地を這いずるエリマキトカゲ
「すまなかった」
そう言って頭を下げるのは、長身で体格のよく、パリッとスーツを着こなした手足の長い二枚目。
茶色のスーツの襟には弁護士バッジを光らせて、病室に来るまで数人のナースに見かけられては振り向かれた。
先日海外で行われた有名アーティストの弁護裁判でも優秀の美を飾った…何を隠そう、世紀の弁護士渥美功太郎である。
「なんぜ渥美が謝る」
「いや…俺と言うエリートが傍にいながら。お前みたいな底辺で蠢いてる庶民に気付けないなんて、
月とすっぽんにしたって下の人間の気持ちもわからないなんて弁護士失格だ」
「…曰比谷くん曰比谷くん、これ貶されてる?バカにされてる?いじめられてる?どれよ」
「全部ッスね」
聞かれれば素直にけろりと答える青二才、社会人にしては明るい髪に細身、さながら見た目がホストのイケメンは、最近社内で業績をグイグイ上げている異例の営業マン日比谷である。
いずれも渥美の力を持って成されたVIP待遇=個室は、一応市内の総合病院の一室にある。
「とぁ、冗談はさておきだ
だがマジで今回の件は悪かったと思ってる。
まさか俺のいない間にこんなことになるなんて」
そう言って奇跡の弁護士渥美大先生が目を向けるそこには、首にギブスを嵌めたとある底辺・人間失格。
「にしても単なる打撲っしょ?処置が大袈裟過ぎるんじゃないッスか」
「だって先生がとりあえず大事を取って、って被せて来たんだもん」
細身の体躯に無理くりはめられた感満載の首のギブスは、社会人二人に一世代前一世を風靡したエリマキトカゲを連想させた。




