物事の重篤さすなわち気の持ちようなり
「うるさいよ渥美くん
海外と日本じゃ音量機能違うのかな
《だっ……からあれだけ言っただろーが!ちゃんと目を離すなって!
何か起こってからじゃ遅いって…
裏切れよ期待を!》
「“予想”でなく?」
受話器の向こう、書類にまみれた書斎にて頭を抱える渥美の姿が、今に目に浮かんだ。
「それに目離すなって…いい加減子供じゃないんだから大丈夫だろ
彼女高校生だぞ?最近よく出掛けてたしきっとまた何かの用事で」
《お前それ本気で言ってんのか》
一転した口振りで、深い深呼吸の後に続く相手のセリフは、いつになく気が張っている。
《あいつ…ニコルは1ヶ月前に理由不明でお前ん家に押し掛けて来た、いわば“家出少女”だ
事情もわからないだけに警察に突き出したお前は挙句誘拐犯扱い。この意味わかるだろ》
いやわからない。
ぼんやりと心中でぼやく傍ら、渥美の返事は早い。
《どう考えたっておかしーだろ。出会った時のあの見た目じゃあそう家は遠くないはずだ、
だが身内からの捜索願いやお前に対する警察からの連絡はあれっきり全くねーじゃねーか》
なるほど。
伊野は事態の危機感を理解しないまま、ゆったりと体を起こすと窓辺に立ち、カーテンを開ける。
事態とは裏腹、世界は平和。
いつもに増して、そんな風にさえ映る。
《それだけでも十二分に、確実訳ありだぞ、ニコルは》
そんなことわかってて引き取ったんだと思ってたよ、おまえと。
そう言う本人にまくし立てられて引き取ったんだと、そればかりは言い出せなかった。




