表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寡黙なニコルと人間失格  作者: 或田いち
インサイド
37/65

魔王


 

そこに、一台のトラックが停車する。

引越しセンターか何かの車らしい。若い青二才がトラックから飛び降りて、向かいの骨董品店に入り、痩せた中年男性に何かを訊ねている。


どうやら道を見失ったらしい。無意識に、伊野は耳をそばだてる。


「え?下川?下川はこっちじゃないよここの国道をUターンして…

 地図に書くよ。今ここは、文枝(フミエ)町だから…」


文枝町……

文枝町。


ニコルの住所の履歴に、「文枝」が記載されている。合ってる。こっちか。


伊野は、書類をまた原チャリの椅子の下に押し込み、歩道の石段を蹴った。



-----



振り向くと、そこに、いた。

黄色みを帯びた乱杭歯に、焦げた肌。低身長の割に、ある程度しっかりとしたガタイ。

白髪混じりの短髪は、不潔な無精髭と同じ色合いをしていた。


そして覗く、鋭い眼光。


「お前、今までどこほっつき歩いてやがったんだ?」

「…っ」


無意識に、ガタガタと体が震え出す。歯の根が合わなくなる。それでもニコルは、懸命に自我を保とうとする。


「聞いてんのか、オラ!」


入口の戸を思いっきり足で蹴られ、思わずびくりとおののいてしまった。

立ち位置が逆なら、まだ良かったかもしれない。だが、あいつが、扉側に立っていては、逃げるにも逃げようがない。


「……っんで…」

「ぁあ?」

「なんで。鍵、」

「……あぁ…最近ちょっとサツが鬱陶しくってよ。あいつら家宅捜索とか言って人ん家に不法侵入しやがるから、鍵閉めといたんだよ


 生活保護とか言って善良ぶってロック1つで諦めんだぜ。白状なもんだよなァ日本の警察は」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ