルのことに関して必要以上に心配することはない
いざとなれば俺が力使ってどうとでもしてやる。弁護士が本気出したらどうなるか、市民なんて法を持ってすれば簡単に潰せるぞ」
「物騒ですがはい」
「生憎あっちが探し出すっつってもお前らの所在を知られていない今、平泉が伊野やニコルに手出しをすることは実質不可能だ
それに、毎日酒やら博打に明け暮れてるような奴がお前らを探す手間を惜しまないとは考えにくい」




